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いいデザインって何だ!? ビジネスパーソンがいまからデザイン力を磨くには

自分でデザインはしなくても、デザインの判断やデザイナーとの意思疎通に関わることの多いビジネスパーソンにとって、デザイン力は仕事の成果に直結します。

ですが、デザインに対して自信のない人も多く、デザイナーにきちんと目的や意図が伝わっているか不安な人も。皆さんも、デザインの制作や修正の指示をする際、曖昧な言葉でしか表現できなくてなんとなく引け目を感じていませんか?

デザイン力は、生まれ持ったセンスではありません。デザインは理論で成り立っているので、誰でも、いつからでも磨くことができます。

今回は、そのための方法やデザインの理論を解説した書籍『美大式 ビジネスパーソンのデザイン入門』から、ビジネスパーソンがデザイン力を磨くためにすぐ始められるインプットの方法を紹介します。

著者は武蔵野美術大学造形学部を卒業後、ビジネスパーソンのためのデザイン経営やアート思考を教えるスクールを開校された稲葉裕美さん。これまで1万人以上の受講者を輩出し、注目を集めています。

「デザインが分からない」という不安やモヤモヤを吹き飛ばす1冊。ぜひチェックしてみてください。

◆著者について
稲葉 裕美(いなば・ひろみ)
武蔵野美術大学造形学部卒業。デザインスクール/WEアートスクール主宰。株式会社OFFICE HALO代表取締役。
2014年に「クリエイティブ教育をイノベーションする」というビジョンのもと、美大時代の仲間と共にOFFICE HALOを設立。2016年に武蔵野美術大学デザイン・ラウンジと共同で、日本初のデザイン経営の学校「WEデザインスクール」を開校。2024年より美大式のアート思考の学校「WEアートスクール」を開校。これまで企業、行政、大学、大学院などで多数プログラムを開催し、1万人を超える受講者を輩出している。


知識のインプットでデザイン力は伸びる

一定のインプットが大事

デザイン力を磨くためには、知識をインプットすることも大切です。
デザインも、他の分野と同様に、知識を身につけることによって、能力を伸ばすことができる分野です。

たとえば、私のスクールでは、視覚から情報を伝える力を磨くために、色・かたちの知識を伝えています。

デザインの色・かたちの意味は外国語のように学ぶのが良く、それぞれの色・かたちに対応する意味を、外国語のように知識として知っていくこ
とで、デザインを扱う力を磨くことができます。

たとえば、黄色にはこんな印象がある。緑色にはこんな印象がある。
太い文字か細い文字かで、こんな印象の違いがある。
そういったことを一つ一つ知ることで、色・かたちには、それぞれ対応する意味があるということが具体的にわかるようになります。
色・かたちに、一定のロジックがあることもわかるようになるのです。

こういった知識を身につけることで、デザインを判断するための基準が身につきます。
判断軸が身につくことで、現場でデザイン案を判断する時や、自分が資料をつくる時などに、この色がいい、この文字がいい、と選ぶことができるようになっていきます。

また、感性的価値を発想するデザイン力を鍛える場合も同様です。
そもそも、どんな感性的価値が存在するのか?
どんな要素で、人は美を感じるのか?
人はどんな体験で、情緒的な喜びを感じるのか?
まずは、そういったことを一つ一つ知ることが大切です。
なぜなら、知りもしないことが、急に自分からアイデアとして出てくることはないからです。

まずは、知識としてインプットし、自分の中に蓄積していく。
そういった蓄積があるからこそ、いざアイデア発想を求められた時に、「あの時知った、こういう喜び方を顧客は求めているのではないか」「あそこでも使っていた、こんな方法で感性的魅力を生み出せるのではないか」と思いつくことができたり、その良し悪しを判断できたりするのです。

デザインを分析的に見る

インプットをケーススタディ型で得ていくことも、とても効果的です。
優れた事例を見て、なぜ優れているのかを学び、参考にするということです。

私のデザインクラスも、基本的にケーススタディ型で進めています。
特に初学者は、まず事例から学び、デザインに触れる経験を得たり、良いものの基準を知ったりすることが大事だからです。

デザインは、私たちの身の回りにたくさんありますから、ケーススタディは、日常の中でも行うことができます。

街を歩いている時、買い物をしている時、食事をしているレストランの中、ふと手に取った商品など、あらゆる場所でデザインを見ることができます。
それらを見るだけでも、デザインをインプットすることは可能です。
しかし、そういったものに触れる時、単に見るだけでは意味がありません。
分析的に見る姿勢があってこそ、意味のあるインプットになります。

デザインが苦手な人は、デザインを見る時、「なんとなく漠然と見てしまう」という癖がある人が多くいます。
なんとなくぼんやり全体を見て、「なんかいいな」「なんかよくないな」と思うだけの状態でいるということです。
しかしこれでは、そのデザインから学べることはほとんどなく、デザイン力は伸びません。
見てインプットするというのは、単に目の網膜に像が映る状態にすればよい、というわけではないのです。

