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「心の握力」を鍛えよう~心と心をつなぐ柔道~

 握手をした時に、相手の気持ちが何となく伝わってきた経験はありませんか。マラソン界の名将であった小出義雄監督は、握手を通して「勝つ人の感触」を学ぶよう選手に勧めていたそうです。

※「 」内が小出監督の言葉です。
女の子には、「会社に入ったら、課長とか部長、役員と握手をしろ」と言う。
「手の感触をつかんでほしいんです。」
握手をすれば、その人がわかると言うのだ。
これはただの見分け方ではない。
自分がどうしたら勝てるかと考える練習でもある。
手の感触で、どういう人が勝てるかを学ぶのだ。
「握手をして、どういう人が課長になったか、部長になったか、役員になったか、感触を通して自分で考えるんです。そうすると、共通したものがあるのです。自分が勝ちたいという意欲も芽生えてくるんです。」
(『本当の生きる力をつける本』 小出 義雄+中谷 彰宏 著/幻冬舎)


 組むと相手の実力がわかる。これは、柔道経験者であれば実感したことがあるでしょう。組むことで伝わってくるのは、力だけではありません。相手の気持ちまで伝わってきます。これは、海外の方と柔道をする時も同様です。言葉が通じなくても、1回乱取りをしただけで一気に心の距離が縮まります。私も海外の方と柔道をしたことがありますが、あっという間に仲良くなれました。柔道は人と人の心をつなぐすごい力があります。


 柔道は投げた後も相手とつながっています。いわゆる「残心」です。投げた時に引き手をしっかり引くことで、相手の怪我を予防します。

「ケガ予防には引手を引くタイミングが重要であろうと考えます。引手の強さが相手にけがをさせるという意見もありますが、引手を引くということは、崩しの中で相手の重心を動かすことと合わせて、投げられて動いていく相手に手を引くことで横回転(縦に動く人に、先端から少し下の位置で動かす)を生み出していくことになろうと考えられます」
(『柔道とは、柔(やさ)しい道である。』 米田 實 著・宮崎 誠司 共同執筆/ベースボールマガジン社)


 柔道は常に相手とつながっています。そうした日々の稽古を通して、相手の心を想像する力、相手を思いやる姿勢が自然と養われていくことが柔道の素晴らしさです。柔道は「相手と直接つながるコミュニケーション」とも捉えることができます。
 IT技術の発達によりコミュニケーション手段は変容し続けています。直接会わなくてもコミュニケーションをとれる便利な時代になりました。しかし、「フェイス・トゥ・フェイス」のつながりも重要です。直接人と会うことでしか分からない「情報」、得られない「喜び」もあります。
 柔道は心と心が直接つながる力、つまり「心の握力」を鍛えられる武道です。柔道精神をきちんと理解した方同士が組み合って稽古をすると、お互いの関係性はより深まります。だからこそ、友達を作るのが苦手なお子さん、人づきあいが苦手な方にも、柔道をおすすめしたいです。きっとコミュニケーションスキルが少しずつ向上すると思います。何より「柔道友だち」というかけがえのない仲間もできますよ。
 皆さんも柔道場で「心と心がつながる楽しさ」を感じてみませんか。


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