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これからのスタートアップが取り組むべき「マーケット基盤」を構築する活動

「良いプロダクトをつくれば事業は成長する?」

医療系スタートアップUbie株式会社/Ubie Discoveryで事業開発をしているhosso(@sh___hs)です。
突然ですが皆さんこんな風に考えていたりしないでしょうか。
「プロダクト・サービスを磨けば、事業は成長する」「良いプロダクト・サービスをつくることにフォーカスすべき」
プロダクト(以下、簡単のためサービスなども含む言葉として使用します)を磨くことは、事業を成長させVision・Missionを達成するための重要なピースであり、スタートアップの根幹であることは間違いありません。
Ubie Discoveryでも、様々な工夫を凝らしながら、最速でプロダクト開発を進めようとしています。(ご興味ある方は弊社メンバーの各種記事をご一読下さい)

一方で、それだけでは必ずしも事業として成長しません。単にプロダクトを磨くだけでなく、広く社会に受け入れてもらう土台も併せて作る必要があります。
Ubie Discoveryでは、この社会がプロダクトを受け入れてくれる土台を「マーケット基盤」と呼び、それを構築する活動を意識的に行っています。「マーケット基盤」は事業展開上のアセットであり、プロダクト・事業開発に不可欠かつ加速する効果があるからです。
以下では、スタートアップにおけるマーケット基盤構築の必要性と、Ubie Discoveryが具体的にどの様に取り組んでいるのか、またマーケット基盤を構築する上で何が重要なのか、を考えてみます。

・スタートアップで働いている方(特にBizDev)
・スタートアップの事業開発/BizDevの仕事に興味のある方
・PRやPublic Affairs、法務、セキュリティなど、スタートアップで事業・プロダクト開発を加速させる職種に興味のある方

に、特に役立つ情報になれば幸いです。

マーケット基盤とは「市場からの信頼性」

マーケット基盤=社会がプロダクトや事業を受け入れてくれる土台と書きましたが、別の言葉で言い換えるならば自社やプロダクトに対する市場からの信頼性です。
この会社のプロダクトは使いやすく、今後更に良いものになるだろうという信頼。この会社が成長すればより良い世界の実現に繋がるという信頼。この会社はリスクにも適切に対処し、必ず成長するので投資先として適切だという信頼。
事業も信頼性という土台の上に成り立っており、信頼が揺らいでいれば、長く、大きく成長するのは難しいかもしれません。
信頼を得るための手段の本筋はもちろんプロダクトを磨くことですが、それ以外の手段を講じてその基盤を確固たるものとし、更に拡げていくこともスタートアップには重要なことと思います。

note_マーケット基盤&法務_プロダクト・事業はマーケット基盤=信頼性の上に成り立っている

スタートアップこそマーケット基盤を構築する必要がある

なぜスタートアップにとってマーケット基盤構築の活動は重要なのか。
やや極端な書き方ですが、スタートアップはその他企業とどう違うかを考えると以下の様に言えると思います。

note_マーケット基盤&法務_スタートアップとその他企業の違い

当然ですが、スタートアップには概して事業を展開する十分な土台がありません。だからこそ優れたプロダクトを開発し、磨きこむことで徐々に土台を作っていくわけです。しかし、ただプロダクトを磨くだけでは信頼性という土台を構築するスピード感や、信頼を得られる層の広さは限定的です。また、特に新しい市場を切り開く際には、単にプロダクトの力だけでは乗り越えられない法規制などの高い壁が立ちはだかることもあります。

そうした状況の中、信頼性という基盤=アセットを持つことは、事業開発上とても重要です。信頼性はプロダクトの力をレバレッジしてくれるからです。

一定の信頼があるからリソースを確保して開発に投資ができる。一定の信頼があるから新しい機能も試しに使ってもらえてフィードバックが得られる。社会に役立つことが期待されるので法規制も適切に整備されていくかもしれない。
マーケット基盤を作る活動により、その土台をより強固にしプロダクト開発を加速することが出来る。

もちろん、マーケット基盤はあくまでプロダクトが持つ力をレバレッジするのであって、良いプロダクトがないことには話が始まらないですし、良いプロダクトはマーケット基盤の構築をサポートする、ということは改めて付記しておきます。

note_マーケット基盤&法務_プロダクト・事業の開発とマーケット基盤の構築は両輪の活動

マーケット基盤構築の3つのポイント

ここで実際にUbie Discoveryでの活動も交えつつ、マーケット基盤を構築する上で重要と考えるポイントをご紹介しましょう。

note_マーケット基盤&法務_マーケット基盤構築の3つのポイント

Point ①:事業環境を適切に理解する

当たり前ですが、自社がどの様な環境で事業を展開するのかをしっかりと把握することがまず必要です。どの様なステークホルダーがいて、どの様なパワーバランスなのか。どの様な法規制があり、どの様な方向性で検討が進められているのか。
もちろん、ステークホルダーもそれぞれの思惑をもって動きますし、想定していなかったステークホルダーの登場やその他外的要因の変化などで動的に環境は変わりますが、アンテナを張り随時チューニングを行います。
Ubie Discoveryでも、考慮すべき主なステークホルダーおよびその関係性を把握するよう努めるとともに動向をウォッチしています。

