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発達障害を強みに変える、フリーランスという働き方

発達障害を強みに変える」という言葉は、発達障害を持つ方の就労支援をされている銀河さんのスローガンです。

銀河さんは自身も発達障害の当事者で、いまはフリーランスとして仕事をされています。かつては会社員として働いていたものの、人間関係などに悩んで退職。「死ぬよりはマシだ」とフリーランスになったそうです。

そんな銀河さんがこれまで培ってきたフリーランスとして働く方法や、なぜ発達障害を持つ方がフリーランスに向いているかなどを紹介・解説した書籍が『発達障害フリーランス 属さない働き方のすすめ』(翔泳社)です。

会社勤めが合わないと感じている方にとって、フリーランスという働き方は試してみる価値のある選択肢です。その大きなメリットとして、時間や場所の制約がなくなり、人間関係も楽になることが挙げられます

本書ではフリーランスになるための準備から、どのように始めればいいのか、実際になったあとのトラブルなどにどう対処すればいいのかを、著者である銀河さんの実体験をもとに説明しています。

今回は本書から「第1章 フリーランスを知ろう」の一部を抜粋して紹介します。発達障害の特性がなぜフリーランスと相性がいいのか、フリーランスに向いている人の特徴など、フリーランスとして働くことに興味がある方に最初の情報収集として役立てていただける内容です。

発達障害の特性は、フリーランスと相性がいい

特別なスキルがなくてもフリーランスになれる

どこの会社にも所属せず、フリーランスとして、一人で働く。

そう聞くと、誰もが「自分で仕事をとるなんて、大変そう」「卓越したスキルがある人しか、フリーランスになれないに違いない」とハードルの高さを
感じてしまうかもしれません。 でも、決してそんな心配はいりません!

僕自身はもちろん、発達障害を持ちながらフリーランスになった多くの人々を見てみると、独立した際に、必ずしもユニークな特技や能力を持っているわけではありませんでした。

それでも、彼らの多くは「フリーランスになってよかった」「会社員をやめたおかげで、のびのびと働けるようになった」との感想を持ち、毎日を楽しそうに過ごしています。

発達障害の特性はフリーランスに向いている

「職場の人間関係がうまくいかない」「いまの仕事で成果を上げられない」など、働き方に何かしらの問題を抱えている発達障害の人には、一度はフリーランスという選択肢について考えてみてほしいと、僕は常々思っています。

その最大の理由は、発達障害の特性は、会社員よりも、フリーランスに向いていると感じるからです。
 
たとえば、発達障害の人は、下の表のような特性を持ちがちです。

こうした特性は、集団のルールが重んじられる会社員の世界では、「チームワークが乱れるから」と、あまりよく思われません。さらに、会社員の場合は配属や人事異動の都合もあり、必ずしも自分の得意な仕事に携われるとは限りません。自分の特性に対して上司や同僚から理解を得られなかった場合は、人間関係がうまくいかず、社内で孤立することもあります。
 
でも、発達障害の人々は、苦手なことが多い一方で、自分が好きなことを突き詰め、発展させるのが得意です。「好きこそものの上手なれ」とはよくいったもので、自分の興味関心や特性とマッチした仕事を選ぶことさえできれば、モチベーションを高く持って取り組み、スキルもどんどん磨かれていきます。
 
本書でも詳しく説明していきますが、そうした発達障害の人の持つ特性は、フリーランスで働くほうが、活かしやすいと感じます。だからこそ、発達障害の人がフリーランスになったとき、自分の特性を弱点から武器に変え、活躍することができるのです。

フリーランスに向いている人・会社員に向いている人の特徴

フリーランスに向いているのはマイペースに働きたい人

発達障害の人から「フリーランスになりたい」という相談を受けたとき、多くの人から投げかけられるのが、「フリーランスになったら、いろいろな人と競争して、バリバリ働かないとやっていけないですよね?」という疑問です。

独立した以上は、野心を持って仕事に取り組まないと、フリーランスとして生き残れないのでは……と不安を抱く方もいるかもしれません。でも、発達障害の特性を持ちながらフリーランスへと転身した人を見ていると「たくさん稼がなくてもいいから、マイペースに、気楽に働きたい」というタイプの人が多いように思います。

もちろん、向上心を持って働くことは大事ですが、野心を持ってフリーランスになるのはごく一部の人々だけ。むしろ「会社員として働くのが苦手だから、フリーランスを選んだ」という人も、決して少なくないのです。

ストレスを手放したい人へ

発達障害の特性を持ちフリーランスになる多くの人は、最初から安定した収入や定期的な仕事が手に入っていたわけではありません。ただ、会社員として得られる待遇と引き換えにしてでも、なんとか会社で感じるストレスを手放したいという人ばかりでした。
 
僕自身、会社員をやめようと決めたとき、安定した収入を捨てることに不安はありました。でも、それ以上に、「自分には会社員は向いてない。これ以上会社で働いても、自分は高いパフォーマンスを上げられないのではないか」と感じたため、フリーランスの道を選びました。何もスキルのない状態でしたが、少しずつ時間をかけてスキルアップして、取引先を広げればなんとかなるだろうと判断したのです。
 
そして、フリーランスになってからは、仕事に関するストレスが格段に減り、人生がとても楽になりました。
 
極論を言えば、いまの会社に不満がないならば、安定した仕事を捨てて、無理にフリーランスを目指す必要はないと思います。逆に「いまの仕事はストレスが多すぎるので、やめたい」と感じている人は、いま会社員という働き方が合っていないからこそ、成果が出せていない可能性が高いです。だからこそ、フリーランスに転身した際に、自分を縛っていたストレスから解放され、やりがいを感じられるはずです。
 
