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作り手の矜恃

今回の記事は、週一で仕事のメンバーに発信している週報の内容を少し踏み込んだものです。

きっかけは、スーパーのチラシを見た知人が言った一言でした。

安売りされる商品

特売のチラシを見ていたときに、ある商品がずいぶん安い価格で掲載されていました。普段だと、498円くらいでどんなに安くなっても398円くらいのものが、なんと298円で載っていました。

それを見た知人が一言。

「この商品は298円の価値しかないって思われているのかな」

これをその商品のメーカーが聞いたらどう思うんでしょうか。

私が今働いているところが小売業なのでこういう商品はよく見ます。メーカーに「どういうこと?」と聞くことなんてしょっちゅうです。そのたびにメーカーの担当者も「こんなに安くする必要もないのですが、、、」と困り顔です。

自分たちが一生懸命開発して、原料を準備して、作って販売にこぎつけたものが安売りされている。
もちろん市場に出してみないと本当の価値が分からないというのもあるでしょう。ただ、「頑張って作ったんだろうけどこれくらいの価値しかお客さんに伝わっていないね。だからウチはその価格で売るね」と彼らの努力を切り捨ててしまうのはあまりにもかわいそうな気がします。

安売りの果てに

当たり前ですが、商品を作るのにはお金がかかります。原材料、人件費、輸送費、そしてメーカーの利益。それらに販売する側の費用や利益が乗っかって店頭での値段になっています。これが安売りになると削られるのは、メーカーか販売者の利益です。

利益は会社の成長の原資となるものです。それを元に、新たな商品開発や設備投資、人材の育成が行われています。これが削られていくと企業の成長はジリ貧になっていくでしょう。利益がなくなると次に削られやすいのは、人件費でしょうか。材料がいきなり安くなるなんてことはそう無いので(品質落とすなら別ですが)、安い給料で長時間働かされブラック会社化となっていく可能性もあります。

安い給料しかもらえないと、使えるお金も減ってしまうので必然的に少しでも安いものを買うようになります。そして、メーカーも販売側も安売りが加速していきます。

作り手の矜持

「良いものをより安く」というのは、製造側も販売側も目指しているところかとは思いますが、行き過ぎた結果、「この商品はこれくらいで買える」という認識がお客さんの側にもできてしまったようです。だから、どこかで安売りが始まるとその商品の値崩れが始まり、一様にどこも安く売り始めてしまいます。

今、仕事のメンバーに言っているのは「きちんと商品の価値を伝えましょう」ということです。「自分の会社で作っている商品なんだから、その商品の価値を一番に理解しているでしょう?それをどうお客さんに伝えるのか。その方法を一緒に考えてやっていきましょう」と。私はそれが作った人の役割だと思うし、販売側の役割でもあると思います。

そして、きちんと商品価値を分かって買ってもらうというのが、メーカー・販売冥利に尽きることだと思います。