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フランス語ネイティブの子供の国語事情

私のパートナー(フランス人)の子供は2人とも小学生(8歳、10歳)でして、ときどき私も学校の宿題(主に国語、算数)のお手伝いに駆り出されます。

フランスの国語というと、フランス語ですね。

非ネイティブ、日の出づる国からやってきたバリバリ外国人の私にフランス語の勉強見させて大丈夫なん…?

という声が聞こえてきそうですが、そりゃね、喋りの達者さでいうと、ネイティブの小学生には敵わないですよ。でも読み書き文法となると、我々外国人学習者にも勝ち目があります。

子供たちの勉強を見ていてとても興味深かったのは、ネイティブがつまづくポイントは外国人学習者と必ずしも同じではない、ということです。

音とスペルの照合

フランス語は同じ音に対してスペルがいくつかあることが多いです。

例えば、【o】の音は、auと書く場合とeauと書く場合があります。

さらに、hの音は読まない、最後の子音字は原則読まない、というルールもあります。

読む分にはルールを知っていれば、ある程度読めますが、その逆で書き取りとなると、何も知らない状態で音からその単語の正しいスペルを推測するのはなかなか至難の業なのです。

私は日本生まれ、日本育ちですし、フランス語は大学生になってから始めたので、最初は割とゴリゴリ机に向かって勉強していました。

単語やフレーズはノートに書いて覚えたので、基本発音、意味、スペルはセットで覚えていることが多いんですね。

一方、ネイティブの子供はアルファベットを習う前から、フランス語の音だけ知っている状態なので、学校ではその知っている音とスペルを照らし合わせる作業をします。

日本人学習者であれば、かなり初期で習うであろう

J'habite au Japon. 「私は日本に住んでいます」

というフレーズは私もスペルとセットで覚えました。

でも例えば8歳の息子くんにディクテ(書き取り)をさせると、

J'abite au Japon.

というようにhを書き忘れるミスが散見されます。

確かに音だけ聞けば、このスペルになっちゃうのもわかります。

でも、私や他の日本人学習者はあまりしないようなミスだったので、面白いなぁと。

品詞を見つける

大人になってから、外国語を始める上で圧倒的に有利なのが、文法の知識を応用することができる点です。

大人の場合は、母語で既に名詞や動詞が何たるや、ということをある程度理解しているので、教える側も説明がしやすいんですよね。

ところがどっこい、子供たちはまさにそれを学び中なわけで、大人に教えるように「これは名詞だから~」と言った説明ができないんですね。

ここが私の非常に苦労しているポイントです。

つい先日も、先程の8歳息子くんが、

Ma mère est partie au travail et je suis resté à la maison.

「母は仕事に行き、私は家に残りました。」

という文章のディクテをしていたとき。

文章の意味の理解はもちろん問題ないのですが、スペルを見て驚愕。

Ma mère et parti au travail et je suis resté à la maison.

まぁ、partiに女性形のeをつけ忘れるのは理解できます。

発音は変わらないのですが、このケースの場合、主語と動詞の性数を一致させる、というルールがありまして、これは外国人学習者も間違いがちなポイント。

でも、なんでそこに"et"入れちゃった…?これは予想外。

そう、êtreの活用"est"と並列「と」の"et"は発音は同じなので、音から思いつくがままに書いちゃったんでしょう、きっと。

このあたりで勉強を見ていたパパ(私のパートナー)は、何でこんな簡単なことが分からんのや、とイライラし始めるので(笑)私にタッチ交代します。

(お世辞にも息子くんは学校のフランス語の成績が良いとは言えません。汗)

まずこの文章の主語と動詞に色ペンで下線をひかせます。

主語は比較的すぐに見つけられますが、動詞で苦戦。

partiかな…?と辿り着きますが、その前にあるetが何なのか不明。

これが日本人学習者であれば、複合過去形(passé composé)はêtre+過去分詞の組み合わせでしたよね、という説明をしますが、パッセコンポゼなんて言っても子供はポカンです。。どうしたものか。

ここで頭を冷やしたパパが登場。

パパ「逆のことを言うとどうなる?否定形だと?」

息子くん「Ma mère n'est pas partie au travail...?」

パパ「Voilà, n'est pasとなるのが動詞でしょ!」

試しに否定形にしてみて、ne pasで挟んでる単語が動詞、という見つけ方です。

なるほど…!

これはネイティブならではの考え方ですよね。

日本人学習者が否定形を作る場合は、この逆で、まず動詞を見つけないといけないですから。

これと同じパターンで、所有を表す「彼の」"son"と動詞êtreの"sont"を混同していることもたまにあります。

さらにフランス人大人ネイティブの彼まで、あれ、partirの過去分詞ってpartiだっけpartitだっけ、となる始末。。

だ、だいじょうぶか…?


そんなこんなでネイティブでさえも苦労して母語フランス語を習得していくわけなので、非ネイティブの我々は言わずもがな。でも大人になってからの学習にアドバンテージもありますから、地道にがんばりましょうねー!私もがんばります!

数年もしたら、子供たちの勉強はフランス語的にも、内容的にも私の手には負えなくなってくるので、今のうちに大人げもなくマウントとりまくろうと思う今日この頃です。

もしもサポートいただける場合は、小躍りしながら大切に神棚にお供えしたあと、今後の活動に活用させていただきます♡