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小学館の文芸サイト「小説丸」のnote支店です。 単行本や小学館文庫の情報などをゆる~っと発信していきます。

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はじめまして。小説丸です。

小説丸は、小学館の文芸サイトです。作家さんのインタビューや、小説、エッセイ、書店員さんのコラムを日々公開しています。 名前は、「小説は、良い(○だ)」というモットーからきています。船の名前のようでもあり、時代小説にでてきそうなお侍さんぽくもある。そこで、漫画家のあだち充先生の『虹色とうがらし』のキャラクターをお借りしました。 2017年の夏に開設してから、早いもので2年が経ちました。開設当初は、検索しても出てこないという、つらい経験もしましたが、ネットの大海の中をなんとか

    • 新庄耕待望の新刊『夏が破れる』、冒頭note特別試し読みスタート!

       不穏な内容に書店員さんも恐れ慄いた、この夏必読の新刊が4月25日に発売となりました。  文庫本『地面師たち』(集英社刊)が注目を集める新庄耕の最新刊『夏が破れる』です。  いじめをきっかけに、ひきこもりとなっていた中学2年生の進は、親の勧めで、夏の2ヶ月間を沖縄の離島・喜久島で過ごすことになります。  美しい海辺に建つ「ラビット・ベース」。開放的な自然と、優しくて頼りになりそうな大人たち。人生を変えてくれそうな一夏になるだろうと思われました……。  最悪の予想が、次々と

      • 一年で一番のラッキーデー!『9月9日9時9分』(一木けい著) 9月9日記念試し読み#4

        特別掲載『9月9日9時9分』冒頭試し読み #4 (▶︎試し読みをはじめから読む)    ティンパニのような激しい雷の音で瞼があいた。  一瞬ここが日本だかタイだかわからなくなる。ぼんやりした頭のままベッドを抜け出し、カーテンを開けた。  雨粒の滴る、すっきりとした電線を見て、ああ日本だと思う。  もしここがバンコクなら、窓から見えるのはこんがらがってたわんだ電線と、大量の雨を受けて泡立つプールだ。雨の重みに耐えかねるように木々の葉が揺れ、リスが電線を駆け抜けていく。テ

        • 家族を裏切ってまで、どうして愛してしまうのか。一木けい最新作『9月9日9時9分』 9月9日記念試し読み#3

          特別掲載『9月9日9時9分』冒頭試し読み #3 (▶︎試し読みをはじめから読む)    お風呂上がり、リビングへ行くと、父と姉はそれぞれソファで本を読み、母はその足許で音楽を聴いていた。テレビは滅多に点けない。暗いニュースや騒々しいバラエティ番組を姉が好まないから。  冷蔵庫からラムネアイスを取り出して開封し、口に入れた瞬間、母と目が合った。 「もしかして、お母さんの?」  もごもご尋ねると、母は笑顔で「仕方ない。漣にあげるよ」と言った。  私はすかさず右手を挙げた。

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        はじめまして。小説丸です。

        • 新庄耕待望の新刊『夏が破れる』、冒頭note特別試し読みスタート!

        • 一年で一番のラッキーデー!『9月9日9時9分』(一木けい著) 9月9日記念試し読み#4

        • 家族を裏切ってまで、どうして愛してしまうのか。一木けい最新作『9月9日9時9分』 9月9日記念試し読み#3

          「愛」とはなにかを問い続ける一木けいの新たな代表作『9月9日9時9分』 9月9日記念試し読み#2

          特別掲載『9月9日9時9分』冒頭試し読み #2 (▶︎試し読みをはじめから読む) 「西校舎の二階だよ」  職員室の場所を訊かれて答えたら、印丸はニッと笑った。 「まだ日誌取ってきてないんだ。れんれんついてきてよ」  日直の役割分担は昨日のうちに決めていた。日誌を取りに行くのは印丸。書くのは私。なのに印丸はまったく悪びれる様子もない。  渡り廊下を並んで歩く。印丸は、となりに立たれても全く緊張せずに済む男子だ。陸上部の見学に行ったとき話しかけられて、それ以来、雨天の筋トレ

