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「相関関係」も「因果関係」もあるのか疑わしいのに、「発達障害は◯◯」と語らないでよ

私のアカウントで固定しているツイートがあります。

ざっくり言えば、2021年の目標です。
ツイートのまんまなので敢えて説明するようなことでもありませんが、ここ数ヶ月、発達障害に関するツイートを見て、勝手ながら「このままじゃまずい」と思い、立てた目標です。

このうち、2番目のツイートの2つ目に書いた、「"発達障害""ADHD""ASD"だから◯◯」と断定調で助言する風潮には反対について、そう考えるに至った背景を説明したいと思います。

「発達障害は〇〇」の信憑性

「発達障害(の人)は〇〇」は、Twitterの一部でよく見かけます。ざっと見かけたのはこの辺です。

・発達障害の人に恋愛は難しい(または彼氏彼女がなかなかできない)
・発達障害の人は騙されやすい
・発達障害の人の精神年齢は低い、通常の3分の2

これらの言説について統計が取られているわけではないので、本当か嘘か実証するのは難しいでしょう。大体精神年齢が低いか高いかなんて、測りようがないですし。

ひとつ言えるのは、そのように考える人が一定数いるということです。

ただこの書き方って、紛らわしいなと感じました。

「相関関係」と「因果関係」が、混在して見える

例えば、「発達障害の人に恋愛は難しい」は、「発達障害の人には、恋愛に難しさを感じる人が多い」とも取れるし、「発達障害だから、恋愛が難しい」とも取れるわけです。ただこの2つは前者が相関関係、後者が因果関係なので全く別です。

そうかん‐かんけい【相関関係】
1 二つのものが密接にかかわり合い、一方が変化すれば他方も変化するような関係。
2 数学で、一方が増加すると、他方が増加または減少する、二つの変量の関係。

いんが‐かんけい【因果関係】
1 二つ以上のものの間に原因と結果の関係があること。
2 犯罪や不法行為などをした者が法律上負担すべき責任の根拠の一つとして、ある行為と結果との間に存在していると認められるつながり。

※引用元:小学館『デジタル大辞泉』

「Aが変化すればBも変化する」が相関関係、「AだからBである」が因果関係。毎日新聞のサイトに、分かりやすい例が掲載されていました。

この記事でも書かれていますが、重要なのは「相関関係」があるからといって、「因果関係」があるとは限らないということです。記事の例にもある「イケメンであるほど、チョコをたくさん貰える」という相関関係はあったとしても、「イケメンだからチョコをたくさん貰える」という因果関係は成り立ちません。イケメンが皆チョコを貰っているわけではないのです。(※そもそも「イケメン」の定義って何?って感じですが)

そして先程の例に戻すと、「発達障害の人には、恋愛に難しさを感じる人が多い」は相関関係で、実際この相関が証明されているわけではありませんが、経験知として根強く支持している人は一定数いる印象(あくまで主観)です。

ただ、TwitterなどSNSでは、発信者各人の意見や感想が可視化されているので、多いように見えてしまいます。本当は顕在層よりもっと多い、ネットで発信していない潜在層がいるはずです。というか、いないとおかしいです。

そもそも、例に挙げた「恋愛の難しさ」なんて当人の主観でしかなく、信頼のおける調査が行われたわけでもないので、この相関を実証するのは恐らく難しいと思われます。ただ、完全に「発達障害の人には、恋愛に難しさを感じる人が多い」を否定できる根拠もないので、「まあ、そういう例もあるかもしれない」程度に留めておいた方が良さそうです。

しかし、因果関係である「発達障害だから、恋愛が難しい」は、まずあり得ないと考えます。

原因が「発達障害」だと、どのように証明できるの?

・発達障害だから、恋愛が難しい
・発達障害だから、騙されやすい
・発達障害だから、精神年齢は低い

どうやったらそんなことが分かるのでしょうか?

