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UFOキャッチャーへのトラウマ

この世には、UFOキャッチャーという魔の遊戯が存在しています。
それは、欲しいものががすぐ目の前にあるのに、どれだけ手を伸ばして、どれだけ小銭を注ぎ込んでも、一枚の透明な板が邪魔をして、決して手に入らない構造を持った、殺戮兵器です。

僕がその恐ろしさを知ったのは、齢二桁にも満たない子どもの頃でした。UFOキャッチャーという存在は知っていて、目の前でクレーンがぬいぐるみを掴み、人々の手の元にやってくる瞬間を何度も見ていたので、親にやってみたいと言ったのです。親ははじめ、首を横に振りました。今思えば、UFOキャッチャーの恐ろしさを知っていたからでしょうが、ガキの僕は怒りました。やらせろよ、と。
そして、いざやらせてもらって、現実を知ったのです。

この世の理を.....

アームの弱さと、欲しいものが目の前にあるという欲求を発生させやすい姑息な外見、今やめたら他の誰かにとって取りやすくなって、奪われてしまうのではないかという恐怖。

僕はそれ以来、UFOキャッチャーをすることはありませんでした。あんなもの、金をドブに捨てるようなものです。

僕は高校生になりました。
その時に出会ったとある奴が、UFOキャッチャーの達人でした。狙ったものは確実に仕留めます、それが例えどれほど大きなぬいぐるみであろうと。

それを見て、僕はもう一度アームを握る気持ちになりました。トラウマを克服する時です。同い年のこいつができるのだから、僕にできないわけがないと、そう思ったのです。

しかし、また現実を知っただけでした。

できる奴とできない奴がいる。

努力をしようにも、UFOキャッチャーの努力だなんて、お金を落とさないと努力する土壌にも立たせてもらえません。

二度とやるものか。


それから数年の時を経て、僕は彼女と出会いました。彼女に様々なプレゼントを贈りたいと思うのは当然ですが、彼女と話す中でふと思ったのです。UFOキャッチャーで頑張ってとったプレゼントは、普通にあげるプレゼントとはまた違った喜びを授けられるのではないか、と。


過去のトラウマがすぐに僕を捕らえて、束縛します。金の無駄だ、結局取れずに涙を流して終わりだ、と。


僕はトラウマに頷きました。UFOキャッチャーは確かに不条理で、結果的に数千円をぬいぐるみの前で捨てることになる可能性は大いにあると。けれども、自分のためではなく、彼女のためにお金を使えるのは本望で、彼女は、例え取れなくても、取ろうとした過程を重視してくれる人だと知っています。だからこそ、取りたいのです。蓄積された経験をフル活用して、チャレンジしたいのです。

僕は血走った目で千円を100円玉10枚に錬成しました。
そして、UFOキャッチャーの世界の中でしか見ない、んぽちゃむの前に仁王立ちしたのです。








やったーー!!!!!!!!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

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