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メルボルン生け花フェスティバルCEO放談(6):最大の成功要因

海外で日本文化を紹介する「大変さ」と「楽しさ」を、アレコレ語っていこうと思います。前回に引き続き、2019年初回開催のメルボルン生け花フェスティバルについての分析です。

当地の生け花イベントとしては、前代未聞と言えるほどの観客動員数。企画したイベントの全チケット完売。とりあえずの成功を収めたこのイベントについて、過去のブログ記事を要約して紹介します。


最大の成功要因

私見では、今回の最大の成功要因は運営委員チームの機動力。これに尽きます。彼女たちへの感謝は私のスピーチでも述べた通り。

生け花フェスティバルはもちろん、どのような企画であれ、このような有能なチームを作れるか否か、それが成功の鍵を握っているように思います。

問題があっても次々解決策を生み出す。
指示を待つことなく、自主的に課題に取り組む。
ともかく迅速!皆色々あって忙しい方々なのですが。
そんな熱血チームと仕事ができたことを誇りに思っています。

私は、今回のみの実行委員長ということで、旗振り役でした。

私がリーダーとして気をつけたことがいくつかあります。その辺りからまずお話ししましょう。

いかにチームのメンバーに主体的に動いてもらえるか、
やる気になってもらえるか、そこには特に気をつけました。
チームは皆ボランティアですから配慮が必要です。

私自身、やる気にしてくれるリーダーの元でも、
やる気を削ぐリーダーの元でも仕事をしたことがあります。

リーダーの役目

まず、リーダーの一番重要な役目は、自分たちの仕事の使命をきちんと伝えることでしょう。

なぜ、メルボルン生け花フェスティバルが必要なのか。
その使命は何か?
ここを繰り返し強調してきました。

私が何を伝えたのか。
その結果、どのようにチームが燃えたのか。話を続けます。

反省会での返答

運営委員たちと反省会をしたのですが、その内容がとても面白く、これは記事にして学術誌に投稿してみようということになりました。「大成功おめでとう」などと多数の方から言われて気分が舞い上がった時期が去り、少し落ち着いた時点で話し合えたことも良かったのでしょう。

もしかすると、他の地域で生け花フェスティバルや類似のイベントを開催する際の参考になるかもしれません。また、海外での生け花事情を知る上でも面白いかもしれません。しかし、これは「主催者側」の反省点です。他の立場からは別の見方がありうるでしょう。

「今回、運営委員の仕事ぶりにはすごいものがあったように思うが、なぜこんなにやってくれたんだろう?それは大事な成功要因だと思うんだが」と私が尋ねると、すぐに「先生が私たちには使命があるって言ってくれたから」とか、「花の力でしょう」とか。
メルボルン生け花フェスティバルの使命。
それをきちんと共有していかないことには人は動いてくれないのでしょう。

夢がなければ人は動かない

さらにその使命が、例えば新保個人が儲かるようにとか、有名になるためにとか、ある流派(あるいは企業)の利益、発展のためとか、要するに小欲だけでは、ここまでの成功は達成できなかったはず。

「これは天の助けか」(大げさですが)と思うほどの奇跡的な幸運な出来事が次々と起こらなかったはず。さらに、私たちのチームはここまで燃えなかったと思います。

結果が、翻って動機の純正さを証明してくれるのかもしれません。

ただ、小欲も否定はしませんでした。
それも目指そうよ。例えば、このフェスティバルの結果、君たちの仕事も生徒も増えるかもしれないよ!と。

でも、本当に目指すのは、もっと大きいものなんだ。
大欲を持とう、と説得に努めました。
私たちの大欲:生け花のメリットをより多くの方々に伝えたい。
それは生け花の今日的な課題でもあります。
(もちろん、それをユメだよと嗤う人も批判する人もあるのですが)

現実的な反省点

実は、現実的な主催者側の最大の反省点は、人手不足!

これは予想できたことです。前回までは展覧会中心でした。今回からはそれに加え、ワークショップ、トーク、デモ、子供向け生け花教室、賞、パフォーマンス、講義、キューレーターの導入、マーケットまで加わったのですから。さらに、市議会議員、州政府教育文化大臣代理、他州、海外からの出展者まで迎えることになりましたし。

2019年度プログラム

展覧会からフェスティバルに。

この発展に伴い、準備と運営業務が膨大なものになりました。様々な障害に見舞われることにもなりました。どうしても行き届かないところが出てくるのです。

私たちの運営委員はとても優秀で、「このチームで起業したら多分うまくいくだろうなあ」と、ささやかな実業家だった私が思ったりしたほど。

それでもさすがに3、4人だけでは細部まで対応できなかったようです。
「失敗も不手際も出てくるよ。それから学んでくれたらいいんだ。君たちが成長する機会にして欲しいんだ。失敗したって守ってあげるから」とは、初めから言っていたのです。「お金のことを気にしすぎることなく、楽しもうよ」という方針ですから、ビジネスと言うより学園祭みたいなプロジェクトでもあります。

ともかく、来年は運営委員を約3倍の数の熱血集団にしないといけないでしょう。

チーム運営の基本方針

今後の課題のひとつはそれだけの人が動いてくれるか、です。
運営母体は企業組織ではなく、複数流派が集まっただけのゆるい共同体。私たちの出展者、関係者全てが一丸となっている、とまではまだ言えないでしょう。

「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」
この格言が私のチーム運営の基本方針。

ただ、禄といっても大したことはしてあげられないのですが。
徳ある者とは、私にとってはチームワークを大切にできる方、という意味です。最も大切にしたいメンバー。

反対に、陰口が癖になっているような方は、和を乱します。あり難いことに、そうした心配な方には、あれやこれや面白くないことが起こるようで、いつの間にか私たちから離れていきました。もしかすると、私たちのチームが醸し出す、強力なポジティブな波長が厭わしくなるのかもしれません。

来年の新体制ではもっと多くの方を執行グループに取り込んでいきたいものです。

本気で取り組んだ人たちだけが味わえる充実感、成長の実感をより多くの方と共有できるはずです。今回、展覧会場の後片付けが済んで、会場の重いドアを閉めた時、私たち運営委員が薄暗い中で笑顔を見合わせ、感じた高揚感、です。
「やったね」と私。
「少しの間、面倒なこと考えないことにしませんか?」
「そうだね」
大きな大会で勝利したスポーツチームのようでした。

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