なお、これは発達障害でなくても、「会社勤めが苦手だ」「いまの仕事に疲れてしまった」と感じる人なら、誰にでも当てはまると思います。

毎日平和に働くことを重視する人こそ、フリーランという選択肢を考えてみてほしいです。

最大のメリットは、3大ストレスからの解放

フリーランスのメリット① 働く場所を自分で決められる

会社員からフリーランスになる上で、大きなメリットは、さまざまな事柄の自由度が上がるという点です。

そのひとつが、働く場所を自分で自由に選べることでしょう。

たとえば、発達障害の人は、ささいな音や振動などに反応する感覚過敏という特性を持つ人も少なくありません。そのため、会社だとうまく集中でき、
本領が発揮できない人もいます。

でも、フリーランスの場合は、こうした働く環境とのミスマッチがほとんど発生しません。

自宅を自分が集中できる環境にカスタマイズして、そこで仕事に没頭するもよし。お気に入りのカフェなどに足を運ぶもよし。リモート作業でよいという場合は、大自然に囲まれた田舎のエリアに住むことも可能です。狭い場所が好きなら、車や押し入れのなかで仕事をすることだってできます。つまり、自分にとって心地がよく、集中できる環境で仕事ができるのです。

さらに、会社に行かなくていいので、通勤する必要もありません。僕自身、毎朝満員電車にゆられたり、渋滞のなか会社まで車を運転したりという通勤のストレスから解放されたのは、本当に幸せでした。

通勤に余計な時間や体力を費やさなくなったことで、より仕事にも集中できるようになり、自分のために使える時間も増えたように思います。

フリーランスのメリット② 時間の制約がない

フリーランスになる2つ目のメリットは、時間の自由度が高くなる点です。

発達障害の人は、定時の出社や出勤日などの時間的な制約に、わずらわしさを感じる傾向があります。僕が製薬会社のMRとして働いていたときは、「なんでみんなと同じ時間に会社に来なくてはいけないんだろう?」「このルールは無意味なんじゃないかな」という疑問を抱いては、仕事に対するモチベーションが下がることも多々ありました。

会社に入った以上は、その集団のルールに従うのは当たり前だと頭では理解していたのですが、「意味のわからないルール」に従うことは苦痛以外の何物でもありませんでした。

さらに、発達障害の特性を持つ人は、日によって、体調や気分、メンタルが大きく変わりがちです。

僕もときどき「あ、今日はなんだか調子が悪いな」と思う日があるのですが、そういう日はベッドから起き上がることすら困難です。調子が悪くなると、仮になんとか出社しても、まったく集中できず、もはや仕事をするどころではありませんでした。

結局、僕が20代にして会社をやめたのは、自分の調子によって仕事量をコントロールできないことに、疲れてしまった部分もあったのだと思います。

納期さえ守れば残りの時間は自由!

会社員なら、9時出社17時退社や土日休みなどと就業時間や休日が決められているケースが大半ですが、フリーランスになると、この制約はなくなります。基本的には納期の期限を守れれば、それ以外の時間は自由に過ごすことができます。通勤時間もありません。

調子が悪いときは無理せずに休み、調子のよいときにたくさん頑張る。働くボリュームを、コントロールできるようになるのです。

フリーランスのメリット③ 人間関係が楽

フリーランスになって得られる3つ目のメリットは、人間関係が楽になることです。

発達障害のなかでも、特にASDの特性を持つ人は「察する」能力が低い傾向があります(反対に、相手の気持ちを察しすぎてしまう人もいると聞きます)。そのため、人間関係で過度なストレスを感じたり、長期的な関係を築いたりすることが苦手な傾向にあります。

周囲の人が自分の特性を理解してくれればよいですが、そんな環境に恵まれるケースのほうが少ないでしょう。仮に自分の上司と相性が悪いと、「あいつはダメだ」とレッテルを貼られてしまい、評価がずっと低いまま……なんてことも起こりえます。

でも、フリーランスの場合は、クライアントは自分で選ぶことができます。もちろん、人との付き合いがゼロになることはないですが、会社のように四六時中誰かと一緒にいるわけではありません。全体的に人との接点が減るため、人間関係にストレスを抱くケースは減るでしょう。また、上司がいないので、どんな相手とも一線を引いた関係性を築くこともできます。

人間関係のストレスで「死にたい」と思った会社員時代

僕自身が会社員だったころ、実は何よりも大変だったのが、人間関係です。

もともと人の顔色を読んだり、抽象的な指示を理解したりするのが苦手なタイプだった僕ですが、当時の会社の上司は、何事も「見て覚えろ」というタイプの方でした。

そのため、僕が何か質問しようものなら、「俺とクライアントのやり取りを見て、その場で察しろ!」と怒られるのが日常茶飯事。上司の指示が理解できなかった僕は、仕事でミスを連発してしまい、上司からはいつも「お前は仕事ができない」「学習能力がない」と叱られてばかりでした。


次第に、職場で孤立していき、毎日「どうしたら会社に行かずに済むんだろう」「あの上司とかかわらずに済む方法はないのか」と悶々とするように。そうしたストレスが積み重なった結果、いつしか「電車に飛び込んで死んでしまえば、楽になれるのに」と思うようになったのです。

そのとき、はっと我に返り、初めて事態の深刻さに気が付いた僕は、「死ぬよりはマシだ」と会社をやめる決断をしました。

僕の例は極端かもしれませんが、「人間関係のストレスから抜け出したい」という人にとって、フリーランスの働き方はきっととても心地よいものだと思います。


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