見出し画像

落ち込んだときや辛いとき、少しだけでも無心になれる「なぞり描き」をしてみませんか?

悩み事や喪失感で何にも手につかない。いろんなニュースを見聞きして不安になる。だからいろいろ考えてしまって、余計に気分が沈んでしまう……。

そんな状態が続くと心だけでなく体にも悪影響が出かねませんが、リフレッシュしたり別のことをやってみたりするのも難しいですよね。そういうときは無理せず何か集中できる作業に没頭できれば、多少は気も休まります。外出が難しいときにちょっと気を紛らわせたいときもあるはず。

もしかしたら聞いたことのある方もいるかもしれませんが、試してみてほしいのがゼンタングルです。パターンアートの一種で、決まった模様を繰り返し描くことで絵を完成させてきます。

名前に「ゼン」とあるのは、禅がモチーフになっているからです。手を動かしてパターンを描いていくことで自然と集中し、ほかのことを考えず専念できることからリフレッシュなどの効果があるそうです。絵ができ上がったら達成感も味わえます。

いまではブームも起こり多くの人が知るゼンタングル、翔泳社でも『ペン1本で心が落ち着くゼンタングル描き込みBOOK』という本を刊行しています。また、花のパターンに特化した『心を満たすフラワーリースなぞり描き』も。

紙版のみの販売です。

著者はゼンタングル認定講師で、インドのバンガロールでゼンタングルを教えるダヌコンダ真理さん。『心を満たすフラワーリースなぞり描き』の「はじめに」では、ダヌコンダさんは「大切な人が亡くなった心の隙間を埋めるために花の絵を描いた」と書かれています。絵を描いている間は少し喪失感を忘れることができた、と。

心が落ち込んだり鬱屈としたりすることは誰にでもあります。そんなとき、誰かにあたる、ものを壊すといった衝動を抱いてしまうこともあるかもしれません。ですが、ちょっとだけ冷静になってペンを持つのはいかがでしょうか。

また、外出が難しいいまの時期、小中学生のお子さんがいる家庭にもおすすめです。もしかしたらこのゼンタングルに、子供たちも(一時は)夢中になってくれるかもしれません。

そこで今回は『心を満たすフラワーリースなぞり描き』から、なぞり描きの始め方を紹介します。ダヌコンダ真理さんが本書を作るきっかけになったエピソードも合わせて掲載しますので、悩み事や辛いことを抱えている方は、少しの間でもぜひ試してみてください。

以下、『心を満たすフラワーリースなぞり描き』(翔泳社)から抜粋します。掲載にあたって一部を編集しています。

はじめに 想いを受け止めてくれる「花」

この本を手にとってくださってありがとうございます。

私がこの本を作るきっかけとなったのは大切な人の死でした。心にぽっかり
と穴が空いたような喪失感を覚え、気力が湧かない日々が続きました。そうした日々の中で気がつくと私はたくさんの花の絵を描いていました。

心に空いた穴を何かで満たす必要があったのかもしれません。無心で花を描
いているとかなしみが癒やされ、少しだけ喪失感を忘れることができました。

花は生活に華やかさを与えてくれるだけではない。私たちの様々な想いを受け入れ、そしてその想いをどこかに届けてくれる……。花をその様な存在として認識したのは初めてでした。このことを誰かに伝えたい。そう思うようになりました。

この本を手にしてくださったあなたは、もしかしたら私のように、喪失感に
苦しんでいるのかもしれません。仕事に追われ、少し休みたいなあと思っているのかもしれません。誰か好きな人がいて、溢れる気持ちを持て余しているのかもしれません。何か良いことがあって、誰かと喜びを分かち合いたいと思っているのかもしれません。

花はあなたがかなしいときにいっしょに泣き、うれしいときにはともに喜ん
でくれる。またあなたと誰かを結ぶ仲立ちをしてくれ、ときには現実を超えたものとの架け橋にもなってくれる……。このような不思議な存在の花。そんな花の絵をいっしょに描いてみませんか?

