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閉じられた窓が開けてもらうのを待っていた。

開かずの間をこじ開けた。

「箪笥(たんす)もあと一棹(さお)出せばゴールが見える。でも、なんで棹なんやろ?」

調べてみると、箪笥は江戸時代の寛文年間に大坂で造られだした。当時は長持の下部に車をつけた車長持が流行した。

しかし、江戸大火で皆が車長持をひいて逃げ、路地をふさぎ大惨事になってしまい製造禁止になる。その後、担いで運べる長持が主流になった。箪笥にも棹を通して運ぶようになったので、一棹、二棹 と数えるようになったのだ。

知らなかった。片づけすると、勉強にもなる。

雑誌や衣装ケースをよけて、奥の窓にたどり着いた。ずっと閉まっていた窓を開けると

なんともいえない気持ちいい風が吹き込んだ。

ホコリ混じりのよどんだ空気が、一気に出ていった。

「開けてもらう日をずっと待ってたんやな」

何かが、変わった気がした。


*「クロウ・キッズ!」朗読8更新
父の突然の死によって引きこもっていたリョウは、おばあちゃんの手紙を読んで大和へ向かったが…
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