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第72期王将戦挑戦者決定リーグ戦最終一斉対局の結果~藤井王将と羽生九段のタイトル戦初顔合わせが実現~

11月22日、第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦(通称:王将リーグ)の最終一斉対局がありました。


羽生善治九段vs豊島将之九段

ここまで5戦全勝でトップを走る羽生九段と、4勝1敗で追う豊島九段の直接対決は、羽生九段が勝って藤井王将への挑戦権を獲得しました。先手の羽生九段が角換わりに誘導し早仕掛けを見せると、豊島九段は銀を捨てて王手飛車を掛けましたが、その後の手順に見落としがあったようで単なる飛角交換となり、銀損だけが残っていきなり形勢が大きく傾きました。豊島九段は辛抱を重ねて粘り、終盤には執念の勝負手を放ちましたが、羽生九段は落ち着いて対処し快勝となりました。

羽生九段は2018年の竜王戦に敗れて無冠に転落し、昨年度は初めて年間勝率が5割を切るという不振に陥りました。2020年に初タイトルを獲得し、破竹の勢いで第一人者に駆け上がった藤井王将とのタイトル戦はもう無理かもしれないという囁きが聞こえ始めた中で、羽生九段は6戦全勝という圧巻の成績で夢の対決を実現しました。

羽生九段は元々新しい戦法を貪欲に取り込み、将棋界最高の実績を築き上げてきたレジェンドです。近年はAIの普及により定跡が目覚ましく進化していますが、羽生九段は過去の栄光に溺れることなく新しい考え方を吸収し、見事に復活を遂げました。「羽生マジック」、「神の手」と、誰にも思いつけない手を指してファンを魅了する両雄のタイトル戦がどのような展開になるのか、期待に胸が膨らみます。

かつて中原誠十六世名人は引退の記者会見で「やはり羽生さんとはタイトル戦をやりたかった」と語っています。どの世界にも世代交代は訪れますが、羽生九段としても今後の将棋界を牽引していくであろう藤井王将と、一度はタイトル戦で盤を挟んでおきたかったのは間違いありません。羽生九段は対局後の会見で「藤井さんとはかなり年齢が離れていますけれど、檜舞台で対戦することが実現できて、自分自身も非常に良かった」と話しましたが、ご本人のみならず多くの将棋ファンが待ち焦がれていた対決を楽しみにしたいと思います。

糸谷哲郎八段vs近藤誠也七段

勝った方が残留という糸谷八段と近藤七段の対局は、近藤七段が勝って3勝3敗となり残留を決めました。糸谷八段は2勝4敗となり、残念ながら陥落となります。

永瀬拓矢王座vs服部慎一郎五段

既に残留を決めている永瀬王座と、既に陥落が決まっている服部五段の対局は、服部五段が勝って2勝4敗で初参加の王将リーグを終えました。服部五段は陥落となりますが、渡辺名人に続いて永瀬王座と2人のタイトルホルダーを破り、今後の飛躍を予感させる実り多いリーグ戦だったと思います。永瀬王座は3勝3敗で残留です。


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