事業環境を適切に理解することで、効果的なアクションを適時に/前もって取ることが出来る様になります。
また、二次情報だけに頼るのではなく、関係性のあるステークホルダーを辿り一次情報を取得することも理解の深化・精度向上のためには重要になります。

note_マーケット基盤&法務_ステークホルダーとその動向・力学を理解することが重要

Point ②:機能ベースではなく目的ベースで組織を作る

Ubie Discoveryではホラクラシーという組織の仕組みを導入しています。その中で「Market基盤最大化」というサークル(=チーム)を作り、マーケット基盤を構築・拡張することを共通の目的として複数のロール(=役割)が活動しています。(ホラクラシーについてはこちらの記事を参照ください)

このサークルの目的は、具体的には以下の様に定められています。
”Ubieのブランド価値を最大化し、事業のReturn最大化とInvest最小化のためにMarket riskをコントロールすることで、各事業に貢献する"
やや分かりづらいですが、信頼性を高め、各事業が何らかの施策を行う際に、その投資を最小化しリターンを最大化(リスクは最小化)できるような環境を整えておく、くらいにご理解下さい。

このサークルは、主に以下のロールで構成されています。

note_マーケット基盤&法務_マーケット基盤サークルのロール

・Public Affairs:各種ステークホルダーとの関係性構築・協働の推進など
・Public Relations:各種事業や施策の広報など
・Medical Research:AI問診プロダクトを通じた医療機関の業務効率化のエビデンス作成など
・Security:コーポレート、情報セキュリティの整備など
・Legal:各種プロダクト・サービス回りの法規制対応など
(その他個別トピックごとにロールが設定されています)

これらのロールは、Ubieの事業環境を踏まえ各方面から信頼を獲得し最大化するために必要な役割を定義したものです。外部環境の変化に応じてサークル内に役割が増えたり、役割の責務範囲が変化したりします。
それぞれ個別機能はめずらしくはないものですが、これらを大目的を共有する役割群として一つのサークル(チーム)にしている所がポイントです。

このサークル単位で活動していることとしては大きく2つです。
・OKRを設定し各Qでフォーカスする内容をアラインすること
・Mtgで進捗・課題を共有し、OKR達成に向け前進できる様にすること

Ubie Discoveryでは四半期ごとに全社および各サークルのOKR(Objectives and Key Results)を設定していますが、このサークルも同様です。
そのQで誰からのどの様な信頼を得ることを目指すのか、を毎四半期で明文化し注力ポイントを定めます。

note_マーケット基盤&法務_マーケット基盤サークルのOKR

加えて、定期的に(現在は週次)サークルのメンバーでMtgを実施し、取り組む施策の進捗や課題を共有し、課題がある場合にはその解決に向けたアクションを定義しています。例えば、他ロールとの協働が必要であれば巻き込んで共に動くアクションを積んだり、他ロールから見てOKR達成にチームとして必要なアクションがあれば他ロールに依頼したり。
個別機能単位で仕事をしているとお互いの仕事の優先順位の違いから動きにくいことも出てきますが、サークル=チームとして役割を越えて共通の目標を持つことで、各役割の立場からそれに貢献する姿勢が生じ、常に目的達成のために出力が最大化されやすい構造になっている様に感じます。

Point ③:常に全社ROI観点から意思決定を行う

ここが最大のポイントと思いますが、「攻めと守りのバランスを常に考え、ROI(Return on Investment)が全社的に最大化されるように動く」ことが重要です。
もちろん、信頼を損ねて市場から退場することがない様に守るべきところはしっかり守ることは必要で、それは責務の一つでもあります。
ただそれだけで責務をすべて果たせるかといえばそうではありません。

攻め、つまりいかに事業のポテンシャルをそれぞれの立場から最大化できるかを念頭に置き、その為の信頼性を高める活動に取り組むこと。それが、成長過程にあるスタートアップにとっては非常に重要な役割となります。(なお、守るべきものを守ることは、マイナス面が非常に大きい事象の発生確率を下げるという意味でROIが高いという判断になります)

先ほどOKRの話を出しましたが、Ubie Discoveryでは全社・サークル間のでOKRのすり合わせを行っており、マーケット基盤最大化サークルも全社・他サークルがそのQ実現したいことを後押しする活動にフォーカス出来るようOKRを設定しています。

加えて、日々の意思決定の一つをとっても全社的に波及するリターンは何か、コスト・リスクは何かの両方の視点を必ず持ち、ROIを考えて判断する様にしています。
これは意識付けの話だけではなく、施策(ホラクラシーの運営上では"プロジェクト"と呼びます)を定義する際には、単にやることを書くのではなく、どの様な提供価値を実現するのか、なぜそれが必要なのか、を明記することとしています。それにより各施策の必要性や優先度をサークル内で議論し、より適切と思われる方向にサークル・各ロールが向かうことができる。

note_マーケット基盤&法務_プロジェクトの例

守りのスタンスだけだとともすれば陥りがちな「やるべきことだからやる」という思考停止をなくし、あくまでどう全社のROIを最大化するか。そしてそれをどう仕組みとして担保するか、が肝となります。

まとめ

もちろん、業種や業態、また事業のステージによってその活動の必要性・注力度合いには濃淡が出てきますし、取り組む方向性も様々でしょう。
Ubie Discoveryのマーケット基盤最大化サークルでも日々向かう先ややり方を模索していますが、他社の真似だけでどうにかなるベストプラクティスもありません
ただ、新しい世界を作ろうとするスタートアップにとって重要な力であり、各社で思考錯誤が必要な領域であることは間違いないかと思います。本記事が何かの参考になれば幸いです。

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