          「愛」とはなにかを問い続ける一木けいの新たな代表作『9月9日9時9分』 9月9日記念試し読み#2

          三浦しをんさん大絶賛! 『9月9日9時9分』(一木けい著) 9月9日記念試し読み #1

          こんにちは、小説丸編集部です。 タイ在住の作家・一木けいさんが、タイと日本で揺れ動く高校生の難しい恋愛を描いた傑作『9月9日9時9分』。 「9」という数字は、タイでは縁起の良い数字と言われていて、9月9日には縁起を担ぐイベントが行われたり、店のオープン日が9月9日に設定されることもあるそうです。 さて、本書が今年3月に発売されてから約半年。今年も9月9日がやってきました。まだ本書を未読の方のために、本日より、冒頭試し読みを特別に公開いたします! 海外旅行にも行けず息苦し

          三浦しをんさん大絶賛! 『9月9日9時9分』(一木けい著) 9月9日記念試し読み #1

          たちまち重版!! 『ミライヲウム』に寄せられた書店員さんの感想をどうぞ!

          水沢秋生さんの二度読みミステリー『ミライヲウム』。発売前に読んでいただいた書店員さんから、多くの感想が寄せられました。今回はオビに掲載しきれなかった感想を、担当編集者のツッコミとともにお届けします。 「立花の不器用ゆえのツンデレぶりに悶絶しました!」三洋堂書店新開橋店 山口智子さん そこは私も同感です(笑)。(担当編集) 「あやういバランスの中で立っている感じ」 水嶋書房金剛店 浦辺千栄子さん はらはらどきどきってことですよね?(担当編集) 「仕掛けがわかると・・・

          たちまち重版!! 『ミライヲウム』に寄せられた書店員さんの感想をどうぞ!

          新・二度読みミステリーと話題騒然! 水沢秋生『ミライヲウム』書店員さんコメント一気出し!!

          二度読みミステリーって、何だ?? という方も大勢いらっしゃるかと思います。 定義するとすれば、普通に読み終えようとしたところで、「え?」ってなって、「あれ? どこから読み違えていたんだろう」と「読み返す」タイプのミステリー小説のジャンルのひとつではないでしょうか。 大ベストセラーとなった、乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』が特に有名ですね。 7月に発売された、水沢秋生さんの小説『ミライヲウム』が、じわじわと売れています。大学生の主人公・凜太郎は、未来が見えてしまう

          新・二度読みミステリーと話題騒然! 水沢秋生『ミライヲウム』書店員さんコメント一気出し!!

          書店員さんからの感想をご紹介! 『こんぱるいろ、彼方』本文公開 番外編

          『こんぱるいろ、彼方』の第一章と第二章、いかがでしたか。物語はこの後、祖母・春恵の章へつづきます。どんな物語かもう少し知りたいという方のために、書店員さんからの感想をご紹介します! 「とてもとても良かった! 『ボートピープル』幼い頃、大きくない舟に人が溢れそうなくらい乗っている映像を見た記憶がある。 母・真依子は子供を案じて、自分がベトナム人であることを隠し、日常生活に追われるなか、自らの出生については深く考えることなく、過ごしてしまっている。だって毎日色々あるし、生きるっ

          書店員さんからの感想をご紹介! 『こんぱるいろ、彼方』本文公開 番外編

          新連載のお知らせ

          大変ご無沙汰しておりました。 いくつかのためし読みを通じて、フォローしてくださった皆様、本当にありがとうございます。 「小説丸」note支店の更新が、すっかりおろそかになって、すいませんです。その間、サボっていたわけではなく、新連載に向けて準備を進めて参りました。ようやく公開となりましたので、お知らせします。 5月31日からは、『響け! ユーフォニアム』の武田綾乃さん“初”となるエッセイが月一回更新で! 本日6月1日から、ドラマ化で話題となった『メゾン・ド・ポリス』の

          新連載のお知らせ

          心躍る一品を届けたい。 第1回日本おいしい小説大賞受賞作『七度笑えば、恋の味』第1章全文公開! #2

          (『七度笑えば、恋の味』試し読み つづき)    ❖❖❖  積み木の塔の崩壊は、数日後、唐突にやってきた。  その日は朝から慌ただしかった。皆川さんから連絡があり、小学生のお子さんがインフルエンザになったため、少なくとも五日は出勤できない、とのことだった。  残りのスタッフでなんとか昼食の調理と配膳を終え、食器の洗浄の後、夕食の準備についての打ち合わせが始まった。 「──え?」  角木リーダーの指示を手帳に書き留めながら、思わず声が洩れてしまった。  皆川さんの代わりに調

          心躍る一品を届けたい。 第1回日本おいしい小説大賞受賞作『七度笑えば、恋の味』第1章全文公開! #2

          家で味わえる極上の一品を。 第1回日本おいしい小説大賞受賞作『七度笑えば、恋の味』第1章 全文公開!

