ChatGPTでビジネス文書や企画書、スライドの作成を10倍速にするテクニック
効率化を求めてChatGPTをビジネス文書の作成に利用してみても、「結局自分でやったほうが早い」となっていませんか?
なかなか望む出力結果が出てこなかったり、そもそもどうやって指示をすればいいのか分からなかったり、その原因はさまざま。
ですが、正しい指示方法(プロンプト)が分かっていれば、あっという間に作業が終わるかもしれません。
今回は『10倍速で成果が出る!ChatGPTスゴ技大全』(翔泳社、武井一巳)から、ChatGPTでビジネス文書、企画書、プレゼン用スライドを作るための方法と、資料を要約する方法を紹介します。
事務部門──文書を作成する
ChatGPTの出現が画期的なのは、このテキスト生成AIという機能が多くの企業の仕事や業務に活かせる可能性がある点です。
世の中には実にさまざまな仕事がありますが、企業の仕事の中には文書作成やそれらに準ずる仕事が数多くあります。顧客に手紙やメールを送ったり、取引先にお知らせのメールや手紙を送ったりすることもあります。
営業部門なら製品のパンフレットを作ったり、製品の特徴をまとめたり、あるいは取引先に製品やサービスの売り込みを行うための文書を作成することもあるでしょう。毎日営業日誌を提出しなければならない、といった企業さえあります。
企画部門でも、新製品や新しいサービスを企画書にまとめたり、その企画を通すための会議用資料を作成したりするでしょう。経理部門では大半の業務が書類作成そのものになるかもしれません。営業から企画、広報、経理など、企業ではほとんどの部門で書類作成という業務が、仕事全体の多くの部分を占めています。
こうした書類や文書を作成するといった業務が、ChatGPTを利用すれば何倍もの効率を上げられる可能性があるのです。
“可能性”と書きましたが、ChatGPTを利用すれば必ず仕事が効率化する、わけではないからです。その最大の理由が、ChatGPTを利用してもなかなか思うようなテキストが生成されない、という点です。どうプロンプトを設定すればいいのか、どのように記述すればいいのか、会話をどう進めていけばいいのか、ChatGPTはまだ出たばかりのサービスですから、この最も重要な点が判然としないのです。
そこで、企業のさまざまな部門での書類作成にChatGPTのプロンプトをどのように指定すれば、希望に沿うテキストが生成できるのかを説明していきます。自分の関わる部門や業務には当てはまらない人も、プロンプトを自社や自身の部署に合わせて少し工夫するだけで応用できるはずです。
ビジネス文書を作成する
まず、最も簡単なのが、既に作成されている文書の一部を変更する作業です。たとえば会社独自の定型文書やひな型があったり、毎年似たような文書を作成したりするため、過去に作成したものがデータで残っている、というケースです。
こんなときは、定型文やひな型、データなどを添えて、文書の一部の言い回しを変えるように指示します。
たとえば、顧客に送る時候の挨拶。既にさまざまな定型文書が作成されているでしょう。その定型文書の言い回しを変更するだけで、季節や用途に合わせた文書に仕上げられるはずですが、どこをどう直せばいいのかわからないケースもあります。
あるいは、まだ定型文書やひな型が作成されていないところもあるでしょう。こんなときは、最初からChatGPTを使って文書を作成してしまえばいいのです。たとえば、次のようなやり取りになります。
ケース1:納品書を送るときの文書
これで納品書を送付するときの文書が作成できました。定型文やひな型がなく、最初から作成しようとすれば小一時間はかかるのではないでしょうか。それがChatGPTを使えば1分もかからず完成します。
もちろん、出力されたものは自社や製品などに合わせて手直しが必要になりますが、それでも大幅な効率化が可能なはずです。
既に作成されている文書がある場合は、その文書を活かし、時候の挨拶などの言い回しを変更するのもいいでしょう。既に作成されている文書の、時候の挨拶部分だけを変更してみます。
ケース2:季節に合わせて時候の挨拶の言い回しを変更する
特定の文章の言い回しを変更したり、自社に合わせて変更したりしたい部分などがあれば、その部分を指定して別のテキストに変更するよう指定すれば、ChatGPTは変更されたものを簡単に出力してくれます。