「恋愛」もそう、「騙される」もそう、「精神年齢は低い」もそう、原因なんて無数にあります。

「恋愛」なんて出会うタイミングや相性、価値観・生活スタイルなど色んな要素が複合的に絡みます。もしかすると「発達障害」に起因するコミュニケーションの齟齬は、原因のひとつとしては考えられても、原因のウェイトをどれくらい占めるかは、完全に人によります。

「騙されやすい」だってそう。ASD(自閉症スペクトラム)の特徴として挙げられる“言外の意味が読み取りづらい”は、騙されやすい遠因として十分にありえると思います。が、いわゆる詐欺は知識不足や経験不足によるものだって大きいでしょう。

「精神年齢が低い」については、私もなぜそう言われているかよく分かりません。ただ、これまでの人生経験に依るものは大きいのではないでしょうか。しかし精神年齢云々は見る人によってバラツキがありそうですし、こればっかりは「ただのあんたの感想やがな」としか言えません。

前に書いたこの記事では、現れる事象が発達障害が直接的に関係するか、間接的に関係するか、について書きました。

例えば以下の事象は、「発達障害」が直接的な原因として起こる事象とされています。

・短期記憶が弱いため、忘れっぽい(ADHD)
・情報を取捨選択できず、ミスが多発する(ADHD)
・細部へのこだわりが強く、物事の遂行が困難(ASD)

短期記憶が弱いだったり、情報の取捨選択が難しいだったりは、ノルアドレナリンやドーパミンなどといった脳の神経伝達物質の伝達不足が原因(モノアミン仮説)だとされています。ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬であるコンサータやストラテラは大まかに言えば、これらの神経伝達物質を増やす効果があります。

しかし、これらは脳の元来の特性からくる事象だと言えますが、「恋愛が難しい」だの「精神年齢が低い」だの、これらの結果の直接的な原因にはなり得ないでしょう。

そしてネット上で見られる「発達障害は◯◯」は、「発達障害」が直接関係しているとは思えない事象について言及していることが多い。大体「相関関係」ですらあるかどうか疑わしいのに、「因果関係」なんて立証するのは難しいどころか、無理なのではないでしょうか?

「発達障害は◯◯」が本当に見えてしまうことが、とても怖い

私は「発達障害は◯◯」について否定したいわけでも、共感している人をけなしたいわけでもありません。

ただ、これらの事象の信憑性については慎重に検討する必要があると考えています。

TwiterなどのSNSを見れば、それはそれは同じような意見の人が多いように見えてしまいます。ただそれは情報の取捨選択が可能だからで、実際とは大きく乖離があるのではと考えます。

・「発達障害」と診断された人のうち、ネットで「発達障害」について発信している人の割合はどれくらいなのか?
・特定の「発達障害は◯◯」に共感している人はどれだけいるのか?

この2つを考えると相当に数は絞られると思います。ただ、一部の意見に過ぎないと頭では分かっているはずなのに、ネットで見えるものが絶対であるように見えてしまう。

私はそれが、とてもとても怖く感じます。

Twitterを見ると、発達障害について語る方は一定数いるし、フォロワーが多い方もいます。そこで「発達障害は◯◯」と、語る方も少なくありません。

ただ「発達障害」って本当に境目が曖昧で、人によって感じ方も大きく異なります。判明していないこともあるし、何が正しいなんて本当に分かりません。

そんな中「発達障害は◯◯」と語ることに、躊躇はないのだろうか?と疑問に感じてしまうのです。

少なくとも、自身の実感や体験談を語る分には問題はないと思いますが、一般化して語ることに、私は躊躇してしまいます。

誤解を招きやしないか、不安を煽りやしないか、スティグマを植え付けやしないか。

まだまだ分かっていないことも多い中で、過度に一般化して語ることはできません。ましてや断定なんてできません。

私の意見が正しいなどとは思いませんが、情報を発信する側も受け取る側も気をつけなければならない点ではないでしょうか。

そして私は、信憑性が担保されていない「発達障害は◯◯」を発信する風潮には反対し、あくまで自身の所感として「発達障害」について発信したい、と考えるに至りました。

◆参考サイト

早稲田メンタルクリニック『コンサータの処方に関して』(最終閲覧日:2021-2-20)https://wasedamental.com/director/treatment/asdadhd/concerta/

日経メディカル『注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬の解説』(最終閲覧日:2021-2-20)https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf827c.html


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