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「水無月の精進料理」 2015年6月

例年、この時期の鎌倉はゴールデンウイークより多いのでは?と思われるほど、紫陽花を愛でにいらっしゃる観光客の方が多いのですが、本当に色とりどりの紫陽花が圧巻です。雨の露に打たれるとまたいっそう美しさをましますね。蒸し暑い日々ですが、梅雨には梅雨の楽しみ方があるのだなぁとしみじみ致します。
さて、体調も崩しやすい季節、なんとなく気だるくて食欲も落ちがちです。なので、今月は酢を使ったり、塩味中心のさっぱりした献立にしました。

1.天豆飯の柏葉包 2.白瓜と素麺の澄まし 3.茄子の揚げ煮 4.干し椎茸と胡瓜の胡麻和え 5.もずくの三杯酢


1.天豆飯の柏葉包
天豆もそろそろ終了です。もち米を入れて炊き込み、俵にして柏葉で包んでみました。柏は、ゆずり葉などと同じく、次の葉が出て初めて落ちていくのだそうで、しいては家系が途絶えない、そんな意味から端午の節句の柏餅に使われるようになったそうです。抗菌効果もあるし、時期の葉で包むだけで季節感が味わえますよね。

材料:米2C、もち米1/2C、天豆(さやつき)400g~500g、柏葉各2枚、昆布出汁465cc、塩小1弱、淡口ぽたぽた、酒大1、木の芽・ゆかり適宜

1)もち米は前日にたっぷりの水でふやかしておきます。米はといでザルにあげて白っぽくなるまで15分は置きます。
2)天豆はさやから取出し、熱湯に塩少々を加えて1、2分茹で、冷水にすぐ取ります。冷水に取るのは色止めのためです。なので、水が冷たくないといけません。また熱いものを入れるとすぐにぬるくなってしまいますので、お水は1回は変えてくださいね。しっかり冷めてから皮は剥いてください。

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3)もち米と研いだ米をあわせ、昆布出汁と調味料を加えて、10分程度浸水してから炊いていきます。まず沸騰するまでは強火です。沸騰したら中火にして7分くらい。そのあと弱火で1,2分してから、また強火にして10秒で火を止めますが、弱火から最後の強火にするときにむいた天豆を加えます。火を止めたら10分蒸らし、しゃもじで天地返しをします。
4)俵型にまとめます。このとき俵型のおにぎり型を使うと大きさが簡単に均一になります。

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5)1つには叩き木の芽、1つにはゆかりをふり、よく洗ってふいた柏葉につつみます。うっすら柏の葉の香りもついて美味しいですよ。

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2.白瓜と素麺の澄まし
白瓜は和え物や漬物といった生で食べることの多い夏野菜ですが、火を入れるととても鮮やかなグリーンになるので、お澄ましにもぴったりなんです。夏の定番澄ましとして覚えていただければと思います。青柚子のすがすがしい香りで食欲のないときでも召し上がれますよ。

材料:素麺1束、白瓜1/2本、油揚げ1/2枚、青柚子、ヒモ
吸い地:昆布出汁3C、塩小1/2、淡口小1/2

1)焼き豚などに使用するヒモを10~15cmくらいカットします。3本位の糸がよって1本になっているので、それをほぐして1本ずつにして、素麺を縛ります。

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2)熱湯に1の素麺を入れて、縛った口までよく湯がいきわたるように、菜ばしで広げながら茹でてください。1分程度で結構です。それをすぐに冷水にさらして、しっかり冷えたらまっすぐな状態でザルにあげておきます。
3)白瓜は縦1/2に切って種をッスプーンなどでとり、薄うちしてたて塩(3%程度の食塩水)に漬けておきます。10分程度でしんなりしてきます。さっと洗って軽く絞っておきます。

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4)油揚げは熱湯を掛けて油ぬきをしてから、細く切っておきます。
5)出汁を温め吸い地を作り、さっと素麺をくぐらせてから綴じ目のところで切ってお椀に盛り付け、白瓜、油揚げを吸い地に入れて温めて、素麺の手前に置き、汁を張り、吸い口にへいだ青柚子を乗せます。

