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ABEMAトーナメント2024 予選Cリーグ第一試合

5月25日、ABEMAトーナメント2024の予選Cリーグ第一試合が放映されました。チーム藤井「パイナップル」とチーム豊島「関西三銃士」の顔合わせとなっています。


一局目:青嶋未来六段 vs 大石直嗣七段

両チームともオールラウンダーに先陣を託します。先手の大石七段が早々に居飛車を明示し、振り飛車も匂わせた青嶋六段は先手の陣形を見て居飛車で雁木に組みます。大石七段が飛先の歩を交換して角も交換すると、青嶋六段は△6五桂と跳ねて桂交換します。大石七段が▲6七桂と据えると、青嶋六段は△5四銀右と上がって両取りを防ぎ、△6五桂と打って金桂交換します。大石七段は金取りに▲6四桂と打ち、▲7二桂成~▲7三角と飛車を攻めて捕獲し、"と金"攻めで勝勢となりますが、青嶋六段は△4九角~△2七金と飛車を捕獲し、△5六馬と引き付けて反撃します。時計の叩き合いで一瞬の隙を突いた青嶋六段は△6六銀から先手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム豊島:0勝

二局目:羽生善治九段 vs 豊島将之九段

リードされたチーム豊島はリーダーが出陣します。先手の羽生九段が角換わりに誘導し早繰り銀を採用すると、豊島九段は腰掛け銀から銀矢倉の形で応じます。羽生九段は銀をぶつけて交換し、豊島九段が△3五銀~△4五銀と2枚の銀を手放して守りを固めると、1筋を端攻めして香を犠牲に"と金"を作ります。羽生九段は▲6一角~▲6三銀と攻め掛かり、豊島九段が攻防に△3六角と打つと、後手玉から遠く▲1四金と打って作戦会議室の藤井竜王名人を驚かせます。豊島九段はじっと馬を作り、桂を犠牲に"と金"を消し、△7五歩から先手の玉頭に攻め掛かり、馬を飛車と交換して△7九飛と打ち込みます。羽生九段は▲3一角と王手で打ち込んで反撃しますが、豊島九段は凌いでから歩頭に△9五桂と打って長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム豊島:1勝

三局目:藤井聡太竜王名人 vs 糸谷哲郎八段

追いつかれたチーム藤井はリーダーが出陣します。先手の糸谷八段の誘導で相雁木の将棋となり、両者とも6分以上に時間を増やします。糸谷八段は右玉に構え、藤井竜王名人が6筋の歩をぶつけてから飛先の歩を交換すると、手抜いて9筋の歩をぶつけます。藤井竜王名人は△8七歩と垂らし、糸谷八段が飛車を8筋に回して▲8七金と垂れ歩を取ると、6筋の歩を取り込んでから△6一飛と回し、角と交換してから4筋の歩をぶつけます。糸谷八段は▲5七銀と引いて辛抱し、藤井竜王名人が△7八角と打ち込んで馬を作ると、▲7一飛と打ち込み、自陣から▲6二飛成と飛び込んで2枚飛車で攻め掛かります。藤井竜王名人は玉を上部に脱出し、歩の攻めで先手陣を崩して寄せ切りました。
チーム藤井:2勝 - チーム豊島:1勝

四局目:羽生善治九段 vs 豊島将之九段

チーム藤井は自ら手を挙げた羽生九段が出陣し、二局目と同じカードとなります。先手の羽生九段が矢倉を選択すると、豊島九段は急戦も視野に入れた構えから、飛車を5筋に回して歩を交換します。羽生九段が2筋の歩を突き捨ててから3筋の歩もぶつけると、豊島九段は6筋から反発して銀交換し、更に金銀交換してから△5五飛と飛び出します。この飛車を銀で取ると角で取り返される手が厳しいので、羽生九段は▲4六角と辛抱しますが、豊島九段は△5九飛成と捨て、△6六角と銀を取って飛び出します。苦しくなった羽生九段は▲6三歩と金頭を叩いて反撃しますが、豊島九段は△5七桂成から先手玉に迫り、角を飛車と交換して寄せ切りました。
チーム藤井:2勝 - チーム豊島:2勝

