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「皐月の精進料理」 2017年5月

風薫る5月、夏も近づく八十八夜の新茶は召し上がりましたか。ちょうど八十八夜の時期に田植えが始まりますが、旧暦の「皐月(さつき)」の「さ」は田んぼの神様のこと。田植えの初日を「さおり」、終了の祝い日を「さなぶり(さのぼり)」といいますが、これは神様が降りてきた日と上っていく日を表しています。こどもの日のお節句も日本ではもともと田の神様「さ」をお迎えするものだったのですが、中国の端午の節句と交わっていって現在のような形へと変化していったようです。これからも無事においしいお米が食べられるよう田の神様に感謝しつつ、蕗ご飯など作りました。

1.蕗ご飯、2.新馬鈴薯のすり流し、3.揚げ筍の地海苔和え、4.雷豆腐、5.春子椎茸と春キャベツの塩レモン和え


1.蕗ご飯
蕗や筍ほど市販の加工品と自分で下ごしらえしたものとで差がでるものはないですね。多少面倒でもこの手間だけは省きたくないもの。この蕗ご飯は飯のほうにアクが回らないのできれいに仕上がり、また冷やご飯でも作れるので、便利ですよ。ご飯の味はみじん切りにした油揚げでコクをだしています。

材料:蕗(太いもの)1本、油上1.5枚、米3C、水出汁(昆布出汁)700cc、酒大2、淡口大1、塩少々(味調整用)
蕗煮汁:120cc、淡口・味醂各大1

1)米は洗ってざるにあげておきます。
2)蕗は鍋の直径に合わせて切り、さっと水洗いして塩ずりし、塩をつけたままたっぷりの熱湯で3~4分ゆでます。塩ずりをしているときにはお湯が沸いていないとあくが回ってきれいにできませんよー。ここ、大事です。ゆであがったら水にさらして筋をむきます。

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5mmの厚さに切って、煮汁で2,3分弱火で煮て、冷ましておきます。この時、できれば冷水などで急冷したほうが色がきれいに仕上がります。

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3)油上げはあらいみじん切りにします。
4)釜に米と水出汁(昆布出汁のこと)、調味料、油上げを入れて15分くらいはおいてから炊き、10分蒸らしてから蕗の汁気をきって混ぜ合わせます。

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2.新馬鈴薯のすり流し
新じゃがは皮も柔らかいので皮ごと使います。新玉ねぎの甘味が隠し味です。バターが苦手な方は、植物油でももちろんOKです。また、豆乳なしでも豆乳の代わりに生クリームや牛乳でもいろいろと楽しめます。

材料:新馬鈴薯300g、新玉ねぎ1/2個、塩・胡椒少々、バター適宜、水出汁(昆布出汁)5C、淡口・塩小1、豆乳1C
蓬麩各1cm、蓬麩の煮汁:水出汁1/2C、塩・淡口少々

1)新玉ねぎは薄切りしてバターで透明感がでるまで炒め、軽く塩・胡椒したところに、新馬鈴薯の薄切りを加え、水出汁でことこと柔らかくなるまで煮ます。厚さにもよりますが、大体15分程度で柔らかくなるかと思います。

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2)蓬麩は1cmに切り、煮汁でさっと煮て軽く下味をつけておきます。汁の塩味より少し濃いめがいいです。

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3)1)をブレンダーにかけ、鍋に戻し温めて豆乳を加え調味し、椀に下味をつけた蓬麩を置き、汁をはります。豆乳は分離しやすいので、絶対に沸騰させないように気を付けてください。好みで木の芽やピンクペッパーを吸い口にしてください。

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3.揚げ筍の地海苔和え
海苔の磯風味と筍の玉蜀黍のような香りが相まって簡単で美味しい一品です。茹で筍は水につけて保存しますので、その水分をとって、調味料を吸いやすくするために一度熱湯でしもふります。この処理はとても大事ですので、やってくださいね。この揚げ物はてんぷらなどに比べて難易度が低いです。筍にはすでに茹でてあるから火を通す必要がないからです。揚げ物が苦手な方はぜひ練習もかねて作ってください。

材料:茹で筍2本、地海苔(乾燥)適宜、醤油大1、片栗粉適宜、塩小1、揚げ油適宜、地芽適宜

1)茹で筍は食べやすい大きさに切って熱湯で霜降り、醤油を絡めておきます。5分程度絡めたら醤油は捨ててください。

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2)1をふいて、片栗粉を薄くつけ、高温でかりっと揚げて、熱いうちに塩を振ってさらに地海苔を絡めます。揚げる油は少なくてかまいませんが新しいものを使ってください。最後にたたいた地芽を天盛りします。

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4.雷豆腐
雷豆腐は、鍋に豆腐を入れるときのジャーという大きな音が雷のようなのでついた料理名です。江戸時代の料理書「豆腐百珍」の料理です。ねぎを加えたりすることが多いですが、旬の山椒の実でスパイシーな一品にしました。お酒のつまみにもヘルシーですし、良いですよ。

材料:木綿豆腐2丁、胡麻油大3,醤油大1,たまり大1,山椒の実大2、大根おろし200g

1)豆腐はしっかりと水切りしておきます。

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2)熱したフライパンに油をしき、1.5cmくらいに切った豆腐を入れて手早くかき混ぜつつ数分炒めて、水分が抜けてきたら山椒の実を加えて調味し、盛り付けたら水気をきった大根おろしを乗せます。

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5.春子椎茸と春キャベツの塩レモン和え 
春子椎茸はゆっくりと育てられるので肉厚なのが特徴。歯ごたえと味わいの深さがたまりませんね。網焼きして凝縮感をだし、春キャベツとともに最近ご家庭にも浸透してきた新調味料"塩レモン"で初夏らしいさっぱりとした味付けにしました。キャベツも1年中出回っている野菜ですが、夏まきと秋まきで味わいが全然違います。春キャベツは秋まきで、葉が柔らかくて甘味が多いのが特徴ですね。


材料:椎茸各1枚、醤油少々、春キャベツ100g、塩レモン小1/2~1、レモン果汁1/2個分

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1)椎茸は軸を取り、網で焼いて、醤油少々を振って醤油洗いをしておきます。塩水にくぐらせてから焼いて、醤油はしない方法でもOKです。

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2)春キャベツは食べやすい大きさに切って、さっと湯がくか、600Wのレンジで2分程度加熱します。
3)1)と2)を刻んだ塩レモンと絡め、好みでレモン果汁を搾ります。熱いうちに処理したほうが、味が絡みやすいです。塩レモンの分量は塩レモン自体の塩分量によりますので、まず少量入れて味を確かめつつ調味してください。

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レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 5月の献立より)

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