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MCUファン必読! マーベル・ヒーローチームの原点、ファンタスティック・フォーとは?

文:傭兵ペンギン

2021年はマーベル・コミックスを代表するスーパーヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」の60周年! そのメインのヴィランの一人である征服者カーンはMCUドラマ『ロキ』に顔を見せており、MCUファンもきっと「ファンタスティック・フォー」が気になってきているはず。ということで、今回は『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』(クリストス・ゲージ[作]、マリオ・アルベルティ[画]、高木 亮[訳])の発売に合わせ、そんな長い歴史あるチームを簡単にではありますが紹介します!

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▲スパイダーマンとファンタスティック・フォーがチームアップ! 『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』好評発売中

ファンタスティック・フォーとは?

1961年の『The Fantastic Four』誌でデビューを果たしたヒーローチーム。その生みの親は伝説的アーティストのジャック・カービーとスタン・リー(この”生みの親”については諸説あり、二人の間で意見が食い違っているのですが……長くなるので割愛)。宇宙船のテスト飛行の際に宇宙線を浴びてしまったことで特殊なパワーを手に入れた四人が結成したチームで、そのパワーを駆使して科学的な冒険に繰り出し、様々な危機から幾度となく地球を救ってきました。

その最初のメンバーは、世界最高クラスの天才科学者で体を自在に伸縮できるミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズ、そしてその恋人(後の妻)でフォースフィールドを操り透明になったりバリアを張るインビジブル・ウーマンことスーザン・ストーム、スーザンの弟で全身に炎をまとって戦うヒューマン・トーチことジョニー・ストーム、リードの親友でオレンジ色の岩のような強靭な皮膚と怪力を持つザ・シングことベン・グリムの四人。

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▲ファンタスティック・フォーのメンバー

最大の特徴はなんと言っても彼らが家族でチームを組んでいるというところ。登場から時間が経過するにつれてリードとスーは結婚し、彼らの間に子供が生まれてチームに加わったり、後に親のない子どもたちの面倒も見る組織を生み出したりしていきます。そのため物語も家族の関係に迫る危機や彼らの絆について描くものが多く、それぞれ長所と短所を持つ個性的な四人が家族として力を合わせて超銀河レベルから家庭レベルの様々な問題を共に解決していくというあたりが、独自で大きな魅力の一つとなっています。

息子

▲リードとスーの息子、フランクリン。このエピソードではまだ幼い彼だが、強力なパワーを秘めている

そして科学者とその家族がメインのヒーローチームであり、その誕生にも宇宙への探検が関わっていることもあり、全体のテーマとして宇宙や別次元を股にかけたSF冒険ものとなっています。結果として、悪を力で打ち倒すというだけではないストーリーが数多くあり、スクラル人、クリー人、インヒューマンズ、ウォッチャー、ギャラクタスなどなどマーベルの宇宙にまつわる重要キャラクター・種族の多くが『The Fantastic Four』誌で初登場を果たしてきました。実はブラックパンサーも『The Fantastic Four』誌で初登場したキャラクターだったりします。

映像化の歴史

そんな形でマーベルの重要な歴史に関わり、60年もの長い間愛され続けてきたファミリーチームだけあって何度か映像化が行われてきました。日本では『宇宙忍者ゴームズ』というタイトルで放送された1967年のアニメを皮切りに、70年代、90年代、00年代にそれぞれアニメシリーズが展開されました。

一方で映画は、90年代にロジャー・コーマンの製作で映画化されたものの(そもそも映画化権を延長するために作られたものであったため、計画通りに)未公開に終わり、2005年に当時はまだディズニーの傘下ではなかった20世紀フォックスが『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』を公開。同作は当時はまだキャプテン・アメリカではなかったクリス・エヴァンスがヒューマン・トーチ役として出演した作品でなかなかの興行成績を収め、続編『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』まで制作されました。

そしてその後、2015年に改めて映画『ファンタスティック・フォー』が作られますが、こちらは制作過程で監督が途中降板するなどの大きなトラブルがあり大規模な再撮影を行ったことのほうが大きく話題となった作品でした。

