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五十肩にはどんなエクササイズが有効か?


抄読文献

Duzgun I, Turgut E, et al.
Which method for frozen shoulder mobilization: manual posterior capsule stretching or scapular mobilization?
J Musculoskelet Neuronal Interact. 2019 Sep 1;19(3):311-316.
PMID: 31475938; PubMed.
凍結肩の動かし方: 手動後方カプセルストレッチングか、肩甲骨の動かし方か?
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要旨

【目的】

本研究は、凍結肩患者の治療における肩甲骨モビライゼーション、関節包伸張、およびこれら2つの技術の組み合わせの優越性を比較し、これらの技術が肩の動きに対する急性効果を評価することを目的としている。

【方法】

本研究は、シングルブラインド、無作為化、前後評価の研究設計で行われた。本研究には、第3段階の肩関節凍結症と診断された54名の患者が含まれていた。グループ1(n=27)は肩甲骨モビライゼーションを受け、グループ2(n=27)は後方関節包伸張を受けた。患者の評価後、組み合わせた適用の結果を得るために、介入がクロスオーバーデザインで再適用された(n=54)。肩関節の運動範囲、能動的全挙上、能動的内転、および後方関節包の緊張が、モビライゼーション前後に記録された。

【結果】

統計分析により、肩の内転を除くすべての運動範囲の値が増加したことが示された(p<0.05)、しかし、群間で有意な差は認められなかった(p>0.05)。後方関節包の柔軟性はどのグループでも変化しなかった(p>0.05)。

【結論】

肩甲骨モビライゼーションと後方関節包への介入は、肩関節凍結症患者の急性関節運動範囲を改善するのに効果的であった。

要点

本研究は凍結肩の患者に対して、肩甲骨モビライゼーションと後方関節包のストレッチを比較している。
介入研究であるが、介入自体は1回のセッションのみの即時効果を見ている。
また、クロスオーバーの形式をとっているものの、それぞれの方式の介入と、それをクロスして両方行った結果とを比較しているため、正確な介入比較にはなっていない。

純粋に肩甲骨モビライゼーション群と後方関節包ストレッチ群は比較できる。



結果としては、どちらも可動域が拡大し、即時効果としては同等に見られた。一方、群間の比較では差がなく、どちらかの有効性を示すことはできなかった。

有意ではないものの、内旋に関しては着目すべきである。
肩甲骨モビライゼーションでは拡大が得られないものの、後方ストレッチでは内旋可動域は拡大している。
これに関して、特に内戦では後方関節包による制限因子が強く、ストレッチにより伸張が得られたことが要因であると考察されている。
一方肩甲骨モビライゼーションは、挙上や外転において可動域の拡大に作用し、肩甲骨の上方回旋、後傾等が可動域の拡大につながると考察している。

このように、今回の検討は根本的に異なる要素を持ったエクササイズを比較しているため、目的とする部位が異なっている。
さらに、1回のセッションという即時効果を見ているため、大きな差が生じにくい。
研究デザインとしていくつもの懸念点は存在するものの、ランダマイズされ、比較検討してあるということに関しては評価すべきかと思う。

また、統計としての差は論ずることができないものの、内旋と屈曲の違いなど、細かく数値を見ると異なる点もあり、それが理論的背景と一致することは理解しておくべきかと思う。

どのように活用するか

本研究の結果としては、明確なものではなく、即時効果としてどちらの介入も関節可動域を拡大しうるというものになる。
動かせば拡大するという、至極真っ当な結果にはなるが、その目的とする動きによって、若干ではあるが、異なることを捉えていくべきである。

つまり、後方関節包の伸張を図ることで、内旋の可動域の拡大につながること。
肩甲骨モビライゼーションによって、屈曲可動域は拡大しやすいことを理解しておく必要がある。
これらは、解剖学的、運動学的に理論を述べることができるものであり、目的意識を持って介入することの必要性を改めて感じるところである。

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