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SHODENSHA COMICS通信 6月号~編集部員たちが何度も読み返した”灯台本”

こんにちは。SHODENSHA COMICS編集部です。

先日、NODA・MAPの新作公演『兎、波を走る』を観劇してきました。これがかなりくらってしまいまして、観たのは数日前なのにいまだに内容を引きずっています。

冒頭のポップなシーンに散りばめられていたいくつもの伏線が、次第にひとつのところへ向かって収束されていき、物語の主題や、比喩として使われていた言葉の意味をすべて理解できた瞬間、衝撃と、感動と、怒りと、悲しみで胸がいっぱいになり、涙が止まりませんでした。

東京公演はチケットも完売していて、当日券も長蛇の列だったので、人におすすめするのが難しくはあるのですが、みんな見てくれ…という気持ちでいっぱいです。



編集部員たちの日常や裏話をゆる~くお届けするマガジン『SHODENSHA COMICS通信』。

今月は編集部員たちの「灯台本」をご紹介します。「灯台本」というのは、心の港を照らすようにいつも心の真ん中にあって、ふとしたとき、立ち返るように何度も何度も読み返す本のことです(編集長・山田が命名してくれました)。

実はすごく難しいテーマ…。みんな頭を抱えながら、締切ギリギリまで粘って考えてくださいました。それではどうぞ。

※敬称略


『風はおまえをわすれない』森忠明|編集長・山田の”灯台本”

  子供の頃、自分はいつも誰かに忘れられているような気がしてました。
10歳の時に兄の部屋でこの本をみつけて、翌日の学校でこっそり読みました。普段はそんなことしていなかったのに何故かそうしました。漫画ばかり読んでいた私が、初めて文学に触れたように感じた作品です。
 それから森さんの本を読めるだけ読みました。『きみはサヨナラ族か』も同じくらい心に刻まれている作品です。高校生の頃、ふと読み返したくなり学校の図書館にいったのですが蔵書がなく、念のため司書の方に確認すると、ここにはないけど私物がある、と個人的に貸してくれました。
 読み終えて返しに行くと「本はあるべき人のもとにあるものだから」と言って、そのまま私にくれました。この出来事すべてが森さんの小説のようでした。以来、人に本を贈るたびにこの言葉を思い出します。(山田)

『源氏物語』紫式部|編集部員・齋藤の”灯台本”

 何度も読み返した本はたくさんありますが、『源氏物語』は多くの文筆家により翻訳や再解釈がなされています。同じ『源氏物語』でも様々な作品を読むことができ、いつまで経っても飽きません。
 個人的なおすすめは瀬戸内寂聴訳の『源氏物語』です。原文に忠実ながら柔らかな文体で読みやすく、世界観にどっぷり浸ることができます。古典の現代語訳では珍しく敬語でつづられており、瀬戸内寂聴さんならではの美しい日本語を堪能したい方におすすめです。(齋藤)

『カードキャプターさくら』CLAMP|編集部員・上代の”灯台本”

 もはや何周読んだかわからない、私にとってのバイブル的な作品です。就活&転職活動中は、お守り代わりに単行本を鞄に忍ばせていました…。
 中でも特に好きなエピソードは夏休みに別荘へ行く回(単行本5巻1話目に収録)。主人公のさくらは旅先でおじいさんと出会うのですが、彼にはある秘密があり…というお話です。小学生の頃、初めて読んだ時はラストの展開にとても感動したのを覚えていますが、今読み返すと、登場する大人たち一人一人に感情移入して、別の切り口から物語を味わうことができました。
 人生の中で大切な人との関係がこじれてしまうこともある。でも相手を想う気持ちさえあれば、時間がかかってもいつかお互いを認め合える日が来るはず……そんな大切なことを教わったエピソードです。
 家にある単行本は年季が入っていて表紙も色あせていますが、思い出が詰まっているので一生手放せません!(上代)

『僕等がいた』小畑友紀|編集部員・川端の”灯台本”

 いわば詩のような、リズムと意味の美しさを両方持っている言葉が好きです。津田雅美先生の『彼氏彼女の事情』とどちらを選ぶかかなり悩んだのですが、出会ったタイミングが少しだけ早い『僕等がいた』にしました。
 最終話ラストの「どうかあなたにとっても 思い出はいつもやさしくありますように」というモノローグ、というかもはや詩が大好きです。中学生の頃から何度も何度も、撫でるように読み返しています。
 決してすべてがハッピーな物語ではないし、むしろ中盤から終盤にかけて苦しい展開がてんこ盛りなのですが、だからこそ、その中で紡がれるやさしい言葉が一層光って見えて、まっすぐに心に届くのだと思います。
 子供も、大人も、人はみんな間違えながら生きていくのだということを最初に教えてくれた大切な作品です。今気づいたけれど、私もうとっくに矢野と高橋の歳を追い越してるんだな…。(川端)


「読み返す」という行為に、それぞれが持っている理由が絶妙に違うのがすごく面白いなと思いました。

本に紐づいている記憶ごと愛しているからだったり、同じ本を異なる作家さんたちの解釈を通して何度も味わいたいからだったり、学校では教えてくれない大切なことを教えてくれた”人生の教科書”だったからであったり、その本に出てくる言葉を愛しているからだったり…。

同じ本を読み返すって、実はとてもすごいことだと私は思っています。理由はばらばらでも、そんな尊い行為をしている人がこの世界にはたくさんいるのだな、と改めて思うとすごく嬉しい気持ちになりました。何度も読み返される作品を私たちも作っていきたいものです…。



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■vol.1

▼編集後記

■vol.2

▼編集後記



SHODENSHA COMICS通信、次回もお楽しみに!



(文・イラスト 川端)


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