サポーターって何なんだろう

ベルマーレの試合でも、個人的に応援してる選手のチームの試合でもない試合を、ある夜DAZNで見てた。


その試合はめまぐるしい展開の試合でドローに終わった。試合後、その対戦で順位が上位だった側のゴール裏中心地のサポーターさんたちが、挨拶に来た選手たちになんやら言って、その言葉を受けた選手2人くらいが言い返してたのか何なのかでもめてる様子が映ってた。


普段からのそのチームの、その選手たちとそのサポーターたちの関係性は分からないし、そのチームの試合はDAZNでは結構見てるけど、現地のあれこれは分からないから、その試合より前に何かもめごとになるきっかけがあったのかどうかとかは見当はつかないけど。


そのチームのサポーターさんの知り合いに、DAZNで試合見てたよと伝えた時に、おそらくこういうことでもめてたんだろうという内容を聞いた。

「自分はこう思う」「それは分かるけど、こういう事情もある」というような冷静な話し合いなら、お互いの実情や立場なども改めて理解できて、そこから得るものもあると思うけど、熱くなって怒鳴って物に当たって…というまともに話し合いができない中で、何か次の段階の結論がいい形で出ることはないような気がする。

声出しOKの状況でもないのに、怒鳴ったりの声出しをするのもルール違反だし、物を蹴ったりして相手に威圧感を与えて相手を自分の思う通りに動かそうと思ってたとすれば、それはとても悲しいことだ。

そしてもし、そういう意図はなく衝動的に物に当たってたなら、それはそれでこれからもそういう行動に衝動的に移す可能性も高いということ。

物に当たるなどの行動で誰かがケガしたら?仮にゴール裏の誰かが同じことをして、自分や身内などがケガしても「仕方ない」と言えるのかな。

「一緒にゴール裏でみんなで応援しましょう!」と呼びかけても、ルール違反をする場所、もめごとが起こる場所、安全に近づけない怖い場所というイメージがついてしまえば、新たにその席に誰かが入ってくることはなく、同じ顔同じ体制の輪の中でずっと応援していくことになる。

すると、世間一般では「これはおかしい」と思うことも当たり前とされて、「自分たちルール」でその場所は回っていくことになる。

何か問題が起きても、「え?うちではこんなの普通だよ?」と思う人も多く出てくるだろう。


私は今回DAZNでその様子を見たこのチーム自体には、むしろ好印象を持ってる。私が知ってるサポーターさんたちも、人の気持ちを考えられる人たちだと思うし、そのチームの選手たちもそれぞれの個性を大事にしつつ、チームのことも考えてるんだなというのが伝わってくる。

私が客観的に見ててそうなんだから、そのチームのサポーターさんはそのチームのいいところをもっともっと知ってることだろう。


それでも、そういう映像を見てしまうと「怖いな」という印象が先に出てくる。熱心に応援するの自体は素晴らしいし、そういう人たちがいてくれてこそクラブが成り立つのも分かってるけど、そもそもサポーターって何だろうか。


サポーターはチームをサポートする人。シーズンチケットを買ったりグッズを買ったりして、金銭的にチームを支援するのもサポートだし、それ以外のボランティアやそれぞれができることで、金銭面以外にチームの役に立つのもサポートの一つ。

選手たちが「応援してくれるサポーターのために」という言葉を使う時、まず浮かぶのがたいていはゴール裏だろう。大旗やダンマクの管理なども含め、試合日以外もチームのためにたくさん頑張ってくれてると思う。

どんなに遠いアウェイでも足を運ぶのも、誰もができることじゃない。金銭的なこともそうだし、仕事のこと、家族など周りの状況などいろんな面をクリアしないと、俗にいう「コアサポ」は続けられないはず。

今、私がコアサポになってくださいと言われても、どの面もクリアできそうにない。だから、私はどこのチームでもそういう熱狂的で熱心なサポーターさんに「すごいなあ」「サッカーを盛り上げてくれてありがとう」と思ってる。小さい頃からサッカーが大好きな私には、少なくともそういう熱心なサポーターの人たちに対して、はじめからの偏見や色眼鏡はない。


その上で、例えばルールを守れなかったり、興奮してもめごとを起こしてしまうことが、「応援してるんだから仕方ない」「熱くなってこそ真のサポーター」「世間から見たら非難されることでも、自分たちには普通」というのは、本来の「チームへのサポート」という意味からは離れてしまってると思う。


チームを盛り上げたい、もっとたくさんの人にスタジアムに来てもらいたいと本当に思うなら、恐怖を植え付けるような騒動は逆効果だし、熱くなれば多少の暴動や過激な言動は仕方がないとその人たちがもし思ったとしても、スタジアムだから別の法律が適用されるなんてことはなく、世間や日常という枠の中にスタジアムやサッカーも存在する。


新しくスタジアムを建てようという話がどこかの町で出ると「サッカーに興味ない人もいるのに」「それで税金が上がるのは納得いかない」「サッカーってサポーターが暴れるんでしょ、そんなの近所で起こったら嫌」というような話を聞く。

誰もが同じものを好きなわけはなく、サッカーを好きな人たちも、全然違う分野の施設のために協力してくださいと言われても「え?なんで?」と思ってしまう人もいるはずで、それと同じこと。

