定食屋のおばちゃん
ふと、大学時代お世話になった「定食屋のおばちゃん」を思い出した。
別に特定の誰かではない。大学時代に美味しい定食を出してくれたおばちゃん達、全員をである。
いったい何軒くらいに足を運んだのだろう。本当に色々な定食屋さんがあった。
とにかく安い定食屋さん。(確か300円定食があった。)
揚げたての天ぷらを出してくれる定食屋さん。
唐揚げ定食は唐揚10個出てくる定食屋さん。(それとご飯が日本昔話のように大盛りで、味噌汁の代わりに大盛りのうどんが出てきた。)
カツ丼が尋常ではないくらいあま〜い定食屋さん。
夫婦2人でやっているが、いつも喧嘩している定食屋さん。(こっちの方が気を遣わなくてはいけなかった。)
犬を2匹飼ってる定食屋さん。(おしっこが落ちていた時は、さすがにもう行かないと決めた。)
どれも個性的な定食屋さんばかりであった。今思い返すと、味は最高に美味しいとはいえなかったと思う。
しかし、お金など存分にあるはずのない食欲旺盛な大学生にとって、これ以上にありがたい存在はなかった。
夕方になるとお腹と背中がくっつきそうな、悩み多き未熟な若造を、ホカホカの白飯とアツアツの味噌汁がいつも優しく満たしてくれた。
そして、今さらながらもう一つ考えたこと。
おばちゃん達、いったいどれくらいの儲けがあったのだろうか。
どの定食屋さんもご飯大盛りだったし、おかずも大盛りがほとんど。中には、タイの煮付け定食(まるごと一匹)とか、原価が相当かかっていそうな定食もあった。しかし、価格は700百円とかそれくらいだったと記憶している。
どの定食屋さんもだいたいボロボロの貸し店舗に入っていて、内装もお世辞にもきれいとはいえなかった。
きっと、儲けなどほとんどなかったのだろう。おばちゃん達はきっと定食屋をやりたいからやっていただけだったのではないだろうか。
いや、もしかしたら、ギリギリの経営状態の中で、表にはそんな顔も見せずになんとかやっていたのかもしれない。
いずれにしても、私の大学時代は、まさにおばちゃん達の愛情に支えられていた。
おばちゃん達は、今も元気にしているのかな。
どうかお元気でいてほしい。
しかし、こんな定食屋さんが、今どれだけ残っているのだろうか。
大学生は、ウーバーイーツばかり食べるような時代になるのだろうか。
その時、人間の心はどうなるのだろうか。
たいして変わらないのだろうか。
私は例えば今、大学生に戻ったとしても、ウーバーイーツよりおばちゃんの定食が食べたいなと思う。
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