「描いてみたいけれども、花の絵なんてとても描けません」という声が聞こ
えてきます。そんな方でも気軽に描いていただけるよう、いろいろと考えました。そしてたどり着いたのが「なぞり描き」です。あらかじめ描かれた線をペンでなぞっていく手法ですが、線を自分で描き加える自由もあります。どうですか、これならば気楽に始められるでしょう?

本書では、四季折々の花や創造の花をリースの形に配して描きました。写実
的な花ではなく、簡略化して花模様のようにしたのは、そのほうが描きやすいと思ったからです。この本のなぞり描きに慣れてきましたら、ご自分の好きな花の絵を描くことにもチャレンジしてみてくださいね。

花の名前を知らなくてもかまいません。空想の花を描いてもかまいません。
この本を通して、花という存在がいつもあなたに寄り添い、側にいることを感じていただければ、嬉しく思います。

心を込めて花の絵を描く

【人の心に寄り添ってきた花というパートナー】

以前「ネアンデルタール人は死者を埋葬するときに花を供えていた」という学説が発表されました。この学説には現在疑問符が付けられていますが、人類は古代から花に哀悼の気持ちを込めていたのではないか、と注目されました。

花は私たちの生存にとって不可欠なものではありません。でもそんな役にも立たない存在に、かなしみや喜びを託す。実はこれがあるかないかが、人と動物を分けているとも言われています。

花を愛でる行為がいつ始まったかについては、定かではありませんが、日本の万葉集には、植物を詠んだ歌が全体の3分の1 もあるそうです。また花鳥風月というように、花は日本の絵師によってさまざまに描かれてきました。花に託された絵師の想いは、絵を通して私たちに強く伝わってきます。

このように、私たちは心の中にあるものを花に投影して、歌に詠んだり、絵に描いたりしてきました。また、祝福の気持ちや哀悼の気持ちを伝えるために、花を贈ってきました。

花は、人の想いを受け止めてくれるモチーフなのです。

【飾って楽しい四季のフラワーリース】

花や葉っぱを輪の形に配した装飾をフラワーリースと言います。日本ではクリスマス・リースが一番ポピュラーかもしれませんね。

リースの「輪」には「永遠」「輪廻」「尽きることのない愛」といった意味が込められています。また家族を悪いものから守り、幸せが永遠に続きますように……という魔よけの意味もあります。ですから人々は家族の幸福を願いながらリースを玄関の扉に飾ってきました。

みなさんも作品を描き終えたあとは、ぜひお部屋等に飾って楽しんでくださいね。本書はあらかじめ絵の背景に色が付けてありますので、線をなぞるだけで美しいリースが完成します。また、春夏秋冬・四季の花が登場しますので、季節感を味わいながらゆったりと楽しく描いてください。

【リラックスして丁寧になぞる】

ゆったりとした気持ちで描くためには、まず「うまく描こう」と思わないことが大切。深呼吸して体の力を抜きましょう。いらない紙に落書きをして手を慣らしても良いでしょう。リラックスしたら、急がず丁寧に線をなぞります。本あるいはなぞり描きするページを切り取って、回しながら描くとストレスなく描き進められます。

きれいに自分らしく仕上げるコツ

【なぞり描きでも自由な表現ができる】

本書のフラワーリースは、どこからどのように描くといった決まりはありません。線をきれいになぞろうとするあまり、のびやかな気持ちを忘れてしまっては意味がないのです。

でもご自由にどうぞと言われても……という方のために、きれいに仕上がる描き方のコツや、より自分らしい作品にするためのアレンジ方法をご紹介します。

●中心から描く

花は中心から外側にむかって描くと、自然な流れで仕上げられます。

画像2

●前面の花から描く

花が重なり合っている場合は、前面にある花を描き、その後、背後にある花を描くようにすると仕上りがきれいになります。

画像3

●線を自由に描き足しても、線をとばしてもOK

花の中に装飾を加えたり、葉っぱを付け加えたり、自由に描き込んでください。逆に、なぞり描きをしたくないところは、しなくても構いません。しっかり線をなぞらなければと緊張する必要はまったくありません。