また、出力されたテキストを参照しながらチャットを繰り返すことで、より自然で洗練された文書に仕上げることもできます。ChatGPTの大きな特長のひとつであるチャット機能を活用することで、まるで部下に何度も書き直しをさせながら文書を完成させていくような作業が可能なのです。
文書の構成を考える
文書を作成したいときは、最初にその構成を考えます。仕事で必要な書類ですから、その目的やテーマは決まっているでしょう。そのテーマや目的に合わせ、どのような書類、文章を書けば伝えられるかを考えます。そのためには、まず文書全体の構成を考えることが必要なのです。
ChatGPTで文書の構成を考えるのは簡単です。作成したい書類をそのままChatGPTに入力してしまって構いません。たとえば、新しく開発した調理器具の販促用資料を作成してみましょう。
かなり詳しい構成とその概要を出力してくれました。販促用資料は、どのような製品でもだいたい似たような構成になるものです。ChatGPTが出力した構成もよくある販促資料の構成ですが、記述する内容としては過不足ないでしょう。
こうして出力された構成に沿って、今度は項目ごとに記述するテキストを作成していき、全体をひとまとめにして資料を完成させる、ということも可能になってきます。
ChatGPTを活用すれば、これまで1週間以上かかっていた資料作りも、わずか1~2日ほどで完成してしまうことさえあるわけです。ChatGPTによって、いかに仕事の効率を上げられるか実感できるはずです。
企画書のフォーマットを作る
ChatGPTでは既に作成されている文章を編集し、わかりやすく書き換えたり、文体を変更したりといったことは得意ですが、下記のように最初から文章を作成させる、つまり文字通りテキストを生成させることも、もちろん可能です。
ただし、役に立つテキストを生成させるためには、目的やその内容について、それなりに詳細に指定する必要があります。得たい文章を生成させるためには、1回の指定ですべて出力させるのではなく、ひとつひとつ命令を指定しながら、出力されたものに対してさらに命令を出す、といった操作を続け、試行錯誤していく作業が必要です。
例として、ChatGPTに新製品の企画を考えさせてみましょう。実は「新製品の企画を考えてください」とChatGPTに指定するだけでも、それなりの製品の企画を出力してくれました。
ChatGPTの説明によれば、出力した新製品の企画のアイデアは、市場の需要やトレンドに基づいたものだそうです。
もっとも、無料版のChatGPTは、GPT-3.5という言語モデルを基本としており、2021年9月までのデータを使って学習しているため、市場の需要やトレンドといっても、それなりに古いものです。
アイデアを示し、新製品の企画を考える
自社が開発する新製品の企画やアイデアは、自社がどのような分野の製品を開発しているのか、最近の動向はどうなっているのか、新しい企画や製品にはどのような特長があるのか、といった点もChatGPTに考えさせるためのデータとして必要になります。
たとえば、最近のネットのサービスの中で、X(旧Twitter)と同じようなSNSを作るとしたらどのようなサービスがいいのか、アイデアを出してみました。
ChatGPTが出力したアイデアが、そのまま製品やサービスになるわけではありませんが、ひとつのヒントとなることもあるでしょう。
こうしてChatGPTが出したアイデアのうち、この部分は別のこのように変更したいとか、売れる製品や流行るサービスのために、どこをどう変更すればいいのか、といった点を続けて指定することで、アイデアをブラッシュアップしていくこともできます。
ChatGPTはチャットが大きな特長です。ChatGPTが出力したものをそのまま使うのではなく、何度も会話のキャッチボールを行うことで、いわばコンピュータを相手とするブレインストーミングが可能なのです。
プレゼン用スライドの構成と内容
仕事にChatGPTを活かす方法のひとつに、プレゼン資料の作成があります。これまでの方法で、プレゼン資料など問題なく作れる、と考えているビジネスパーソンも少なくないはずです。
