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死者と動物の哲学 6

▲ 前回


死者がもう存在しないと信じながら、その人に花を捧げるふりをしたり、その人が生前住んでいた部屋を掃除したりする、そういったことはできるかもしれない。そのようなことをすることが、生きている私たちのためになるかもしれないからだ。

しかし、死者がもう存在しないと信じながら、その人の肉体を葬ることはできない。死者の肉体を葬ると、死者の肉体は私たちには見えなくなってしまう。それでも、私たちは死者の肉体を葬る。捨てるのではなく、葬る。それは、生きている私たちのためではない。死者のためなのだ。そしてそのとき、死者がまだ何らかのかたちで存在すると、私たちは信じていざるをえない。

言わば、死者の肉体を葬ることで、死者は私たちにとって存在するようになるのだ。


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