相手をハッとさせる一流の質問
みなさんは「質問」は得意ですか?
と、こんなふうに、「質問」から始まる文章やスピーチによく出会うと思います。
質問は、効果的に使えば、相手の注意を引いたり、話を盛り上げることができます。話し上手より聞き上手になろう、そんな本や記事もたくさんあります。それくらい、「質問」が持つ力は大きいのだと思います。
私自身も、仕事で経営者にインタビューする機会も多く、「質問」については昔から色々と考えてきました。と、ちょっとかっこつけてしまいましたが、正直に言えば、昔は「質問」が苦手でした。しかし、ある人に「一流の質問とは何か」を教えてもらって以来、質問を考えるのが好きになりました。(上手くなっているかは別です。)
ということで、今日は、ビジネスでも家庭でもよく使う「質問」について書いてみたいと思います。
俺とキムタクの何が違うか言ってみろ!
まず、私が質問で大失敗した例をお話します。
それは、誰もが知っている有名なアパレル企業の会長(70歳くらい)にお話を聞いた時のこと。小さなお店を一代で全国区のブランドに成長させた、その秘訣を聞こうと、私は事前にたくさんの質問を用意しました。
などなど、今思えば実況見分のような、細かすぎる質問リストを持って伺いました。そして、矢継ぎ早に次々と質問していったのです。
最初は、一つずつ丁寧に回答頂いていたのですが、あまりに昔のことをこと細かく聞かれるので、ついに会長に怒られてしまいました。
「ちょっとあなた、俺の顔とキムタクの顔、何が違うか言ってみろ!」
私は、一瞬何を言われているのかわけが分からなくなりました。もちろんそれまでキムタクの話なんかはしていません。しかし、どうやら会長を怒らせてしまった、そのことだけはわかりました。私が黙っていると、会長はこう言いました。
「細かく見れば、俺の顔も、キムタクの顔も、鼻が数ミリ、目が数ミリ違うだけで、そんなに変わらん。でも、そんな細かいところを見てもしょうがないでしょ。人間全体を見ないと。そういうところを聞いてくれよ。」
私が聞きたかったのは、ブランドが成長した秘訣。細かい店舗の展示方法ではありません。なのに、私の質問は重箱の隅を突くようなことばかりで、本質的な内容に踏み込めていない。そのことを、インタビュー相手からずばり指摘されたのです。
その後、会長からはブランドではなく「人間にとって大事なこととは」というお話を聞き、最後はお許しを頂いて、親子丼をごちそうになって、「記事楽しみにしているよ」と言われて帰りました。この時のことは今でも鮮明に覚えています。普通、他の会社の人を怒ったりしないですよね。会長には、本当に感謝しています。
この経験を経て私は、経営者に細かすぎる質問をするのはやめようと思いました。でも、どんな質問をすれば良いのだろうか? 特に、ブランドが成長した秘訣を引き出すにはどうしたらよいのか? その疑問は解決できず、もやもやした思いでしばらく過ごしていました。
編集長が教えてくれた一流の質問
そんなある日、とある雑誌の編集長とご飯を食べる機会がありました。その雑誌は日本の名だたる経営者が毎号のように登場している雑誌。その編集長ですから、有名な経営者には大体あったことがあるような、そんな方でした。
会長に怒られた話を打ち明けた上で、「いつも経営者にはどうやって質問しているんですか?」と聞いたところ、こんなことを教えてくれました。
「岡田さん、雑誌記者にとって、一流の質問ってなんだと思いますか?
社長がすでにメディアで話したことがあることを聞く質問、これは三流です。例えば、経営方針はなんですか?聞いても、過去どこかで話した内容が繰り返されるだけです。これでは記事にはなりません。
二流の質問というのは、社長が過去話したことはないけれども、気になっていることを聞くこと。例えば、社長の後継者問題などですね。これが引き出せれば、記事にはなります。でも、なかなか話してはもらえません。
では、一流の質問とは何か。それは、社長が過去話したことも考えたこともなかったけれど、『確かにそれは、避けては通れない重要な質問だ!』とハッとして、その場で一生懸命考えながら答える、そんな質問です。
取材はいつも準備通りになんかいきません。だから私は、あまり細かく準備しすぎずに、どんな質問がこの経営者にとって避けて通れない重要な質問なのか、それだけを考えながらインタビューしているんですよ」
この話を聞いて、私はハッとしました。私が会長に聞いた質問はどれも、過去話したこともあるか、大して重要でもないことについての質問ばかり。会長が『考えてもいなかったけど、確かになぜだろう?』と思えるような質問を繰り出すことは、全くもってできていませんでした。
脳内シミュレーションで質問を育てる
それ以来私は、「避けては通れない重要な質問」とは何かについて、ずっと考えています。これはなかなか簡単な答えは出てきません。
ただし、分かったことがあります。それは、事前のシミュレーションの大事さです。質問を考えるだけでなく、相手がどのように返事をしてくるのかを予測する。そして、その返事に対してどうやって更なる質問をするのかを考える。膨大な脳内シミュレーションを行い、将棋や囲碁のように、数手先を予測しながら質問を考えていくと、やがてもっとも大事な質問が見つかることが多くなりました。
もちろん、実際の会話はその通りにはいきません。しかし、事前にシミュレーションしておくと、慌てることがなくなります。「お、このパターンできたか、ならばこの質問だ」と、余裕を持って話せるようになりました。
また「この質問をすればみんな唸る!」といった、万能な質問はありません。しかし、良い質問だったかどうかは、後から確認できる気がしています。
例えば、良い質問ができれば、聞く人にとってはもちろん、答える人にとっても気づきがあるので、「話しながら頭が整理しましたよ!」なんて感謝されることが、たまにあります。また、インタビューが終わった後も頭の片隅でずっと考え続けてしまい、次に会った時に「あのときの質問、まだ考えてますよ」なんて言われることもあります。
この人の質問はいつも鋭いな、この人にまた質問されたいな。そう思われるような質問を考えるのが、良いインタビューアーではないでしょうか。そんな人に、私はなりたいと思います。
気軽な質問も、大事な質問も
とはいえ、いつでもそんな鋭い質問ばかり繰り出されても、相手も身構えてしまいます。
時には、気軽な質問や、興味を引く質問も必要ですよね。
というわけで、みなさんは「質問」は得意ですか?
私は、得意ではないけれど、好きです。
※日々の考えをTwitterで書いて、まとまったらnoteにしています。
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