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SF小説『___ over end』④

 静止軌道上宇宙ステーション〈ファースト〉
 地球連合の正規隊員になったばかりの新人たちを引き連れて、教官がオペレータールームに入ってきた。新人たちの顔は緊張しつつも自信と興奮に満ち溢れている。とっくに落第した者たちのことなど忘れているに違いない。
「今日から君たちは晴れて正規の隊員になったわけだが、だがまだまだ学ぶことは多い。そう簡単にお望みの配属船に乗れると思うなよ。君たちはそれぞれ別の宇宙ステーションのオペレータールームに研修生として配属され、そこでの任務をこなす。任務をこなしながら、希望の配属船に入る準備をするんだ。クリス」
「はい」
「君の配属希望は?」
「バードウイングです」
「いくら君とて、いばらの道だぞ」
 クリスは肩をすくめた。ちょうどボーっとしていたのを教官に気づかれたようだ。
 教官はいつにもまして熱々とオペレータールームの講義を始めたが、やっぱりクリスの耳には入ってこなかった。その視線は自然と地球へと向かっている。
「ホワイトが気になるの?」
 クリスの隣にいたフィールズ・マーカスが髪を耳にかけながら小声で喋りかけた。
「もちろんそうさ。アルジーもね」
 マーカスはむっとした。
「あいつは落ちた。それだけよ」
「落ちるような才能じゃない。それに情熱も人一倍だ」
「けど実際落ちたのよ。もう忘れて、私たちは宇宙の仕事に専念しましょ」
「三年間一緒に訓練した仲間だ。忘れないし、すぐ戻ってくると信じてる」
「でもクリスだって知ってるでしょ。彼女は――」
 突然、オペレータールームに危険を知らせるおぞましいブザーが鳴り響いた。今までは談笑なんかもしながらリラックスして業務に当たっていた人々が、急に深刻な顔つきでモニター画面と睨めっこをし始めた。
「なんだ?」
 教官もオロオロしている。こんな状況じゃなければ、オロオロする教官を動画で撮って、後で皆で爆笑する材料にでもしようと思っただろう。しかし、現場の緊張感の増大がそんな悠長な気持ちを吹き飛ばす。危険を示すランプの数は増えていき、ブザーの音が次々に重なった。
 誰かのヒステリックな叫びが聞こえてきた。
「月面基地の職員が暴動を起こしただって?」
 クリスたちの間にもざわめきが走った。
「暴動⁉」

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