          こんにちは。小説丸編集部です。 第1回日本おいしい小説大賞を受賞した『七度笑えば、恋の味』(古矢永塔子 著)。 本作は、選考委員による満場一致の高評価を受けた発売後も、朝日、毎日、東京、高知、東奥日報などの新聞各社をはじめ、Oggi.jpやNHK高知など数多くのメディアで取り上げられました。読者からは「思わず料理をしたくなる」「私も誰かのお腹を温めてあげたくなった」など、大きな反響を呼んでいます。 思うように外出できない今、家で誰かのために料理をする機会も増えているのでは

          家で味わえる極上の一品を。 第1回日本おいしい小説大賞受賞作『七度笑えば、恋の味』第1章 全文公開!

          若き才能の叫びが止まらない! 有名YouTuberも絶賛する『まったく、青くない』(黒田小暑 著)好評発売中!! 「序章」特別試し読み

          こんにちは。小説丸編集部です。 第20回小学館文庫小説賞を受賞した『まったく、青くない』(黒田小暑 著)が、有名YouTuberや書店員に絶賛され、いまもなお、話題となっています。 著者は福岡県在住の25歳。24歳の若さで書き上げたというこの作品は、著者の「叫び」が聞こえるような、静かに心を揺さぶられる、力強い青春小説です。 爆誕した新世代の才能、一度堪能されることを強くオススメ!!今後の活躍にも注目です! 『まったく、青くない』 黒田小暑 著 小学館 本当は書店で買

          若き才能の叫びが止まらない! 有名YouTuberも絶賛する『まったく、青くない』(黒田小暑 著)好評発売中!! 「序章」特別試し読み

          働くすべての男女へ。共感の嵐!『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著)試し読み #5

          特別掲載『きみはだれかのどうでもいい人』第1章 ためし読み #5 「おかえり。きょうで仕事納めなんでしょ?」    帰宅したわたしの顔を見るなり、母はそう言いながらゴミ袋をふたつ差し出した。 「部屋にいらないものがあったら入れてちょうだい。可燃と不燃で分けてね」    黙ってその袋を受け取った。きょうの晩ごはんちょっと遅くなるねー、という母の声を背に、わたしはからっぽの袋を後ろ手に持ち、岩でも引きずっているように重い足取りでのろのろと階段を上った。    そして、上り

          働くすべての男女へ。共感の嵐!『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著)試し読み #5

          「精神が変わった」羽田圭介さんも絶賛!『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著)試し読み #4

          特別掲載『きみはだれかのどうでもいい人』第1章 ためし読み #4  実家に戻ったばかりのころ、一度、妹の部屋に入ったことがある。    わたしがいない隙を縫って、妹は無人になったわたしの部屋に自分の不用品を移動させていた。昔の教科書とか、好きなアイドルの出演番組を撮りためたDVDの山とか、ほとんど使った様子のない美容器具とか。文句を言おうと思ってノックしても返事はなく、ドアを開けると本人は出かけていた。  まず目を引いたのは、まっピンクのレースのカーテンだった。    

          「精神が変わった」羽田圭介さんも絶賛!『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著)試し読み #4

          4つの視点、まったく違う世界。衝撃の「同僚」小説『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著) 試し読み #3

          特別掲載『きみはだれかのどうでもいい人』第1章 ためし読み #3  しょっぱなから、ついていない日だった。    朝、洗面所で髪を結ぼうとしたら、いつも使っている黒いヘアゴムが見つからなかった。前の晩お風呂に入るときにいつもの場所、三面鏡の右側の扉についた収納にたしかにしまったはずなのに。母に心当たりを訊ねようにも、わたしはラッシュを避けるために家族のだれより早起きしている。結局、唯一置いてあったウールのシュシュを使うはめになった。虹色のプードルみたいな見た目のそれは、

          4つの視点、まったく違う世界。衝撃の「同僚」小説『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里著) 試し読み #3