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(再会万歳)傷跡①

お盆休みになりました。といっても僕の仕事上、お盆休みはないのですが、僕の友人、学生のサイコパスと、北の大地で強制労働をさせらているデブは、お盆の休みがあります。

久々にご飯に行こうという話になりました。

1 散歩

普段のnoteの流れからいくと、ご飯を食べて、その後サイコパスの策略にはまって散歩をさせられる、というのがお決まりでした。

しかし僕たちは既にその次元を超えたようです。

まるで流れる川の如く緩やかに、集合場所は僕たちの家から8キロ先の駅になりました。前回は、そこから歩いて帰ったのです。前回も歩けたのだから、今回も歩けるだろうと、誰が言うでもなく全員が共通認識を持っていたのです。

つまり、ついに僕とデブは散歩狂のサイコパスによって洗脳を完了され、遊ぶ予定を立てる時に、そこに散歩を組み込まなければならないようにプログラミングされてしまったのです。

僕はまだ抵抗して、車を出そうと言いました。すると、こともあろうかサイコパスではなくデブがこう言ったのです。

「馬鹿野郎甘えんな! 車なんか使ってんじゃねえよ!」と。

終わりです。

2 再会

とりあえずご飯です。
最初はラーメンをすすりに行く予定でしたが、7時前に集合することができたので、飲みに行くことにしました。

手羽先です。手羽先というのはビールと最高のマッチングですよね。

僕たちはスーパードライの大ジョッキを3人分頼み、乾杯をしました。

3 傷跡

僕とサイコパスの生活はほぼ変わっていません。僕は毎日必死に働いていて、サイコパスは学生の身分に甘んじてダラダラと過ごしながら、時々体調を崩して苦しむという生活です。

しかし、デブは違います。

デブは確か6月の末から、会社から早速役立たずとみなされたのか、はたまた僻地を開拓する力を見出されたのか、極寒の大地へと職場を移していたのです。

僕とサイコパスはなんとなく概要は知っていましたが、デブの口から直接北の大地の恐ろしさを聞いて、彼の生活がいかに変わったのかを知りました。

単刀直入に言うと、デブは北の大地で命以外の全てを失いました。

田舎では娯楽がせいぜい酒しかないのでしょう。デブは上司やら同僚やらと日々飲み歩いていたそうです。そして、デブは先のことを考えて行動するタイプでは全くないので、その場が楽しいのなら、自分の許容限界を超えてアルコールを体に流し込むのも容易いのです。馬鹿ですね。

彼はものの見頃に記憶を失い、気づいた時には、松屋の券売機の前で財布が見つからず途方に暮れていました。

財布を失ったということは、その中に含まれるあらゆる非常に大事なカード類も失うということです。これで彼は車に乗れません。病院にもうかうかと行けません。現金非対応の店からは門前払いです。

普通の人なら、ここで死にます。絶望して、この世界を恨みながら昇天するでしょう。少なくとも僕とサイコパスはそうなります。しかし、デブは違います。彼は豪運と楽観視だけで波瀾万丈の現代を生き抜いた男です。彼のポケットには家の鍵が奇跡的に入っており、しかも同様に無くしていたスマホは、仕事終わりの謎のDJがわざわざ拾って渡しにきてくれたのです。

よって、この一連の話を聞いて、傷ついたのは僕とサイコパスです。自分だったらと想像してしまったのです。当事者であるデブはいつもみたいにゲラゲラとバカ笑いをして、懲りずにビールをガブガブとヴァイキングのように飲み干すのです。

サイコパスは言うまでもなく狂った奴で、人類の恥ではありますが、デブもデブで狂人の一種なのではないかと強く思いました。

5 退店

楽しく喋っていると、手羽先はただの骨になっていました。


僕たちは店を出て、散歩へと向かいました。とても自然に。

やはり僕は散歩になど行きたくありませんでしたが、狂った奴と狂った奴に囲まれて、どうやって反対意見を押し通せるでしょうか。

続く

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