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もうブルースは歌わない『カラーパープル』

1985年公開スティーブン・スピルバーグ監督『カラーパープル』をビデオで観たのは高校生のころで、たぶんこれは良い作品というべきものなのだろうけど、なんだかずいぶん辛いストーリーだなー、という記憶が残っていました。
この映画が2007年にブロードウェイでミュージカル化。
今回は、そのミュージカル版の映画化です。
でも、私は最初のスピルバーグ版の印象がそんなだったんであんまり観る気しなかったんですよねー。でも、たまたまタイミングが合ったので観てみました。


母親を亡くし父親と暮らす黒人姉妹。すごく暴力的な父親で、お姉さんのセリーは、妹よりも見た目も能力も劣るといわれ、父親に強姦され、妊娠した子を取り上げられて養子に出されちゃうんです。しかも2度も。それからセリーは父親に売られるように強制的に結婚をさせられ、嫁ぎ先でもメイドのような扱いを受け、愛する妹とも生き別れになっちゃうんですね。

辛過ぎない?

1900年初頭、奴隷制度廃止後のストーリーで、それまで虐げられてきた黒人男性が憂さを晴らすかのように黒人女性を虐待する。
『弱いものたちが夕暮れさらに弱いものを叩く』を地で行く感じが、すごく辛いんです。『その音が響き渡ればブルースは加速していく』まさにそんな感じ。


こんな話とミュージカルという手法が合わない気がして興味が湧かなかったんですけどね。

映画の後半は、そんなセリーが自分を取り戻していくストーリーになります。まわりにいる勇気ある女性、自立している女性に助けられ、時に助けたりして、セリー自身も変わっていきます。

その内に秘めたエネルギーが少しずつ爆発していく感じが、ミュージカルというエンターテイメントにとてもマッチしていました。

ブルースを歌うわけでも『見えない銃を撃ちまくる』わけでもなく、私はアンタを置いて先へ行くよ、未来へ行くよ、というポジティブな復讐が、黒人さんたちならではの、生命の躍動そのもののような歌と踊りで表現されていきます。

最後にあらゆることが妙にうまくおさまって大ハッピーエンドになるのは、まあ、ミュージカルの宿命ですかね。

でも、観て良かったです。
みなさんもぜひ!と言いたいところですが、もう、あんまり上映している劇場は少ないかも。
いつか、ネトフリかアマゾンあたりで、ぜひ!

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