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大企業と向き合うカスタマーサクセスマネジメント

久しぶりの投稿です。メルカリさん、SBI証券さんなど、主に大手BtoCサービスのカスタマーサポート向けにAIチャットボットなどのソリューションを提供している、カラクリ株式会社カスタマーサクセス責任者の鈴木奨平です。

(本記事はカスタマーサクセス Advent Calendar 2019の12/23の回として書かせていただきました。)

実は前回の投稿の続きを書けていなかったことに気づきましたが(どこかで書かねば…)、今回は、先月11/15にセールスフォーススタートアップ戦略部さんのスピンアウトイベントで弊社の事例を紹介した内容の一部について少し解説したいと思います。

以降の話の前提として、まずは僕らカラクリのサービスやカスタマーサクセスの特徴を記載します。

カラクリについて

僕らはよくチャットボットの企業と言われるのですが、僕自身はそのように思っておりません。僕なりの解釈ですと、僕らのお客様のサービスの顧客体験をより良くしていくために、カスタマーサポートにおける業務の自動化や最適化を推進するようなサービスを提供しており、その第一弾がチャットボットであったというだけです。

直近では、チャットボットのQ&AをもとにFAQサイトを自動生成できるサービスも提供し始めました。管理者視点ではQ&Aを一元管理でき、エンドユーザー視点では従来型のキーワード検索ではなく自然文で検索できAIが近しい回答をサジェストするので、求めている答えに辿り着きやすいのが特徴です。この他にも今後、様々なカスタマーサポート関連プロダクトを提供していく予定です。

とは言ってもまだまだAIチャットボットがメインのサービスですが、僕らのカスタマーサクセス関連情報は以下のとおりです。

・本格ローンチから約2年弱で現在の導入企業数は40社以上 
・SaaSの中では金額的に高め(月額料金は6桁以上)
・カスタマーサクセスチームの本格組成は2018年10月頃からで、2019年12月時点で役員・社員で5名、インターン含めると約10数名のチーム
・お客様は大手BtoCサービスのカスタマーサポート部門の方が多く、マネージャーの方がカウンターパート
・サポートは所謂ハイタッチ的なアプローチがメイン。チャットボットの活用サポートだけに留まるのでなく、顧客の事業課題解決、サービス改善にまで踏み込んだコンサルティングを行うことも

イベント登壇時の資料

これをご確認いただければ、どんな内容を話したかの全体感は掴めると思います。また、イベントに参加された方のまとめも素晴らしい内容ですので、ここで共有させていただきます!

Customer Success Management Special Event ーメルカリ、SBI証券など大企業と向き合うCSマネジメントー(by nanaeokuさん

大企業と向き合うために、どうしたらいいか学んでみた(by 菅原 美絵さん

大企業特有に応じた対応

僕らのお客様は所謂、大企業の方々が多いです。そして大企業には大企業特有の事情や進め方があり、それを理解したうえで対応しなくてはなりません。

まず商談に関わる関係者は多岐に渡る場合がほとんどです。僕らの場合ですと、例えば、カスタマーサポートの企画部門、運用部門、情報システムなど…、さらに役割によっては子会社の方々も関わることがよくあります。そしてそれぞれの方々が求めている内容もバラバラであることも…。このような場合、各々が求めていることをしっかり理解して進めないと、プロジェクト進行の遅れや、最悪の場合、認識の齟齬が原因でチャーンに至ってしまう可能性があります。よって、打ち合わせに沢山の人が参加される場合、誰がどんな役割を担っているかを把握する必要があります。

僕らで実際あったこと内容をお話ししますと、現場の方はある程度サービス利用に手応えを感じていたのですが、経営陣が導入時に求めていた成果との乖離が発生していたことが後から発覚し、チャーンに至ったことがありました。よって、このようなことがなるべく起こらないように、僕らは2019年からは上流部分も踏まえたサクセスロードマップの作成を行っております。これについては後で触れます。

次に、予算策定のスケジュールについてです。僕らの部門はエクスパンション(アップセル、クロスセル)のセールスへのトスアップも役割として担っています。しかしこれに関しても提案する時期が非常に重要です。

僕らのお客様はカスタマーサポート系の部門の方々が多く、マーケ部門などと比べるとランニングで自由に使えるお金があまりないところが多いです。よって基本的には期初で使えるお金が決まっています(もちろん追加で予算を取りにいくなどのケースもありますが)。そして、その予算というのも企業にもよりますが、新しい期の3〜4ヶ月前には次年度予算を策定し始め、2ヶ月前には確定しているイメージです。となると、予算が決まっている段階でお客様のためになることを提案しても通りにくいわけです。さらに僕らとの契約期間なども考慮すると、どの時期にどのような提案をするかはよく考える必要があります。これはセールスを経験した方では当たり前のようなことですが、カスタマーサクセスの人と話していると意外に知らなかったという声もよく聞いたため、登壇時にお話しさせていただきました。