もちろんChatGPTがなくても、これまで通りの手順でプレゼン資料は作成できるでしょう。しかし、ChatGPTを利用すればその資料作りが、これまでの10倍も速く完成する、といったらどうでしょう。ChatGPTを利用するメリットは、まさにこの「仕事の効率化」という点に尽きるといっても過言ではないのです。
新製品やサービスなどを提案するとき、あるいは会社の紹介、取扱商品の紹介など、パワーポイントなどでプレゼン資料を作成することも多いでしょう。多くの場合、既にプレゼンの内容そのものは決まっていて、パワーポイントでどのような構成にし、どのようなスライドを作ればいいのか、といった点に頭を悩ませていたでしょう。
この作業は、「◯◯についてのプレゼンテーション用資料の構成を考えてください」などと指定すれば、次のように簡単にプレゼン資料の構成を生成してくれます。
プレゼン資料のスライドを作る
実際に出力された構成は、目的に合わせて手直しする必要があるでしょう。しかし、資料作りは大幅に省力化されたはずです。
書類だけでなく、この構成でパワーポイントのスライドを作成してみます。ただし、ChatGPTそのものはスライドを作成できないので、どのようなスライドが必要なのかを聞いてみました。
10枚分のスライドの候補とその内容が回答されました。これを参考に、スライドの内容やキャプションなどを決めていきます。
最終的に出力されたスライドの内容に合わせ、後述する画像生成AIなどを利用して、スライドそのものを作成してしまえば、これでプレゼン資料の完成です。従来の方法と比べても、大幅な効率化が可能でしょう。
資料を要約する
新製品の企画を考えたり、営業戦略を練ったり、あるいは経営方針を考えたり、企業ではさまざまな書類を作成する必要があります。これらの書類を作成するとき、事前の準備として資料やデータを読むことも多いでしょう。
最近はこれらのデータや資料が、そのまま電子的なデータとして保存されていたり、あるいはネットに掲載されていたりすることも多くなりましたが、データとして手元にあれば、ChatGPTを利用して資料を要約させることも簡単にできます。
必要なのは、ChatGPTに要約させる資料だけです。この資料をプロンプトに貼り付けて要約するよう指定すれば、ChatGPTが資料の内容を読み、要約してくれます。
なお、要約させるときは「500字以内で」「200字から600字以内で」と
いう文字数制限を加えておくといいでしょう。ChatGPTは指定した文字
数を厳密には守ってくれませんが、おおよそ指定した文字数で要約を出力
してくれます。
なお、ChatGPTのプロンプトで指定できるのは、無料版では漢字を含む日本語で2,000〜4,000文字程度です。あまり長いデータなどは読み込めませんから、何回かに分けて指定する必要があります。
海外資料を翻訳して要約する
日本語の資料や文献なら、ざっと流し読みをして要点をまとめることは苦にならない人もいるでしょう。
では、海外の資料はどうでしょう。英語の文献や中国語のニュース記事、あるいはフランス語やスペイン語で書かれた文献はどうでしょう。語学に堪能な人でも、4カ国語や5カ国語を自由自在に操れる人は稀です。
ところがChatGPTを活用すれば、それも可能なのです。外国語で書かれた記事を要約したところで、その要約を読むことに苦労する……。心配いりません。海外の文献やデータ、ニュースなどは、プロンプトにデータを貼り付け、要約させ、日本語に翻訳させて出力させればいいのです。これなら日本語の要約文を読むだけで、おおもとの海外の文献やニュースの要点を把握できます。
プロンプトでは、次のように指定するだけです。
「以下のテキストを500字で要約し、日本語に翻訳して表示してください。」
本書『10倍速で成果が出る!ChatGPTスゴ技大全』ではプロンプトを工夫する方法を解説していますので、ここまで紹介したテクニックをそのまま利用するだけでなく、より望ましい出力結果を得られるようにアレンジもしてみてください。
また、ChatGPTを使ってプログラミングをする方法、Excelの作業を自動化する方法、リスキリングに活用する方法なども紹介しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?