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自然生態系農業のまち宮崎県綾町で〝生きるための食〟を学ぶ

久しぶりの、旅。
普段は学校の授業もあるため、この夏休みが長期で出かけられるチャンスとばかりに旅に出ることにした。自車のカーナビが鹿児島県まで勝手に旅をしていたことをきっかけに(カーナビの機能としては失格)、行き先を九州に据えた。

徳島を出発して愛媛の八幡浜からフェリーで大分県の別府まで。20年以上ぶりの大分県。カボスと温泉マークと湯上がりの人をたくさん見かけて、見事に食いっぱぐれて、ホテルに手拭いを忘れて、いろいろ心残り。
翌日、南下して宮崎県入り。高速道路を移動中、SAが少なくて2時間通しで運転…。歌いながら眠気を飛ばしたが、食べ物にありつけないのが辛かった。

Map-It マップイット(c)

綾町へ向かう道中、学生時代からの友人に会えたのはうれしかったな。

つかの間のおしゃべりは15年ぶり。元気で何より。

宮崎県の綾町では、友人の勧めもあって 薬膳宿舎ビオスごうだ を訪ねることにした。部屋に入った瞬間に長野県の穂高養生園の景色が浮かんだのは木の香りがよく似ていたから、かもしれない(五感の記憶ってすごい)。初めてお会いする郷田美紀子さん(管理薬剤師/百姓)は思っていたより小柄で、でもエネルギッシュな方。「まちの中に森をつくったのよ」という宿は様々な草木がそよいでいて、部屋からもお風呂からも緑が見えて、とても気持ちがよかった。

食事は「五味調和*」の考え方から作られる薬膳料理。薬膳料理と聞いて「何かからだに良さそう」というイメージを持つのが精一杯だったけれど、食べて納得。旅の始まりがこの食事だったからか、旅の最後まで体調はすこぶる良かった。「おいしい」食事は、見た目でわぁ〜!と喜ぶハレのメニューだけではない。ケの食事でちゃんと「おいしい」と反応できる体づくりこそ、学校で提供する食事の役割なのではないか。そんなことを思った。

五味調和
「酸(すっぱい)」=肝臓や胆のう、「苦(にがい)」=心臓や小腸、「甘(あまい)」=脾臓や胃、「辛(からい)」=肺や大腸、「鹹(しおからい)」=腎臓や膀胱、というようにそれぞれの味は各臓器を助ける働きをもちます。すべてのものは、取り過ぎると身体を痛めます。しかし、他の味を組み合わせることで各臓器の負担を軽減したり良くすることもできます。
この五味のバランスを、調味料や食材で整えて美味しくいただくことは、昔から日本人が続けてきた生きる知恵なのです。

薬膳茶房オーガニックごうだHPより

いただいたお料理はほんとうにおいしかった。味付けも絶妙で。それに、薬剤師である郷田さんが薬局の中に台所をつくり食事指導を行っているのだから、その説得力たるや。

あと、車麩の唐揚げと、お魚のカルパッチョも。ものすごく品数があったのでごはんはパス。よく噛み、よく味わった。

翌朝は、冷や汁(宮崎の郷土料理)。これも滋味深く、とてもおいしくいただいた。

綾手づくりほんものセンターへ

綾町は、1988年に全国初の「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定したまち。その翌年、自然生態系農業の基準の設定、認証方法についての基準を設け、農産物に金・銀・銅のラベル表示をするようになったそうだ。

隣には、生産者名簿一覧表が掲げられていたし、加工品にもすべて「◯◯さんの〜〜」というようなPOPがあり、つくり手の顔が見える売り場だった。

「ほんものとは、人をだまさない。自分中心にならない。そして地球の環境を汚さないもののことである」とは、30年以上前に美紀子さんの父、實さん(元綾町長)がおっしゃった言葉。綾町が「自然生態系農業」をすすめている背景に、数十年に渡る活動、運動、地域の方々の思いがあったことは美紀子さんからお借りした資料を読んで知った。

旅から帰って大元鈴子さん(鳥取大学)の「ローカル認証」 を開くと、やはり綾町のことが載っていた。事前にちゃんと読んで行けばよかった…。

行き当たりばっ旅。
だけど行き当たりバッチリ。

愛読誌『うかたま 』にも郷田美紀子さんが連載されている。改めて読み返しているところ。

郷田美紀子さんと

つづく。