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コロナ禍で考え直した故郷とのつながり

昨年末は感染状況が比較的落ち着いており、久しぶりに地元で年越しをしたという方も多いのではないでしょうか。

私も実家(北海道根室市)での年越しを楽しみにしていた一人です。しかし、両親が高齢であり、2回目のワクチン接種から半年以上が経過していたことから、万が一のことを考えて帰省を断念しました。

ああ、帰りたかった。2年ぶりに両親や友達にも会いたかったし、花咲ガニ、めんめ(のどぐろに似たとても脂がのった高級魚です!)も食べたかった。丹頂鶴やオジロワシの写真も撮りに行きたかった……。

故郷とのつながりが「ふるさと納税」くらいしかなくなった

コロナ禍で帰れない期間が長引くほどに膨らみ続ける私の地元愛ですが、その気持ちとはうらはらに故郷とのつながりは弱くなる一方です。

私が生まれた北海道根室市は、ロシアに実効支配されている北方領土が肉眼で見える、日本最東端の街※です。

※一般の方が行けない地域を含めると、日本の最東端は東京都小笠原村の 南鳥島です。

※根室がどんな街か気になった方は、こちらのリンクをぜひご覧になってください!

主要産業は漁業や水産業ですが、どちらも苦境に立たされており、私が生まれた年には4万人を超えていた人口も今では2万5千人を割り込んでしまっています。市内の高校も統合され、1つを残すのみになりました。

大好きな故郷が衰退していく様子を遠く離れた東京で見ているのは、自分の心のよりどころが奪われていくように感じ、辛いものでした。

ただ、東京にいる自分が故郷に対してできることはほとんどありませんでした。そこで以前は、北海道に興味がありそうな友人を地元に案内したり、帰省した時に地元の風景や食べ物を写真に収めてSNSで紹介したりすることで、「わずかでも地元に貢献している」という気持ちを得て、かろうじて故郷との心理的なつながりを保ってきました。

しかし今はそれもできません。できることは、ふるさと納税で地元企業の商品を購入して応援することくらいしかなくなってしまいました。

地元には戻りたくても現実的に難しい

このままでは、自分と故郷のつながりも失われてしまうのではないか。そんな焦りもあり、「編集者という仕事はとてもやりがいがあるけれども、自分が納得いくまで働いたら、地元に戻るという選択肢もあるのかもしれない」という考えも頭によぎりました。

ただ、考えれば考えるほど容易なことではなさそうです。

「地元では、今までのキャリアやスキルを生かした仕事は見つからないだろうな」
「かといって、この年齢でゼロから新しい職について、生活に不自由のない給料を稼ぐのはとても難しそう」
「やっぱり地元に戻るという選択肢をとるなら、十分に貯金ができてからになりそうだ」
「そう思えるまでにあと何十年かかるのだろうか… その時まで両親は健在だろうか...」
「もし、両親がいなかったとしたら、コミュ障の自分は地元のコミュニティーに上手く溶け込めるだろうか...」

いろいろなことが頭を駆け巡り、考えれば考えるほど、故郷にかえって生活をするということは簡単ではないと実感させられました。

コロナ禍は故郷とのつながりを取り戻すきっかけになるかもしれない

ただ、今は、急速に普及しつつある一つのキーワードに希望を抱いています。それは「リモートワーク」です。

コロナ禍で、弊社もリモートワークが取り入れられ、重要な会議の時、あるいは、印刷やスキャンが必要になった時以外は出社を控えて仕事をしてきました。

そのような生活を1年以上続けていますが、特に大きな問題は感じず、自宅の仕事環境さえ整えれば、出社は1月に1回程度でも十分に仕事が回るのではないかと感じています。

つまり、このままリモートワークが続くのであれば、1年のうち大部分を地元で過ごし、必要な時だけ東京へ戻ってくるという働き方も可能になるのではいかと思っています。

もしそれが実現できれば、収入の心配をせずに故郷で生活をすることがでそうです。

自分の消費で地元経済に貢献することができますし、両親が健在のうちに地域コミュニティーに溶け込むこともできそうです。また、今までのスキルや経験を地域おこしに生かすことができるかもしれません。

そして、何よりも帰省のたびに考えていた「両親にあと何回会えるのだろう」という心配をしなくてすみます。

周囲にこの話をしてみると、子どもの教育などの課題を挙げつつも同意してくれる人が多く、私のように地元での勤務を希望する地方出身者の方が少なからずいるように思います。

急速な高齢化や地域経済の低迷は、都市圏を除いた日本のほとんどの市町村が直面し、かつ、有効な解決策をみつけるのが困難な課題であるように思います。

しかし、リモートワークという、地元に愛着を持つ若年層が生活を維持しつつ地域に拠点を構えることができる手段が根付いていけば、地域の課題が解決するとはいかないまでも光がみえてくるのではないでしょうか。

調べてみると、内閣府でも「地方創生テレワーク」という言葉を掲げて、地方出身者等の故郷でのテレワークを促進する動きがあるようです(新たなテレワークの推進に向けた方策)。

私も一市民として、新型コロナウイルスが終息しても、リモートワークの普及の流れが続くよう、声を上げていきたいと思います。

そしてコロナ禍を転機として、多くの方々が「今の仕事を続けながら、愛着がある故郷で過ごす時間を長く持ちたい」という選択肢をもつことができるよう、日本社会が変わることを期待しています。

(熊谷)

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