サッカー選手の腰痛に対しては等速性運動かスタビリティか
抄読論文
要旨
【目的】
サッカーは国際的にも多くの競技者がいるスポーツである。
サッカーの競技者で怪我をしたもののうち、47%は背部の損傷とされている。その中でも腰痛は多くの割合を示し、その腰痛はパフォーマンスに大きく影響する。
最近の研究ではスポーツにおいて体幹の軟部組織の損傷があると、バランスに影響することが報告されている。
体幹のバランス低下は腰痛につながるともされ、それらに対する対処は理学療法において重要な要素を示す。
慢性腰痛を有するサッカー選手の体幹筋は健常者よりも弱化しているとの報告もある。
それに対して体幹筋の等速性トレーニングが腰痛を軽減させるという報告はある。
また、コアトレーニングとしてよく知られるスイスボール(バランスボール)も体幹筋のスタビライズトレーニングとして広く普及しているものであり、同様に腰痛の軽減への効果も予測される。
しかし、全体的にこれらのトレーニングと腰痛の関連性の報告は不足している。
本研究は、体幹の等速性トレーニング(IKT)とスイスボールのトレーニング(CST)、そしてコントロール群を比較し、腰痛、パフォーマンスの影響を検討することを目的としている。
【方法】
本研究は二重盲検でのランダマイズ比較試験(RCT)で行われた。
60人の被験者に対して、IKT、CST、コントロールにそれぞれ20人ずつ割り当てられた。
対象者は18〜25歳のサッカー選手で、3ヶ月以上の慢性的なVASで4〜8の腰痛を有するものであった。
介入はIKTは等速性トレーニング機器(BIODEX)を用いて、体幹屈曲80°から伸展10°の範囲で行った。
角速度は60°、90°、120°で15回3セットのエクササイズを実施した。
CSTはスイスボールを使用して、バランストレーニングを行った。
スパインブリッジ、シットアップ、クロスリフティング、サイドブリッジ等を10回を3セット行った。
コントロール群は、等張性、等尺性の体幹筋トレーニングを行った。
全ての群に平行して、ホームエクササイズを提供し、ホットパックを20分施行した。
【結果】
どの群もベースラインでは差がなかった。
疼痛に関して、4週間後から差が見られ、、3ヶ月後にはIKTでもっとも疼痛が軽減し、CSTでもコントロールよりは疼痛が軽減した。
パフォーマンスに関して、40m走の速度、スプリントやシャトルランの速度もIKTでは増加が見られ、CSTもそれに追従する結果となった。
パフォーマンスでは、ジャンプに関しても測定され、カウンター及びスクワットジャンプが測定された。
これに関してもIKTではもっとも3ヶ月後にジャンプ高さ、パワーともに増大がみられた。
こちらも同様にCSTでもコントロールより増加が見られた。
【考察】
IKTでは体幹筋のパワーや速度など多くの要素での向上が見られる。
腰痛に対処するにあたって、この筋力の要素は重要であり、体幹の安定性が得られることが腰痛の改善に影響したと考える。
CSTもトレーニングにより、深部筋を中心として、筋の動員を増やしていくという役割がある。
それによって、腰痛の改善にも影響すると考える。
どのように活用するか
本研究はサッカー選手の腰痛に対して焦点を当てた研究である。
現役の競技者に対して、RCTを行えることがまずすごいことかと思う。
その中で、IKTとCSTという、どちらも体幹のパフォーマンスを上げるための重要なトレーニングであると思われるものを比較している。
このトレーニングはIKTはBIODEXを使用して、効率よく最大筋力を向上させることができ、広い角度で負荷をかけていくことができるという利点を活かしたものとなる。こちらはパワーの面を向上させていくのに適した動のものになるであろう。
一方、CSTはパワーというよりは、深層筋の活動やインスタビリティを向上させる、静のトレーニングになる。
このように異なる様式を持つトレーニングであるものの、どちらも腰痛に対しては効果がありそうな印象はある。
その中で、結果としてIKTがより腰痛を軽減し、パフォーマンスを上げるという結果になった。
しかし、IKTはトレーニングにBIODEXなどの高価な機器を必要とするため、一般的に容易に行えるトレーニングではない。
その点を踏まえると、CSTも通常の体幹筋トレーニングよりは効果が示されたことが興味深い。
このCSTに関しては、今回はバランスボールを用いたものになるが、ストレッチポールを用いたものや、ヨガ、ピラティスといったトレーニングもこれらと同様の効果があることも予測される。
この知見を生かして、サッカー選手の腰痛に対してもしっかりスタビライズする有効性が理解できたとともに、可能であれば等速性トレーニングは有効であることも理解しておく必要がある。
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こちらは呼吸が腰痛を軽減させるかというものであるが、呼吸も体幹筋のパフォーマンスの一つとして捉えると、重要な役割であることはこの論文からも言えるであろう。
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