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3.茄子の揚げ煮
茄子は揚げたり炒めたり、油と相性の良い野菜です。ただ、「茄子紺」といわれるきれいな紫にいまひとつ仕上がらない方が多いのではと思います。それは油の温度の問題!170度越えくらいの高温でないときれいに仕上がらないのです。ぜひこの夏はきれいな茄子のお料理沢山作ってくださいね。

材料:茄子各1/2本、青楓麩1枚(5mm幅)、揚げ油適宜、卸生姜適宜
煮汁:出汁1C、砂糖大2、醤油・淡口・味醂各大1、塩少々

1)青楓麩は、5mm幅に切ったら150度程度の低めの温度で揚げ、熱いうちに塩を軽く振っておきます。

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2)茄子はヘタをおとし、縦1/2に切ってから、皮に包丁を細かく入れ、まず皮目を下にして、次に身のほうに返して竹串がすーっと刺さるまで170度~180度で揚げます。すぐに揚げてしまうときは、水に漬けてあく抜きはする必要はありません。また水気があると飛び跳ねて危ないので、しかりふいてから揚げていきます。

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3)出汁を調味して煮汁を作り、揚げた茄子を皮目を上にしてを3分ほど煮て、味を含ませます。
せっかくきれいに揚がった茄子も、煮汁がたっぷりだとその煮汁に色素が解け出てしまうので、煮汁は数ミリで大丈夫です。また重ねておかないことです。重なった部分から色落ちしてきます。表面積の広い鍋をお使いくださいね。

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4)器に合わせて茄子を二等分から三等分に切り、盛り付けて青楓を添え、煮汁を少し張り、卸生姜を天盛して召し上がってください。


4.干し椎茸と胡瓜の胡麻和え
胡麻の風味が効いた定番和え物です。西京味噌が隠し味。また必ず胡麻は洗いゴマかむき胡麻を使い、煎って使ってください。市販の煎り胡麻ではこの風味は出ません。

材料:胡瓜2本、干し椎茸4枚
椎茸煮汁:出汁1/2c、砂糖大1/2、淡口小1、酒小2、塩少々
和え衣:むき胡麻大4、砂糖大1、西京味噌大1、淡口小1(調整用)

1)胡瓜は塩づりして洗い、薄切りにしてたて塩につけ、しんなりしたら水けを軽く絞って、冷蔵庫で冷やしておきます。

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2)干しシイタケは水で戻し、軸をすてて千切りし、煮汁で煮含めておきます。

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3)むきゴマは中火でじっくりと色よく煎って、当たり鉢でよくあたります。煎ってすぐでないときれいにつぶれませんので、注意してください。
4)調味料を加え、胡瓜と干し椎茸の水けをしっかり絞って和え混ぜます。脱水してしまうので、和えるのは食べる直前になさってくださいね。

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5.もずくの三杯酢
一年中パックのもずくが売っているので、旬があるのもご存知ない方が多いかもしれませんが、春から今時分にかけてがもずくの旬です。フコダインという水溶性食物繊維豊富で食後の血糖値の上昇を緩やかにしたり、血液中のコレステロール値を減少させるなどの効用が知られています。酢の物以外にも天ぷらにしたり幅広く食卓にも登場させたいですね。

材料:もずく各50g、山芋100g程度、山葵適宜
掛け地:出汁1C、酢1/4C、淡口醤油大1、醤油大1、味醂大1

1)もずくは全くの生より塩蔵のものが多いかと思います。どちらにしろ、まず水洗いをして(塩蔵のものなら薄っすら塩分が残る程度)、さっと茹でてすぐに冷水にとり、ザルにあげます。

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2)掛け地を作ます。材料を全部鍋に入れて火に掛け、冷ましておきます。

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3)山芋は皮をむき、ビニール袋に入れて、すりこぎなどで叩いておきます。完全につぶさなくて大丈夫です。

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4)器にもずくを敷き、その上に山芋をのせ、かけ地をはり、天に山葵を添えます。できれば全部冷たくしたもののほうがより美味しいかと思います。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 6月の献立より)


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