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【おしえて!キャプテン】#10 最強のキャプテン・アメリカは?/ハロウィンにまつわるヒーロー&ヴィランを教えて!

キャプテンYことアメコミ翻訳者・ライターの吉川悠さんによる連載コラム。前回に引き続きnote読者の方からいただいた質問にお答えします。今回は「最強のキャプテン・アメリカは?」「ハロウィンに関するヒーロー&ヴィランを教えて!」という二つのリクエストに答えていただきました!

最強のキャプテン・アメリカは?

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一つ目は、「最強のキャプテン・アメリカはどれか」というご質問ですね。80年もの歴史があるので、あれもこれもと思いつきます。そもそもキャラクターの強さは物語を決定するファクターではないので、あくまで作中描写から推測されるお遊び程度のお答えになりますが、それでも良ければお付き合いください。また、話の範囲もスティーブ・ロジャースに限定します。

まず、超人兵士としてのキャプテン・アメリカの能力ですが、肉体的には人類の頂点であり、あらゆる面でオリンピック級の実力の持ち主と言われています。
1992年の『キャプテン・アメリカ』#402では、トレーニング中のキャップがベンチプレスで500kgを持ち上げている描写があります。現実の世界記録はフルギアで508kg、ノーギアで335kgだそうですので、人類の限界はとっくに突破しているような気がします。

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「Captain America」#403 (1992/07)

スーパーパワーを手に入れたキャップ

超人兵士血清による効果以上のスーパーパワーをキャップが持っていた時代もあります。1973年の同誌#158では、悪人ヴァイパーがキャップとファルコンに毒を盛るのですが、その解毒剤を服用したキャップは、なんと副作用で筋力が何倍にも増大されてしまいます。ロープで縛られても簡単に引きちぎり、人間相手の戦いでは手加減せねばならないくらい力が強くなりました。

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「Captain America」#158 (1973/02)

でも、1978年の#218によると、この怪力は「だんだん効果が薄れて消えてしまった」そうです。明確な理由ははっきりしませんが、#193から#214でキャップの創造者であるジャック・カービーが復帰して、これまでの流れとは関係のない自由な創作をしばらく続けていたからかもしれません。そこから怪力のある様子がなくなっているので……。

オオカミ人間、クモパワー、合体……

人外に変身したときのキャップもなかなか強くなります。1992年の#401からの展開では、キャップは悪人によって狼男(通称キャップウルフ)に変えられてしまいました。超人兵士血清の効果とオオカミ人間に変える処置の作用が複合した結果、このときも怪力を得ています。

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「Captain America」#402 (1992/07)

こうしたキャップのメタモルフォーゼに関する話ですと、日本語版がまもなく刊行予定の『スパイダーマン:スパイダーアイランド』もあります。2011年に発表されたこの話ではニューヨークの市民がクモのパワーを得る大騒動が発生します。スパイダーマンがメインの話なのですが、ある因縁からキャップも巻き込まれて大変なことに……。詳しくは、ぜひ本編でご確認ください。

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『スパイダーマン:スパイダーアイランド』(ダン・スロット作/ハンベルト・ラモス画) ※2021年11月25日発売予定
 ニューヨーク市民が突然スパイダーマン化!? ピーター・パーカーとアベンジャーズは、クモの能力を持つ暴徒から街を守ることができるのか……

2018年の『インフィニティ・ウォーズ』では、「インフィニティ・ワープ」という全宇宙の生物が二人で一人に合体してしまうがイベントが発生しました。この「インフィニティ・ワープ」で、キャップはドクター・ストレンジと合体し、米軍最強の至高魔術師ソルジャー・スプリームになってしまいます。おそらく、このときのキャップも相当強かったのではないでしょうか。ただ、ドクター・ストレンジが肉体面で困ってるところをあまり見たことがないので、ストレンジ先生にとって、この合体にどこまでメリットがあったのかは謎です。

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「Infinity Wars」 (2018/01-12)

2020年の『アベンジャーズ』誌#38から2021年の#44では、宇宙創造の力の化身フェニックスが宿主を選ぶためのトーナメントが開かれました。参加させられたキャラクターたちはフェニックス・フォースを吹き込まれるのですが、そこに、黄金に燃えるフェニックス・キャップも登場してます。ただ、トーナメント外の場所で力を発揮しておらず、比較ができないので、そこまで強さは伝わらないのですが……。

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「Avengers」#38 (2020/11)

結局いちばん強いのは?

いろいろ挙げましたが、自分が選ぶ「最強のキャプテン・アメリカ」は、「コズミック・キューブを持っているときのキャップ」ですね!
このキューブは、現実そのものを改変する力を持つ、マーベル・ユニバース全体でも最強クラスのアイテムの一つです。1966年の『テールズ・オブ。サスペンス』#79で初登場し、以来2017年の『シークレット・エンパイア』に至るまでキャップの人生に関わり続け、コミック版の『キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー』でも重要なキーアイテムになっています。神に匹敵する力があれば、個人の怪力のあるなしなんて、関係なくなると思うんですが、どうでしょう?

