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湯島天神の鉛筆が教えてくれた、人を動かす面白さ

「人を動かすこと」の面白さに気づいた中学受験

2月に入ると、いよいよ受験も終盤。

今年は新型肺炎などもあり、心配ですね。
受験生の皆さんが、テストで実力が発揮できるように祈っています。

ところで、私の人生最初の受験は、中学校受験でした。

親に言われて5年生の終盤から始めた私は、一番下のクラスにギリギリ入塾。国語は苦手ですが、算数は大の苦手で、勉強も全く好きではありませんでした。

しかし、6年生の時、ある算数の先生との出会いが、私の勉強嫌いを変えました。

その先生のクラスでは、毎回10問程度の小テストが出るのですが、1番最初に全問正解した生徒は、学問の神様である「湯島天神」の鉛筆がもらえるのです。

最初は手も足も出なかったのですが、なぜか無性にその鉛筆が欲しかった私は、生まれて初めて「予習・復習」なるものをやるようになります。その結果、いつしか毎回のように鉛筆がもらえるようになりました。

鉛筆の本数が増えるのと比例して、算数の成績がぐんぐん上がり、気がつけばあんなに苦手だった勉強が好きになっていたのです。

あの時の経験が私に教えてくれたもの。
それは、「正攻法以外にも、人を動かす方法がある」ということです。
いい学校に入る。成績をあげる。それが正攻法のモチベーションだとしたら、「鉛筆が欲しい」という、少しずらした目標が私を動かし、結果的に「成績を上げる」という本来の目標を達成していた。

「人を動かすこと」。その一筋縄ではいかない面白さが、広告会社にいる今の自分の原点になっています。

ワクワクする「アナザーゴール」が人を動かす

東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘先生は、この「少しずらした目標」のことを「アナザーゴール」と呼んでいます。

沼田先生は、『サビで踊りたいから掃除を頑張る「ダンシング掃除」』や『都道府県をパワポでプレゼンする「勝手に観光大使」』など、子ども達がワクワクするような「アナザーゴール」を上手に使いながらも、本来の教育が持つ目標も達成しています。

「人はワクワクしないとやる気になりません。そのためには、テンションが上がる別の目標「アナザーゴール」を用意して、楽しく意欲的に取り組ませることが大切です。」

これは、大人でも同じことだ、と沼田先生は言います。

「かっこいい水着を着たいから、夏までに痩せる」
「結婚が決まったから、料理教室に通う」

「やらなければならない」という正攻法の目標よりも、その人がワクワクするような、少しずらした「アナザーゴール」の方が、結果的に人を動かす原動力になることがあります。

この「アナザーゴール」の考え方は、教育の話だけではありません。仕事をする上でもとても役に立つものです。

例えば、経営トップが従業員にメッセージを発信する時。株価や経営数字の達成は重要な目標ですが、少しずらした「アナザーゴール」を設定した方が、結果的に組織が動く場合があります。

有名なのは、アメリカのケネディ大統領による「月へ行く」という宣言。いわゆる「ムーンショット」です。

本来の目標は、ソ連に負けない技術開発力を持つことでした。
しかし、そのままストレートに「技術開発力を今よりも上げよ」と伝えるよりも、「人類で初めて月に行くぞ」と言われた方が、技術者の魂に火が付きます。
その結果、ソ連を上回る技術力を手に入れることができたのです。

人を動かす目標を作る。

ワクワクする目標「アナザーゴール」がもつ力は、成し遂げたい「何か」を持っている全ての人にとって、大きな武器になります。

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また、そんな人と一緒に、ワクワクする目標を作り、伝えるお手伝いをしたいというのが、今の私の仕事の原動力です。
そう思えるのも、あの時、算数の先生に出会ったからです。

中学受験の目標は、「目標達成の楽しさ」だった?

そういえば、中学受験の結果についてお話ししてなかったですね。

算数の成績は上がったものの、第一志望だった中高大一貫の学校には合格できず、中学受験は失敗に終わりました。
しかし、その後、高校からしか入れない学校に入学し、素敵な出会いや経験があり、今に至ります。振り返ると、あの時の不合格は必ずしも「失敗」でもなかったな、とも思います。

もしかしたら、「第一志望の合格」という目標ですら「アナザーゴール」だったのかもしれません。

本当の目標は「(鉛筆をもらうという)目標を達成する楽しさ」を学ぶこと。そう考えると、とても良い先生に巡り会えたことに、改めて感謝の気持ちが湧いてきたのでした。

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