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小倉竪町ロックンロール・ハイスクール vol.28

「マコトは受験するんやろ? どうすると?」
「東京の大学に行こうて思いよるんよ。親が福岡とか大阪に行くんやったら東京に行けち言いよるし。セイジくんはどうするん? こっちでバンド続けると?」
「新しいバンドに入ったけど、ヴォーカルのヤツも大学進学で東京に行くつもりらしいけん、この夏で解散するんやないんかね? 俺も東京行こうかね…。新聞奨学生ち、あるんよ。バンドの専門学校とかもあるらしいんよね…」

 にぎやかな声が響き、時おり水しぶきが飛んで来る。照りつける太陽のもと、プールサイドでセイジくんとまったりしていた。
 梅雨明け前なのに、その日は真夏のように暑くて、午後の授業をサボった。
「高校最後の夏やね…」
「楽しいことないやろか?」
「青春ぽいやつね?」
「そう、運命的な出会いとか、甘酸っぱい系…」
「こんなとこに男2人で来とるようやったら、永遠にないちゃろうね…」
「そうやね…、もう帰ろうか? セイジくん今日スタジオ練習なんよね」
 平日の午後、市民プールに来ているのは、小学生のグループか、幼児を連れたお母さんしかいなかった。



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