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マイクロアグレッション─日常の中の小さな無意識の差別─に抗うべきなのか

マイクロアグレッション=「小さな(マイクロ)攻撃(アグレッション)」。日常生活の中で、色んなマイノリティに対して発される、偏見や差別にもとづく小さな否定的な態度や発言のことです。

例えば、
・町中で外国人とすれ違うときにカバンを押さえる、電車の中で外国人の横には座らない、という行為は「外国人は信用ならないもので、もしかしたら犯罪者かもしれない」と思っていることを示唆します。
・仕事で女性に対して「すごい頼りになるよ、男らしいね」と褒めることは、女性は普通は頼りにならず、「頼りになる」は男性の専売特許だと思っていることを示唆します。

「え、そんなちっぽけなこと?」と思うかもしれないですが、マイクロアグレッションにさらされた方は、想像以上に大きな傷(鬱など)を負うこともあるようです。

何を隠そう、私がジェンダーに関心を持つようになったきっかけもマイクロアグレッションでした。

「どうして女の子なのに大学で勉強して、しかもテニスもして筋肉をつけてるの?女の子にはもっと大事なことが他にあるんじゃないの?」
大学時代に同級生にこの率直で素朴な疑問を投げかけられ、きょとんとしてしまいました。

好きなことを追求する理由や権利を、自分の性別に紐付けて考えたことがなかったので、混乱し、有効な回答がその場で示せなかったことに悔いが残りました。大学を卒業してもう何年も経っているのに、未だに私の脳内に居座り続けている体験です。それだけマイクロアグレッションというのはパワフルな影響力を持っていると思います。

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つい最近も、マイクロアグレッションにさらされながらも、相手の気分を害すことを恐れて反論できなかった経験があり、どうしたら良かったか考えている中で以下の記事に出会いました。これらを引用しつつ、タイトルの問い─マイクロアグレッションに抗うべきなのか─について考えていきます。

マイクロアグレッションに抗うべき?

定義からしてマイクロアグレッションは日常的に、頻繁に発生する可能性がある事象です。つまり、全てに抵抗していたらキリがない。だから抵抗するかしないかは自分で決めればよい、が結論になります。

抵抗することを自らの義務に課す必要はなく、抵抗することで「勇気がもらえる・自分らしく生きる力がみなぎる」というときだけ、抵抗すればいいそうです。

マイクロアグレッションを受けると、それだけで精神的にきついものです。自分を守り、ケアする選択も積極的にしていきましょう。

Let protecting your joy be your greatest and most persistent act of resistance.
あなたの喜びや幸せを守ることが、偏見や差別に対する一番強力で不屈の抵抗です。

マイクロアグレッションに抗う、そう決める時

先に紹介した記事では、以下の3つの軸で考えてから、抵抗するかしないかを決めるのが良い、と勧めています。

①抵抗することの影響は?
抵抗することで物理的に反撃をされて怪我を負うリスクがないか?
相手と口論になる可能性はないか?
相手との関係性にどんな影響を及ぼすか?

②抵抗しないことの影響は?
抵抗しないとあとで後悔するか?
その行為や発言内容を私が認めた・同意したというメッセージを発することになるだろうか?

③抵抗することで目指したいゴールは?
自分の見解を聞いてもらえれば満足か?
相手に教育し、認識を改めてもらいたいか?

私の場合は①を気にしすぎて何も反応できなかったわけですが、②も同時に検討すると、自分にとって一番納得がいく行動を選択できるのではないかと思いました。特にマイクロアグレッションの内容が自分にとって譲れないほど重要な問題である場合や、マイクロアグレッションの行為者が自分との関わりが深い人であるほど、②の問うている、抵抗しないことのダメージが大きくなるようです。

また、周りに対するメッセージという側面も②は指摘しています。例えば、組織の中で女性全体に対して失礼な言動を取った人のことを見逃すと、私もその思想に同調したというメッセージを発してしまうことになるのか。一対一の会話の中で自分が静かに傷つくだけのときよりも、組織の力学の中に偏見や差別が根付いてしまうと、それはより有害かもしれません。

マイクロアグレッションに抗う、その方法

いざ抵抗することに決めたら、推奨される進め方は以下の通りです。

意見を伝える相手を防御的にしない=相手が攻められていると感じないように配慮することが、効果的に対話するためのポイントです。

ステップ1:相手の意図をより明確にしてもらうところから始める。

Ask for more clarification: 
“Could you say more about what you mean by that?” 
“How have you come to think that?”
「今の発言や行為がどういう意図だったか教えていただけますか?」
「どういう経緯で今の発言や行為に思い至ったんですか?」

このステップを挟むことで発言者も自分の行為を振り返ることができ、聞いた側も相手の意図を正確に理解することができ、共通の理解が醸成されます。発言者の意図はそれはそれとして尊重した上で、周囲への影響(自分がどのようにそのメッセージを受け取ったか)を伝えましょう。

ステップ2:相手には共感を示しつつ、自分がどう感じたかを伝える。

Separate intent from impact: 
“I know you didn’t realize this, but when you (comment/behavior), it was hurtful/offensive because (...). Instead you could (different language or behavior.)”
「あなたが気づかないでやったことは理解しているのですが、先ほどのあなたの(行為・発言)に私は(傷ついた・攻撃的だ)と感じました。代わりに(異なる言い回しや振る舞い)をしていただけますか。」
Share your own process: 
“I noticed that you (comment/behavior). I used to do/say that too, but then I learned (...).”
「あなたが(行為・発言)をしていることに気づきました。私も同じことをしたことがあるのですが、(どんな影響があるか)ということを学んだんです。」
If they continue to assert that they “didn’t mean it like that,” remind them that you appreciate their willingness to clarify their intent and hope they appreciate your willingness to clarify their impact.
もし発言者が「差別的な意図はなかったんだ」と譲らずあなたの意見を聞き入れなかったら、彼らの意図は尊重しつつ、彼らの意図をこちらが尊重するのと同じように、あなたがどのように感じたか、というあなたの意見も尊重してもらうようにお願いしましょう。

以下、英語ですが、具体的に声を上げる時の話し方を動画で解説していてわかりやすかったのでリンクを貼っておきます。

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ダイバーシティ経営をする上で、三つの要素が揃っていることが大事と言います。

Diverse representation ー 構成員の多様性
Inclusive culture ー 包摂的な文化
Equitable system ー 公正な仕組み

インクルージョン(包摂的な文化)はダイバーシティ(構成員の多様性)が実現したからといって自動的に出来上がるものではありません。公正な仕組みも、プロセスと実践を通して実現されるものです。

構成員みんなが「自分は仲間として受け入れてもらえている」「ありのままの自分の個性と能力を発揮できる」と思える包摂的な文化を作り出すためには、マイクロアグレッションに対する理解を深めておくことも、小さくて大きな一歩だと思います。

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