ちなみに1994年のアニメシリーズ、2005年、2007年、2015年の映画は執筆現在Disney+で配信中。個人的には2005年の映画『ファンタスティック・フォー』は、全体的な出来と今見たら時代を感じるCGは別として、ファンタスティック・フォーのストーリーとキャラクターを緩やかに把握しつつ若かりし頃のクリス・エヴァンスを見るために、もし時間にだいぶ余裕があったらチェックしてみるといいかもしれません。

……と、決して映画は順風満帆な歴史というわけではないのですが、ついにMCUの中で『ファンタスティック・フォー』の映画化が決定し、今のところフェイズ4での公開に向けて(おそらく2023年以降に)公開予定。先述の通りすでに『ロキ』にカーンが登場済みで、『アントマン&ワスプ:クウォンタマニア(原題)』にも彼の登場が予告されているので、もしかすると「ファンタスティック・フォー」も単独の映画よりも前にちらっと登場するかも……?

『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』

またファンタスティック・フォーを語る上で欠かせないのがスパイダーマン。今や説明不要の人気キャラクターであるスパイダーマンは、ファンタスティック・フォーの初登場から約1年後にデビューをしたほとんど同世代のキャラクターで、同じくニューヨークを拠点に活動しているということもあり、幾度となく共演を果たしてきました。

スパイディ

▲ヒーローであり、天才科学者であるリード・リチャーズはピーター・パーカーの憧れの人物でもある

実はその初共演はスパイダーマンの初の単独シリーズとなる1963年の『The Amazing Spider-Man』の記念すべき第1号で、どうにかお金を稼ごうと苦心したスパイダーマンがファンタスティック・フォーに雇ってもらおうと彼らの基地であるバクスター・ビルディングに乗り込んで戦いを挑み、自分のパワーを見せつけるも、ファンタスティック・フォーは非営利団体であるということを教わり、そそくさと退散するというコミカルなストーリーでした。

もちろんこれで共演は終わらず、特にスパイダーマンとヒューマン・トーチは親友となって、後に共演するシリーズが展開された他、今まで何度かスパイダーマンはファンタスティック・フォー(もしくはその関連組織のフューチャー・ファウンデーション)のメンバーとして加わることもありました。

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▲スパイダーマンとヒューマン・トーチは年齢が近く、お互いに憎まれ口を叩きながらも親友同士だ

今回発売される『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』はそんなスパイダーマンとファンタスティック・フォーの長い共演の歴史の合間で起こった出来事を複数の時代に跨いで描くストーリー。

この一連の物語にはリードの大学時代からのライバルであり、国王であり、ファンタスティック・フォー最大の敵でもありながら、時に味方ともなるヴィランの「ドクター・ドゥーム」が登場。彼もまたファンタスティック・フォーのストーリーを魅力的にしているキャラクターであり、またしてもファンタスティック・フォーを語る上で欠かせぬキャラクターです。この他にも今作にはモールマンやスクラルなどファンタスティック・フォーのヴィランがいろいろ登場します。

ドゥーム

▲ファンタスティック・フォーの宿敵、ドクター・ドゥーム

さらに第二話では最近何かと話題なヴェノムのシンビオートも登場。実はシンビオートがヴェノムになる以前、スパイダーマンが初めてシンビオートの黒いスーツを手に入れた後、脱げなくなって相談しに行ったのがリード・リチャーズであり、このエピソードはその後日譚として展開されています。

シンビオート

▲シーハルク(ジェニファー・ウォルターズ)に寄生するシンビオート

そんな形で『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』はファンタスティック・フォーとスパイダーマンのストーリーを掴むのにオススメの一冊。ちなみに今作は同じようなスタイルで二つのヒーローの共演を描いた『X-MEN/スパイダーマン』の続編にあたるような同じ作者陣による位置づけのシリーズ。また、ライターのクリストス・ゲージは後にPlayStation 4用ゲーム『Marvel's Spider-Man』のストーリーを手掛けた人物だったりするので、ゲームファン的にも要注目の一冊となっています。

映画の前にファンタスティック・フォーを知りたいという方は、拙訳の『マーベル・エンサイクロペディア』と併せて、『スパイダーマン/ファンタスティック・フォー』をチェックしてみてくださいね!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
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