最後に、人事評価についてです。一般的にそういうことが多いというだけで必ずしもではないですが、比較的大企業では「減点評価」をされる傾向が多いイメージです。よってミスをしたくないので、新しいことに保守的になりがちなのです。実は大企業で新規事業が上手くいかない、新規事業の部署に行きたがる人がいないのもこれによるものが大きいらしく、僕自身も経験者でこれについては過去に記事を書いたことがあるのですが、今回のところは割愛します。

ですので、サービス導入という、新しいチャレンジを試みていただいたにも関わらず「導入に失敗した」と思ってもらわないためにも、導入時にどのような目標設定をするかが大事になってきますし、何か一緒に進めていくにあたり「絶対ミスをさせない」ことを心がける必要があります。

サクセスロードマップの作成および進捗確認の徹底

サクセス(ロード)マップの作成自体は他の会社でも取り組んでいると思います。ただ僕らはこの作成についてそれなりにこだわっており、具体的には下記のようなフレームワークで作成しています。

ここで重要なのは、自社のサービスを利用してどうこうではなく、まずはお客様のサービスや部門が目指したいゴール・課題や、経営目標をしっかりと理解したうえで、そこに向けてどのようなことが僕らであれば貢献できそうかを考えることです。

理由は以下のとおりです。

1. 上流部分を理解することこそがお客様の本質的な課題解決につながりやすいため(僕らのサービスの導入によって部分最適になってしまうことを防ぐ)。
2. 一般的に担当者が異動した場合、チャーンリスクは高まりやすい。しかし、部門の目標と連動したサービス導入の目標を握ることで、僕らのサービスがお客様にどのように貢献しているのかを説明できるようになり、担当者が変わってもチャーンされにくくなるため。
3. お客様の上流部分を理解していると、今後、僕らが様々なサービスを提供していった際に提案するきっかけを得られる可能性があるため。

1は、顧客のことを本当に理解するためにも、個人的に絶対欠かせないことだと思います。だからこそお客様が上場企業の場合は、決算説明会資料、有報などのIR情報、プレス(ニュース)リリースなどをチェックしています。僕らはSansanを導入しているのでそのような情報が自動的に送られてくるため、目を通すようにしています。(便利です!)

そして、その顧客理解を前提に僕らのサービスで実現したいことのゴールやマイルストーンを設定することが大事です。

2は、得てして新任の方は前任者とは違うことをやりたがる傾向があります。仮にそのような方が新しい担当になられたとしても、サクセスロードマップの内容を理解してもらうことで、サービスの必要性を理解してもらうようにしています。

そして、これらを書いただけでは意味がなく、進捗を定期的に追っていき、マイルストーンを達成したら次のマイルストーンを定め、当初のゴールを達成したら次のゴールを一緒に考えていくように、サクセスロードマップ自体がブラッシュアップされていく(≒顧客の事業の成長に貢献していく)ことを目指しています。

全社でのカスタマーサクセス

これについて、具体的にどんなことをやっているか書こうと思いましたが、ここまでの内容で若干長くなったこと、また現在取り組んでいる内容の結果が出てからの方が良い気もするので、別の機会に詳しく書こうと思います。

1つだけお伝えしますと、僕らは10月以降、カスタマーサクセス部門の名称を変更しました。

理由はスライドのとおりですが、どこかの部署が「カスタマーサクセスチーム」と名乗ると、その部門だけが「カスタマーサクセス」の役割を担っていると錯覚するからです(僕らもそうなりかけていました)。

なので、部門名はKARAKURIのサービス自体を活用できるようにするための顧客体験、およびお客様のサービスの顧客体験をより良くしていくことをミッションに「CX Design Team」と名乗ることにしました。そして会社としても「スクラムCS」をスローガンに日々業務に取り組んでいます。

以上、長々と大手企業を中心とした僕らのカスタマーサクセスマネジメントの一部についてご紹介しました。好事例も失敗事例もできる範囲で今後皆様にもシェアし、ひいてはカスタマーサクセス界隈を盛り上げていくことができればと思いますので、引き続きよろしくお願いします!

P.S. ランニング、串カツ田中、焼肉、サウナ(銭湯)など、CS界隈で会社の垣根を越えた部活動が発足しつつあります。実は僕もCS旨辛会という、旨辛い料理を食べにいくイベントを2017年からやっておりますので、次回開催の際はご参加くださいw TwitterかFacebookで告知します。

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