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『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』(エド・ブルベイカー作/スティーブ・エプティング、マイケル・ラーク、ジョン・ポール・レオン、マイク・パーキンズ画)
現実をも改変するパワーを秘めた未完成のコズミックキューブを盗み出したアレクサンドル・ルーキン将軍。彼が従える冷酷な暗殺者ウィンター・ソルジャーの正体は、第二次世界大戦中に死亡したと思われていたキャプテン・アメリカのかつての相棒バッキー・バーンズだった……。長い歴史を持つキャプテン・アメリカの数々の物語の中でも特に傑作と謳われた作品。

とはいえ、キャップの魅力はパワーよりもその精神です。どんな姿になろうが、能力をもとうが、キャプテン・アメリカの精神を持っていれば、それが最強なのかもしれません。

ハロウィンにまつわるヒーロー・ヴィラン

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続いてハロウィンに関するヒーロー&ヴィランについてのご質問を頂きました。時節柄ちょうどいい話題ですね。

毎年この時期になると、Twitterにいるアメコミクリエイターたちは、お化けなりホラーなりに関するスクリーンネームに変更するので、「ああ、今年もハロウィンが近いなあ。分かりづらい……」と季節の移り変わりを感じます。今年は庭先に2メートルを越える骸骨を飾るのが流行りなのか、ちょくちょく写真を見ますね。

カボチャ頭のジャック・オー・ランタン

さて、ハロウィンに関するヒーローコミックのキャラクターですが、マーベルの方では、そのものずばり、カボチャ頭のマーベル・ヴィラン、ジャック・オー・ランタンがぱっと思いつきます。

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「Captain America」#396 (1992/01)

スパイダーマンと主に戦うB級ヴィランで、中身は何度も代替わりしています。ですが2011年の『ヴェノム』#1で登場したバージョン、通称”ジャック”がキャラクターの格を上げる大活躍をしました。

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「Venom」#1 (2011/03)

同誌はユージーン・”フラッシュ”・トンプソンことエージェント・ヴェノムが主人公のタイトルなのですが、とにかくフラッシュが常に肉体的・精神的・社会的に追い詰められているというすごいシリーズでした。

任務の途中、フラッシュは悪人クライムマスターに正体を知られたことで、恋人ベティを誘拐されたり、脅迫されて悪事に手を貸すはめになったりしてしまいます。このときにフラッシュを散々苦しめたのが、クライムマスターの右腕だった”ジャック”でした。

このジャック、犠牲者の脳をくりぬいて中にロウソクを点すという真性の殺人鬼だったため、彼と一緒に行動するよう強制されたフラッシュは大変な状況に巻き込まれてしまうのです。

エージェント・ヴェノムは、デザインも大変かっこよく人気のキャラクターですが、実際にコミックを読むと、実は想像以上につらい目にあうキャラクターでした。彼の最大の魅力は、心身ともに苦しみに苛まされながら、ギリギリのところでヒーローであろうとする、その苦闘する姿だったと思います。ちなみに『スパイダーマン:スパイダーアイランド』でもフラッシュは活躍するので、お楽しみに!

DCの大傑作コミック

さて、DCの方にもジャック・オー・ランタンはいるんですが、活躍してるところは正直あまり見たことがありません。DCについては、キャラクターというより、そのものズバリ『バットマン:ロング・ハロウィーン』という大名作があります。

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『バットマン:ロング・ハロウィーン』全2巻(ジェフ・ローブ作/ティム・セイル画/ヴィレッジブックス刊)
ハロウィーンの夜に始まった謎の連続殺人。ゴッサムシティを腐敗させる組織犯罪を根絶すべく立ち上がった三人の男、地方検事ハービー・デント、ゴッサム市警警部ジム・ゴードン、そしてバットマンは、連続殺人鬼ホリデイに翻弄される。

ハロウィンの夜に始まった連続殺人事件を中心に、事件を追うバットマン、ゴードン警部、そしてハービー・デント検事の周りで起きるドラマを描いた傑作です。祝日に関する犯罪を起こすカレンダーマンが、不気味なデザインでリファインされて登場したので、強いて言えば彼がハロウィンに関するヴィランかもしれません。

映画『ダークナイト』(2008)には、この作品にインスパイアされた要素があり、2021年にはOVAにもなってます。さらに来年公開の『ザ・バットマン』(2022)にも影響を与えたと言われているので、いまから予習しておくのもいいかもしれませんね。

それではまだまだ外出に気をつけなければ行けない時節柄ですが、お気をつけてハッピー・ハロウィーン!


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今回ご紹介した本


◆筆者プロフィール
吉川 悠
翻訳家、ライター。アメコミ関連の記事執筆を行いながらコミック及びアナログゲーム翻訳を手がける。訳書近刊に『シャン・チー:ブラザーズ・アンド・シスターズ』『コズミック・ゴーストライダー:ベビーサノス・マスト・ダイ』(いずれも小社刊)など。Twitterでは「キャプテンY」の名義で活動中(ID:@Captain_Y1)。