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SF小説『___ over end』

 月面基地〈ヴィンテージ〉に、一隻の太陽系外惑星探査船が長旅を終えて帰還していた。その宇宙船の背中には、ボロボロになった小型の宇宙船が括りつけられており、基地内で帰還の光景を見ていた月面の職員たちは眉をひそめた。
「これは何です?」
 大きい方の宇宙船から出てきたキャプテンを月面職員たちが質問攻めにする。長旅で疲れているキャプテンはやや苛立ちながら答えた。
「わからない。帰る途中に拾ってきたからまだ中は見ていないんだよ。ん? あぁ、生命反応はなかった。土星を周回する小型船の一つだろう……そう、見つけた時からこのボロボロの状態だった。戦闘があったのかだって? 戦闘があったらこんな優雅に帰ってこないだろ!」
「皆さん!」
 キャプテンがついに怒りで叫んだと同時に、小型船を覗いていた職員が大声を上げた。
「何だ?」
 不機嫌なキャプテンと共に職員たちが小型船に集まる。
「見て下さい、あそこ。何やら赤いランプがついたり消えたり。ピッピッピッピと」
 キャプテンの顔から血の気が引く。
「皆、逃げ――」
 遅かった。
 激しい爆発音と共に、小型船が木端微塵に破裂した。爆発の衝撃で職員たちも一斉に吹き飛ばされ、宇宙船の残骸が飛び散りまくった。
 緑色の煙がモクモクと部屋を充満し、煙はまるで食事をするかのように、倒れている人々の体に覆い被さっていった。


 静止軌道上宇宙ステーション〈ジム〉。
 恐ろしい見た目をした教官が、教え子たちを一列に並べた。
「クリス・カーン」
「はい」
 ブロンドの髪を揺らしながら、爽やかな顔立ちの青年がより背筋を伸ばして返事をした。
「筆記テスト、実技テスト共に満点だ。言うことはない。創立以来の快挙だ。我々地球連合は、君を正式に連合隊員として認めよう」
「ありがとうございます!」
 クリスの肩から少し力が抜け、逆にその隣の子の肩に力が入るのがわかった。
「アルジー・トレバー」
「はっ、はい!」
 シュウマイみたいなフォルムをしたアルジーは、今からでも合否が変わる可能性があると言わんばかりに張り切って返事をしようとして、見事に失敗した。アルジーの顔は真っ赤になる。
「……筆記テスト……実技テスト共に……」
 教官の歯切れが悪い。
 並んでいた訓練生たちは一瞬でアルジーの結果を悟り、慰めの言葉を心の中で呟いた。教官が合否発表を言い淀んだ時、その訓練生は落とされる。先輩からも先輩の先輩からも、先輩の先輩の先輩の先輩の先輩からも同じことを聞かされた。
「……残念だが、君を正式に認めることはできない」
 ほら。
 アルジーは俯いてしまった。
「アクス・ウーラ」
「はい」
「合格だ」
「フィールズ・マーカス」
「はい」
「合格だ」
 教官は再び威厳のある呂律を取り戻し、次々と訓練生の名を呼んでいった。
「ホワイト・ルーワァ」
 ルーワァの名が呼ばれ、緑髪で細身の女性が返事をした。
「はい」
「ルーワァ……筆記テストは問題ない……」
 その瞬間、彼女の宇宙で始まる予定だった新たなる人生は終了を告げた。

「アルジーとルーワァ。三十分後の箱に二席用意した。それに乗って地球に帰れ」

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