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行けば地球が良くなる旅 in BALI⑥ 文化と持続性と人の幸せ
旅することで世界の課題を知り、視野を広げ、視座を高める。
ほんの少しでも社会の課題解決に取り組む意欲を湧かせ、出来れば行動する。そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。
私はその立ち上げ前から強く共感して関わっていたこともあり、企画されたツアーには基本的に全参加することにしています。今回のインドネシアのバリ島でのスタディについてこれまで5回に渡って旅のレポートと私が感じた価値や学び、気づきについて書き連ねて来ました。今回を最終回として、バリ島スタディツアーのまとめにします。
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バリ島の文化的価値
バリ島の特色と言うか、特徴として語られるのは何といっても独自の進化を遂げて来たバリヒンズー教の教徒が圧倒的(島民の80%以上!)に多いことと、それが独特の寺院などの宗教施設の建築様式に反映されているのみならず、街中にも宗教的な意匠が広がっている、そしてバリ島の人の暮らしの中に深く浸透しているところです。インドネシアの国全体では逆にイスラム教徒が80%以上を占めるとのことなので、その独自性は際立って目立ちます。私はインドネシア最大の島、スマトラ島など、他のエリアを訪れた事は無いのですが、イスラム圏の社会とバリ島が全く違う文化や思想であることぐらいは女性の服装を見れば一目瞭然ですし容易に判断ができます。そして、それは島全体を包み込み神々の住む島と呼ばれる圧倒的な文化的資産を形成しています。
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カメンとウダンとサプッ
そんな独特のバリヒンズーの文化に触れたくて、ツアー最終日には現地ガイドのYumiさんに無理をお願いして、山の中にあるバリヒンズーの総本山の寺院への正式参拝に行って来ました。Yumiさんにレクチャーを受けると正式参拝にはバリ民族衣装を身に纏いお供えを用意しなければならないとの事で、早速腰に巻くカメンを購入、その上からサプッと言う腰紐を巻き、日本から持っていっていたスタンドカラーの白いシャツを着て頭にターバンの簡易版のようなウダンを被ってすっかりバリ人気取りの正装で聖地に向かいました。滞在していたウブドから車で1時間半ほどかけて山を登り、聖なる山の寺院でバリ人のガイドに細かな作法を教わりながら祈りを捧げて来ました。
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トリ・ヒタ・カラナ
バリ島の殆どの人が信仰するバリヒンズーの祈りは『トリ・ヒタ・カラナ』と言われます。それらの3つの調和を重んじるのが信仰の中心であり、それは
第一に人間と神々との調和
第二に人間と環境との調和
第三に人間と人間との調和
との事です。
また、寺院に行くと祭られている神も代表的なのは3柱でそれらが調和して唯一神サン・ヒャン・ウィディ・ワサに統合されると、インドヒンズー教とは全く違う概念に変化を遂げています。これは唯一神を祀るとイスラムの国の法律が定められている影響とのことです。三本の柱とは、創造の神、維持の神、破壊と再生の神で寺院の広場でお祈りをする際にそれぞれの神にお供えをしながら祈ります。
ちなみに、インドヒンズーは明確な多神教であり、唯一神を奉じるバリヒンズーは全く違うような印象を持ちます。しかし、年中何らかの宗教行事があり、全てのものに神が宿っていると自然を畏怖し、敬うアミニズム的側面を持つバリヒンズーの慣習を鑑みれば根本的な思想は同じなのだと感じます。
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人類の目的
人と神と環境との調和を信仰の中心に据えて殆どの島民がその教えに奉じる、年中何かしらの宗教行事があり、生活の中心がそれにある。優先順位は信仰が何よりも一番大切にすべきと言うのは、私達日本には全く想像が付きませんが、確かに人生は金を稼ぐためにあるわけでなし、モノに溢れた贅沢な暮らしが幸せとは限りません、人が生きる本質的な目的を考えれば、生物として種を守ることが最も根本にあり、そもそも文明はそのミッションを果たす為に発展して来ました。
次世代により良い世界を継ぐことを現代に生きる私たちが親や先祖から引き継いできた最重要課題であると考えれば、神と人と環境の調和以外に必要なものは無いのかも知れません。道を行く見知らぬ旅行者に笑顔で笑いかけるバリ島の人達を見ていて、経済的な豊かさなどほんの一握りの人の狭い価値観なのかも知れないと感じました。洋の東西問わず、バリ島に移住して自然と人の中で暮らす人が多くおられるのも納得です。
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本物の文化の力
現地で様々なフィールドワークをする中で、バリ島の住民の平均的な所得は日本円で3万円程度だと耳にしました。そして、そのうちの2万円は、数多くしょっちゅう行われる宗教的な催しや行事に費やされるらしく、その残りで生計を立てているとのことでした。それでも暮らせるのは核家族化が全く進んでおらず、今も大勢の親類が同じところに住んで助け合って暮らすから。その関係性を保つには信仰は絶対に切り離すことが出来ないのは想像に難くありません。人々の暮らしそのものが信仰の実践になっているのだと思います。そして、その相互扶助の社会システムが生み出すのは、本物の文化であり、島中の至る所に神への信仰が形となって現れています。神々が住む島だと世界中から観光客が集まるのは、コンテンツ化され、取り繕われたハリボテの街ではなく、魂の籠った本物がそこにあるからなのだと思います。西洋的な価値観、経済や金に振り回される事なく、悠久の歴史を刻んできた文化の力がバリ島の経済の8割を占める観光資源となっているのです。
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テーマはエコシステムと文化
この度のバリ島へのスタディーツアーは数多くの学びと示唆を受け取ることができました。現代のマザーテレサと言われるロビン・リムのブミセハット助産院のソーシャルの域を超えたインパクト事業、究極のエコホテルの運営をしながらインパクト・ヒーローの支援をすることで泊まるだけで世界が良くなる濱川夫妻が運営するアースカンパニーのインパクトスキーム、また、食を通してバリの伝統文化を垣間見ることができたグリーンキッチン、世界中から教育に熱心な人が注目を集めるグリーンスクール、本場のヨガを学び、ローフフードレストランで大成功を収めているSayuriさんのレストラン、これら一見に値するツアーコンテンツがバリ島に集まっているのはただの偶然ではないと思いました。その根底に流れているのは『トリ・ヒタ・カラナ』の信仰であり、神と人と自然の調和を守ってきた人々の文化が作ったエコシステム(生態系)が循環して持続しているからなのだと感じた次第です。これから、社会課題大国と言われる日本で生きる私たちが学ぶべきはエコシステムの構築であり、本物の文化の醸成ではないかと思います。
人が生きるに値する社会、持続可能で人の幸せが溢れる社会の実現は経済性を追求する先にはないのだと確信を持つことができました。人生を転換させるのは旅と人と本と言いますが、まさに大きな価値観の転換、パラダイムシフトを受けたそんな旅になりました。企画いただいたNPO法人タビスキと奥田智恵子さんには心から御礼申し上げます。有り難うございました。
最高にいい旅でした。
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金融資本主義の先にある共感資本社会へのシフトを探究する事業を行っています。
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