五局目:青嶋未来六段 vs 大石直嗣七段

両チーム呼吸が合うのか、今度は一局目と同じカードとなります。後手の青嶋六段が向かい飛車に振り美濃囲いに構えると、大石七段は穴熊を目指します。青嶋六段は先手の陣形が整う前に2筋から仕掛けて飛車をぶつけ、飛交換に応じた大石七段が角桂両取りに▲2三飛と打つと、△2六飛と打ち返して桂を取り合います。大石七段は▲2二角成と馬を作り、青嶋六段が3筋に"と金"を作ると、▲6六馬と攻防に引き付けます。青嶋六段は△6八竜から先手陣の金を剥がしますが、大石七段は7筋の歩を取り込んで▲8五桂と跳ね、▲6一竜と金を食いちぎって寄せ切りました。
チーム藤井:2勝 - チーム豊島:3勝

六局目:藤井聡太竜王名人 vs 糸谷哲郎八段

チーム豊島は相手のオーダーを読み切り、敢えて糸谷八段をぶつけます。先手の藤井竜王名人が角換わりに誘導すると、糸谷八段は先手から角を取らせ、△3三金型で右玉に構えます。藤井竜王名人が5筋の位を取ると、糸谷八段は飛車を5筋に回して位を奪還します。藤井竜王名人が▲4六角と手放し、金に取らせて飛車で取り返し、4筋の歩を伸ばすと、糸谷八段は飛車を4筋に回して受けます。藤井竜王名人は▲3四金と打って歩を支え、糸谷八段が△5四角と受けると、▲2三金から金交換し、▲4五金と打って角と交換し、▲4三歩成と銀に当てて攻め込みます。糸谷八段は△7一金と打って辛抱しますが、藤井竜王名人は飛車をぶつけて交換し、王手桂取りに▲3二飛と打ち込むと、数の攻めで寄せ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム豊島:3勝

七局目:羽生善治九段 vs 豊島将之九段

タイスコアとなり、この試合3度目の顔合わせとなります。先手の豊島九段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。羽生九段が△5四銀と腰掛けると、豊島九段は角を交換して▲8八銀と備えます。豊島九段が4筋から仕掛けると、羽生九段は△8八歩と叩いて先手陣を壁形にさせ、△6五銀とぶつけます。豊島九段は2分以上考えて3筋の歩を取り込み、羽生九段が△2二銀と引くと、6筋の銀を交換してから飛車取りに▲7三角と打ち込みます。羽生九段が飛車を見捨てて△4七歩成と飛び込み、"と金"で金を剥がし、飛車取りに△4七角と打ち込むと、豊島九段は飛車をかわして▲7一飛と打ち込み、自陣の飛車を▲4六飛と回して後手陣を睨みます。羽生九段は桂で飛車の盾の利きを止め、豊島九段が歩で桂を取りに行くと、△7七桂成と銀桂交換してから△6八銀と先手玉の腹に打ち込みます。豊島九段は飛車で角を取って詰めろを逃れますが、羽生九段は"と金"で飛車を取り、△7九飛から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:4勝 - チーム豊島:3勝

八局目:藤井聡太竜王名人 vs 大石直嗣七段

チーム藤井はリーダーが決めにいきます。後手の大石七段が横歩取りに誘導し、藤井竜王名人は青野流で迎え撃ちます。大石七段は△8六歩と垂らし、藤井竜王名人が▲8五歩と打って飛車の利きを止めると、角を交換します。藤井竜王名人が▲6六角と据え、銀を食いちぎって桂取りに▲7四銀と打つと、大石七段は5筋の歩を突き捨ててから△6五桂とかわしつつ、先手の玉頭を攻めます。藤井竜王名人は▲8三歩成と飛車を攻め、大石七段が△5三桂から飛車で桂を食いちぎり、王手金取りに△6六桂と打って金を剥がすと、▲8一飛~▲6二"と"と後手玉を追い詰めます。大石七段は取れば頓死というタダ捨ての△5九金から先手玉に迫りましたが、藤井竜王名人は正確にかわして逃げ切りました。
チーム藤井:5勝 - チーム豊島:3勝

Cリーグ第一試合の結果

チーム藤井は、リーダーの藤井竜王名人が3連勝と貫録を示し、チームを勝利に導きました。まさかの連敗スタートとなった羽生九段も最後に1勝して意地を見せ、青嶋六段も絶体絶命と思われた初戦を逆転勝ちして貢献しました。結果的に3人がともに白星を挙げる形となり、優勝候補の一角として順調に滑り出したように思います。
チーム豊島は、リーダーの豊島九段が2勝し、相手に傾きそうな流れを食い止めました。糸谷八段は相手リーダーの壁を崩せず、この日は白星に恵まれませんでしたが、初出場の大石七段が初白星を挙げて今後に期待を抱かせました。豊島九段が好調を維持し、糸谷八段と大石七段が実力を発揮できれば、予選突破は十分可能と思います。

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