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「観る将」が観た第34期竜王戦2組ランキング戦 藤井二冠戦

1月29日に行われた竜王戦2組ランキング戦1回戦の、藤井二冠と阿久津八段の対局を観た感想です。
藤井二冠は、これまで竜王戦のランキング戦では負け知らずで4期連続優勝を果たしており、5期連続優勝に向けた初戦となります。阿久津八段は1999年プロ入りの38歳で、順位戦はA級の経験があり現在もB級1組に在籍する強豪です。両者は過去1回の対局があり、阿久津八段が阪田流向かい飛車を採用した対抗型の将棋となり、藤井七段(当時)が勝利を収めています。

本局は後手の阿久津八段が4手目に端歩を突き、振り飛車を匂わせる立ち上がりでしたが、その後8筋の歩を伸ばして横歩取り風の力戦となりました。藤井二冠は1歩得となりましたが勝負を急がず、持ち駒の角を▲6六角と自陣に打ち、相手の飛車と1一の香に睨みを利かせます。両者慎重に時間を使い夕休前までに39手しか進まないスローペースの進行となりました。

夕休後、藤井二冠は満を持して右桂を跳ねて仕掛けます。阿久津八段も持ち駒の角を△4三角と自陣に打ち、銀桂との2枚替えで攻め込みます。藤井二冠は、▲7二角成と馬を作ってから飛車取りに▲5五角と出ますが、阿久津八段も飛車を取らせる間に相手陣の金と銀を奪い詰めろを掛けます。この辺り素人目にはハラハラする展開となりましたが、藤井二冠の速度計算に綻びはありませんでした。▲4三歩と急所を叩き、▲6二飛から長手数の即詰みに討ち取りました。

本局は阿久津八段が序盤から手順を工夫し、藤井二冠も対局後のインタビューで「序盤から激しくなるような変化も多く、常に難しい将棋だった」と語っています。しかし藤井二冠の対応は盤石で、阿久津八段は「夕休の辺りでは苦しくしてしまった」と感じていたようです。終盤は激しい斬り合いとなりましたが、Abema解説の佐々木(大)五段によれば「プロ的には逆転されにくい形」になっていたようです。対局中少し疲れた表情を見せていたのが気になりますが、終わってみれば藤井二冠の快勝だったと思います。

この結果、藤井二冠は次の2回戦で広瀬八段と対局することになりました。広瀬八段とは、朝日杯の決勝や勝った方が挑戦権を得る王将リーグ最終戦など、これまで何度も大一番を戦ってきましたが、夕休のある長時間対局は初めてだそうで「こちらもしっかり読みを入れていきたい」と意気込みを語っています。終盤力に定評のある両者が、どちらが勝つのかわからない熱戦を繰り広げることを期待したいと思います。

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