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『ザ・フラッシュ』公開目前! 映画を見る前に知っておきたい“地上最速の男”フラッシュ

10年かけて展開されてきたDCエクステンデッド・ユニバースの大きな節目となる映画『ザ・フラッシュ』。今回はその映画の公開と、フラッシュことバリー・アレンが主人公のコミック『フラッシュ:イヤーワン』の日本語版刊行を記念して、彼のコミックでの誕生の経緯と基本的な設定を紹介していきます!

文:傭兵ペンギン

地上最速の男フラッシュ

2023年5月発売『フラッシュ:イヤーワン』書影
(ジョシュア・ウィリアムソン[作]ハワード・ポーター[画]秋友 克也[訳])

バリー・アレンはアメリカのセントラル・シティの警察署で働く科学捜査官で、事故で雷に打たれラボにあった薬品を全身に浴びてしまったことで、超高速で移動できるパワーを得て、地上最速のスーパーヒーロー「フラッシュ」として活動を始めたという人物。

ある日、バリーは落雷事故によってラボの薬品を浴びてしまう。
(『フラッシュ:イヤーワン』より)

素早く動けるだけでなく、体を高速で振動させて壁をすり抜けたり、腕を素早く回転させて突風を起こしたり、パワーを雷に変換したりすることができる他、新陳代謝も驚異的な速さで行われるために傷が急速で回復する(その代わりにすぐに空腹となる)などなど、速さを応用した多彩な能力の持ち主。

目覚めたバリーは超高速で移動できるパワーを手に入れていた。
(『フラッシュ:イヤーワン』より)

その中でも最も凄まじいのが、限界まで速く走れば時間を超えて移動できるタイムトラベル能力で様々な重要な局面でそのパワーが活用されてきました。
 
そのパワーの源は運動と速度で構成された宇宙のエネルギー「スピードフォース」は、フラッシュだけでなく超高速で移動する能力を持つDCコミックスの超人たち「スピードスター」に力を与えており、この力を巡るストーリーが多いのもフラッシュの特徴。
 
また幼少期に母親が殺されてしまい、その罪を問われて無実の父が刑務所に入れられており、その冤罪を晴らすために鑑識官となったというのがストーリーの重要なポイントとなっています。
 
映画やドラマでもこのあたりの基本的な設定は採用されており、特にドラマシリーズではガッツリと掘り下げていたので、よく知っているという人も少なくないでしょう。

重要な歴史に関わり続けてきたキャラクター

バリー・アレンのコミックでの初登場は1956年の『Showcase』誌の#4。同誌は新キャラクターを登場させ読者の反応を伺うために設けられたシリーズで、バリー・アレンは”新たな”フラッシュとして、ライターのロバート・カニガーとペンシラーのカーマイン・インファンティーノによって生み出されました。
 
実はバリー・アレンはコミックにおける最初のフラッシュではなく、1940年の『Flash Comics』誌でデビューを果たしたフラッシュ(ジェイ・ギャリック)の新たなバージョンとして生み出されたキャラクターなのです。

 既存のキャラクターの名を完全に別人が引き継ぐ、いわゆる「レガシー・キャラクター」は今となってはコミックの定番ですが、フラッシュはその先駆けとなったキャラクターのうちの一人であり、またこの新フラッシュの誕生が後にアメリカのコミックスの”シルバーエイジ”と呼ばれる時代の始まりとなったのでした。
 
フラッシュという名はバリー・アレンだけではなく、その後にも彼の相棒キッド・フラッシュとしても活躍したウォリー・ウェスト、未来からやってきたバリーの孫のバート・アレン、中国のジャスティス・リーグのメンバーのエイブリー・ホーと、かなりの数のキャラクターが使ってきました。
 
先駆けだけあってか、レガシー・キャラクターや代替わり的なエピソードが今まで多くあったのも長い歴史を持つフラッシュの特徴であり、面白いポイントとなっています。
 
また、1961年に『The Flash』誌の#123、”Flash of Two Worlds”で当時のフラッシュであったバリー・アレンとその前のフラッシュであったジェイ・ギャリックが出会うエピソードが展開され、そこで実はジェイ・ギャリックは並行世界の別の地球のフラッシュなのだということが語られました。
 
これが今やコミックではおなじみのマルチバースという概念をポピュラーにした作品の一つで、コミックに限らず幅広いメディアで用いられるようになったのでした。

DC史上でも大きな役割を担うフラッシュ

フラッシュはこうしたコミックの歴史においても重要なキャラクターであり、加えて先述のタイムトラベルなどのハチャメチャなパワーを持ち主であることが相まって、DCコミックスの大規模なクロスオーバー・イベントでも何度も大きな役割を担ってきました。
 
例えば、2011年の『Flashpoint』でバリー・アレンは、宿敵のリバース・フラッシュことイオバード・ソーンとの戦いの中でタイムトラベルをし、母親が殺されなかった別の時間軸を作り出してしまい、それを修正した結果として異なる時間軸が融合し、これまでDCコミックスで展開されたストーリーがリセットされ新たな形で語られるようになるというすごい状況のキーパーソンとなったのでした(このときに生まれた世界は『New 52』というブランド名で呼ばれるようになります)。
 
そして2016年の『DC Rebirth』では、実は『Flashpoint』でバリー・アレンが起こした時間軸の融合はとある謎の人物がバリーの持つタイムトラベル能力を利用したものであったことが明らかとなり、ストーリーが今度はリセットではなく『Flashpoint』以前のものが復活し繋がっていくという事態の真相を探る中心人物となっていきます(このあたりのストーリーはShoPro Booksから邦訳版が『DCユニバース:リバース』および、『バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン』として刊行されています)。

 DCコミックスというとトリニティとも言われるスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンの3人が取り上げられがちではありますが、こんな具合でフラッシュも彼らに負けず劣らず重要なキャラクターなのです。

誕生秘話の最新版!

今回紹介したフラッシュの基本的な誕生秘話を2019年に語り直したのが先日邦訳版が発売となった『フラッシュ:イヤーワン』。彼がフラッシュになるまでだけではなく、ヒーローとして1年目の活躍を描いていくストーリーで、スピードフォースやタイムトラベルなどフラッシュには欠かせない基本的な設定が出てくるので、まず読み始めに最適な一冊となっています。

 ちなみにShoPro Booksからは『フラッシュ:イヤーワン』のライター、ジョシュア・ウィリアムソンが手掛けたフラッシュ誌『フラッシュ:ライトニング・ストライクス・トゥワイス』も刊行中。イヤーワンのときから成長を果たし立派なヒーローとなったフラッシュのさらなる活躍が読みたくなったら合わせてチェックしてみると良いでしょう!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
@Sir_Motor

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