デザインができる人は、素敵なデザインに出会うと、必ず分析的に見ます。
「このデザインは、青と黄色が組み合わせで使われているから、明るく楽しい雰囲気に見えるんだな」
「この空間が素敵なのは、自然な風合いの木のテーブルと、椅子が置いてあるからだな」
といったように、具体的な要素を見て、分析的に確認するのです。

そうすることで、「何がよかったのか」「どうよかったのか」「なぜよかったのか」が理解され、身になるインプットになるのです。
まずは目に見える要素を、
「どんな色かな?」
「どんなかたちかな?」
と観察する。
そしてそこで観察できた要素について、それぞれどんな印象や機能があるかを見ていってください。

そうすることで、冷静に丁寧に一つずつ、要素を見て理解していく、ということがしやすくなります。
自然と分析的にデザインを見ることができ、質の良い考察やインプットができるようになるはずです。

カルチャー雑誌を月に1回読む習慣をつくる

雑誌は感性的価値の教材

デザイン力は、日常で触れる情報でも、磨いていくことができます。
日々、仕事に追われている人は、触れる情報といえば、ビジネスニュースやビジネス本ばかりかもしれません。
仕事を頑張りたいビジネスパーソンであれば、仕方のないことかもしれません。
しかし、デザイン力を高めたいのであれば、ぜひ、もう少し視野を広げてみてください。

デザイン力を高めるために、ぜひ触れて欲しい、私がおすすめする情報媒体は、カルチャー雑誌です。
なぜなら、カルチャー雑誌は、さまざまな感性的な喜び方を教えてくれる、素晴らしい教科書だからです。

カルチャー雑誌のテーマは、インテリア、ファッション、食、休日の過ごし方、旅などさまざまです。
私たちにとって身近で、人生で最も重要ともいえる、衣食住や、余暇というシーンで、どんな感性的喜びがあるかを教えてくれます。

ゆったりとした休日をもたらしてくれる、朝食の楽しみ方。
アートを巡る旅で、美意識や五感を刺激する。
レトロなカフェで、懐かしさや温もりを感じる。
趣味のカメラで、自分のお気に入りの風景を見つける。

カルチャー雑誌は、そんな風に、どういうシーンで、どんな喜びを得られる可能性があるのかを教えてくれます。
自分では気づかなかった、さまざまな感性的価値や、五感の喜びに導き、また、どうすればそれが実現するのか、具体的に指南してくれます。

感性的価値をイメージする力が育つ

実際、美大にくる学生たちの多くは、カルチャー雑誌を読んでいます。
私も、高校生の頃、BRUTUSやPenなどのカルチャー雑誌で、インテリアや旅の特集などを見ては、こんな素敵なことが存在するのか、と知って感性を育てました。

雑誌で見た、素敵な部屋を真似て、手探りのDIYで、自作の飾り棚をつくったこともありました。
そして、大人になって一人暮らしをするようになったら、こんなデスク環境にしようとか、自炊するならこんなお皿が使いたいな、などと、未来の感性的喜びのイメージを持つようになりました。
カルチャー雑誌によって、さまざまな感性的価値を知り、イメージできるようになったのです。

今の時代であれば、ウェブマガジンを見たり、SNSで素敵なインフルエンサーを見つけても良いかもしれません。
そういったものに、一つ一つ出会い、知り、自ら楽しむことで、感性的価値を発想する力は磨かれていくのです。

◆目次
はじめに

ほとんどのビジネスパーソンはデザインが分からない

1章 デザインの誤解から抜け出す
センスは生まれながらの才能じゃない/センスにまつわる「3つの誤解」/デザインを多数決で決めるのは間違い/デザインの感じ方は人それぞれではない/オシャレ=いいデザインではない/いいデザインは「目的に合っている」/デザインが分からない人は実はそもそも「見ていない」デザインは言語化できる/デザインの意味は「外国語」のように理解すべし/アートとデザインはどう違う?

2章 そもそも、デザインとは何か?
なぜデザインは「分かりづらい」のか?/デザインの役割1 視覚から情報を伝える/デザインの役割2 感性的価値をつくる/デザインの役割3 人間中心で考える/デザインを経営に活かす方法/デザイン判断できるクリエイティブリーダーを目指す

3章 デザイン力を磨く新習慣
「美は細部に宿る」をマインドに叩き込む/知識のインプットでデザイン力は伸びる/真似こそがセンス磨きの一歩目/デザイナーに仕事を発注する時の3つのポイント/「ヤバい」「すごい」「カワイイ」で終わらせるのはやめなさい/合理的かどうか?だけで判断してはダメ/カルチャー雑誌を月に1回読む習慣をつくる/衣食住へのこだわりが全ての基本/デザインで幸せになる

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