画像4

●線の太さも自由に変化を付けて

強調したい線があれば、もう一段階太目のペンで二度描きしましょう。線にメリハリが付きます。

画像5

筆記用具の種類と特徴

【いろいろな筆記用具を使ってみる】

様々な種類の筆記用具が文房具店には売られています。どれを使ったらいいのかな?と迷う方も多いかもしれません。このページを参考にして、自分に合ったものを選んでください。決まりはありません。ペンや鉛筆、カラーのボールペンなど、いろいろな筆記用具を使ってみると、表現の幅が広がって楽しいですよ。

●ミリペンやサインペンで描く

細かい線を正確になぞりたい場合は、線の太さをミリ単位で選べるミリペンを使います。0.1mm~0.8mmくらいが使いやすいでしょう。例えば0.1mmと
0.5mmといったように、2種類の太さを用意すると線にメリハリが付きます。もちろん手持ちのサインペンでも。

画像6

●ゲルインクボールペンで描く

ペンのすべりが良く、柔らかい表現ができます。0.25mm~0.8mmくらいが使いやすいでしょう。カラーのゲルインクボールペンを使っても楽しい仕上りになります。また失敗するのが心配という人は消せるボールペンを使えば線を描きなおすこともできます。

画像7

●鉛筆や色鉛筆で描く

どこにでもある鉛筆や色鉛筆でももちろんOKです。鉛筆であれば消しゴムで消せるので、うまくなぞれるか心配……という人でも安心です。部分的に塗ってみても美しく仕上ります。色鉛筆は使う色によって背景の色との組み合わせも楽しめます。

画像8

【色やメッセージをプラスして楽しむ】

●色鉛筆などで色を塗る

なぞり描きが完成したら、色を付けてみましょう。カラーリングの本は世界中で大人気です。色は私たちの気持ちを明るくし、心を癒す効果があるようです。あまり深く考えずに、好きな色を塗ってみてください。

画像9

●中心に好きな言葉を書く

リースの中心にはスペースがあります。ここに、好きな言葉を入れてみても良いでしょう。メッセージカードとしても楽しめます。本書P73では、手書き文字の練習ページを設けていますので、参考にしてみてください。

画像10

●裏面にサインをする

本書のなぞり描きページの裏には、署名欄があります。自分のサインや完成させた日付、自分で考えたテーマ、贈る人へのメッセージなど自由に記入して仕上げましょう。

画像11

オリジナルの作品に挑戦する

【絵心がなくても、自分だけの組み合わせで描ける】

なぞり描きに慣れてきたら、オリジナルのフラワーリースを描いてみましょう。本書に出てくる花は、写実的ではなく模様のように簡略化されています。ですから簡単な描き方を覚えてしまえば、絵心がなくてもオリジナルのリースが描けるようになります。

まずは小さなリースから始めてみましょう。慣れてきたら、徐々に大きなものにも挑戦してみてください。

●オリジナルリースを描く

(1)用紙を切って正方形にしたものに、大きさの異なる2つの円を描きます。ちょうど良い大きさのカップなどがあれば、それを使って描きましょう。鉛筆で花の位置に丸を描きます。花の中心にも小さな丸を描いておきます。

画像13

(2)丸に合わせてペンで花を描いていきます。本書巻末に花の図案集がありますので、参考にしてください。中心の丸→前面の花びら→背後の花びら→細かい装飾の順番で描くと描きやすいです。

画像13

(3)前面にくる花をまず描き、次に背後にくる花を描いていきます。葉っぱなども描いたら、鉛筆の線は消しましょう。

画像14

(4)必要に応じて、色を塗ったり、文字を入れたりして完成!

画像15

本書の使い方

画像1


よろしければスキやシェア、フォローをお願いします。これからもぜひ「翔泳社の福祉の本」をチェックしてください!