災害の多い日本に住んでいるとしても、日常生活を送りながら常に非常時に備え続けるのは簡単ではありません。
そこで注目されているのが、「フェーズフリー」という新しい防災の考え方。
フェーズフリーとは、「いつも」を豊かにする物が、「もしも」においても暮らしと命を支えてくれるようにデザインしようという、防災にまつわる新しい考え方のことです。
製品やサービスの対象とするフェーズ(社会の状況)をフリーにする、つまり、「日常時用」と「非常時用」という区分をやめて、「いつも」と「もしも」の両方で価値を発揮するデザインにすることで、「いつの間にか備わっている社会」を実現することが狙いです。
このフェーズフリーについて紹介した本が、社会起業家でフェーズフリーの発案・提唱者である佐藤唯行さんの著書『フェーズフリー 「日常」を超えた価値を創るデザイン』(翔泳社)です。
本書ではフェーズフリーの事例として、2022年度のグッドデザイン賞を受賞したコクヨのコンパクトテーブル「MULTIS(マルティス)」が挙げられています。そのコンセプトは「いつもの価値を高めるものが、もしもとこれからをささえる」、まさにフェーズフリーを体現した製品です。
本書ではこうしたフェーズフリーの具体的な事例とともに、どのようにフェーズフリーなデザインを実現すればいいのかを解説しています。
フェーズフリーなデザインには防災的な価値は当然として、ビジネス的な価値も必要です。ビジネスとして成り立つということは、すなわち私たちの日常生活におけるニーズを満たしているということ。
日常時の暮らしを豊かにしつつ、非常時にも役立つ。この考え方を活かした製品やサービスを作ることが、今求められています。
商品開発や新規事業の立ち上げに携わっている方、防災の見直しを考えている方などに、ぜひフェーズフリーを知っていただければ幸いです。
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