その人が好きじゃないこと、興味がないことに関して理解を得ようというのはとても難しい。

ただでさえそうなのに、一般的な人たちに「サッカーは問題を起こす」「暴れるから怖い」という印象を与えてしまうのは、ものすごくマイナスだし、それ以前に私は自分の大好きなスポーツが、世間から見てそんなふうに思われてしまうのがとても悲しい。


世間なんか関係ない、自分たちのやり方でサッカーを盛り上げたいんだというコアサポさんたちもいると思う。だけど、そこにクラブがあるというのは、世間や一般の協力なしにはそのクラブは存在できないということだと思う。

試合日になれば公共交通機関を利用するサポーターも多い。車で行き来しても一般の道路を使う。県や市の協力があって試合も開催されてる。試合前後に街で何かを買ったり飲み食いすることもあるだろう。

「あそこのチームはマナー悪いな」と思われれば、スポンサーさんの減少につながる。金銭面で苦労したことがあんまりないクラブにとってはピンとこない話かもしれないけど、何気なく気持ちに任せてしてしまった誰か一人の言動が、チームの未来を変えることだってある。


「だけど、選手に対してそれはまずいと思われる言い方をするのはよくないのは大前提として、本気で応援してるからこそ選手に対して思うことっていうのはあるよ」

と、その今回DAZNで私が見てたチームのサポさんが言う。


「引き分けに追いついて嬉しいのは分かる。だけどチームとして、次の1点を取りに行く姿勢を見たかったんだよね。結果的に引き分けでもさ、その姿勢を見れての引き分けとそうじゃない引き分けは違うというか」

それは確かに分かる。たぶん自分が選手だったら「やった!追いついた!」とまず思ってしまうのはほぼ確実だ。ただ、勝点0と1は、シーズン終了時に昇格とそうじゃない順位、残留と降格の差につながるのも、長く応援してればしてるほどそういう場面に出会うからよく分かる(ベルマーレも勝点1や得失点差1のおかげでどれだけ助かってきただろう)。


「あとね、これは個人的な気持ちだけど、あぁ勝てなかった、悔しいなと思ってるところに、全然サッカーに関係ないSNS投稿も個人的には気持ちの差を感じてしまうね…。悔しく思ってるのは自分たちだけなのかな、こんなくだけた投稿できるのか…ってちょっと違和感を感じたりとか。

別にその選手の自由なんだよ、何をいつ投稿するかなんてことは。でも同じ熱量ではないのかなって、違う方向を向いてるのかなって悲しくなってしまうことはある。昔ならたとえ頭で何考えてても分からないけど、今はSNSで可視化されちゃうでしょ、難しいよね」

私は基本的にベルマーレの選手でもSNSはあんまり見ないので何とも言えない(公式のアカウントは、試合に行く時とかやっぱり便利かなと思うから見たりもするけど、選手個人のは本当はそう思ってないことでも更新せざるを得ない場合も多いんだろうなとか、ちょっといろいろと思うところあってあんまり見ないようにしてる。商品やお店の宣伝なども、心底その選手が紹介したいと思ってる場合じゃないこともあるんだろうなとか。それはベルマーレに限った話ではないけど)。

見る見ないは個人の自由にしても、今の時代は昔と比べて、SNSに限らず何でも映像や文章が残ってしまうから、逆に大変だなと感じることはある。

昔だったら、なんとなく曖昧な記憶だったり、何の本で見たっけ?あの記事載ってたのって何のサッカー雑誌だったっけ?で終わることが、今はいつどの選手が更新したSNSに書いてあった!とかすぐ特定されるし、いろんな意味で選手の立場もネット社会の中で大変だと思う。

顔を合わせて「これはこういう意味で言った」と言えば「あーそうだったんだ!」と思うことでも、文字だけ、画面だけだと違うように伝わってしまうことも多いだろうし。


その知り合いとも話してたけど、「どんなにコアなサポーターだからって、何をしてもいいとか許されるとかではないよね」って。

チームのためにそこまでできるのは本当に立派だし頭が下がる思いだけど、イコール人として偉いとかすごいではない、そこを勘違いしたらダメだと思う。


個人的に応援してる選手のチームの試合を応援に行った時も、アウェイだったこともあって、ホームほど席種を選べないから、普段ゴール裏中心地にいる人たちとめちゃくちゃ離れてるとまでは言えない場所にいた時がある。


声出しはダメなのにチャントを歌ったり、試合後も自分の席から選手を迎えてくださいと何回もアナウンスで言われてるのにも関わらず、当たり前のように一番前の柵まで行って、警備員に何回も注意されて止められてるのに「何が悪いんだよ。うるせーよ!」。

私よりだいぶ年上の人たちも、当たり前のように警備員を押しのけて前に行ってて、恥ずかしい気持ちになった。

それでも、たくさんの試合に応援に行く人はそれだけで偉いのか?その人と仲が良くて一緒に応援する人も偉いのか?

自分の目で見るまでは、そのチームのサポーターさんたちがゴール裏の一部の人たちを悪く言ってもうのみにはしないようにしてきた。でも、自分の目で見てからは、そのチームの選手がそのゴール裏のサポーターさんたちに対してにこやかに手を振ってるのを見ると、なんとも言えない複雑な気持ちが押し寄せる。


どこのチームが、とかそういう話じゃなくて、どこにでもある話なんだろう。

サッカーを大好きだからこそ、考えさせられることがあると感じる。

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