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『その他の外国文学』の翻訳者

白水社編集部・編「『その他の外国文学』の翻訳者」を読んだ。ヘブライ語やチベット語など、本棚における「その他の外国文学」にラインナップされるマイナー言語を取り扱う9人の翻訳家たちのインタビュー。

帯にもある通り、教材がない、辞書がない、あっても20年前に1冊出ているのみ、仲間がいない、といった中で文学の翻訳を切り拓いてきたさまを描く。とてもいいですね。

翻訳家としてのキャリアの描き方は人それぞれだが、いかんせんマイナー言語であるということは経済圏も大きくないということで、彼ら/彼女らが自身の商いを成立させるためのマルチな動きに共通点があって面白い。

映画の翻訳をし、大学で教え、大使館でドキュメントの翻訳をする。そんな中で、出版社による翻訳が決まる前に自分が気になった文学の翻訳は進めておき、企画書をしたためる。数少ない先達には手紙を出して、そこからネットワークが生まれる。

ありとあらゆる選択肢がない・恵まれていない、からこそこうした選択肢を取るのだろうけど、これってどんな環境・フィールドにおいても必要な動き・マインドセットですよねと感じました。

僕はマイナー言語の翻訳そのものに関心があるわけではない。また、今はDeepLだったりchatGPTだったり、ざっくりとした翻訳行為そのもののハードルはめちゃくちゃ下がっている。

そんな中で、1人のアマチュア・アカデミア学徒(建築・都市計画界隈)として、そのフィールドで日本語以外で書かれた文章の翻訳はコツコツやったりしているのであります。

自分が今、大学のフィールド・コミュニティに所属していないからだと思うのだけど、研究領域・それに伴う翻訳とか、これだけ技術が発展しても仲間がいないんですよね。見当たらない

ただ、そんな状況にどうこう言うことなく、自分がやるべきことは引き続き興味・関心のアンテナを張って、純粋に楽しみ続け、企画書をしたため、手紙を出していくことだなと感じたのであります。

また、日本語+もうひとつの言語だけでなくて、更にもうひとつの合計3言語を身に付けることで本当の意味で世界が多面的に見えるというさまも、本の中で描かれる何人かから感じられ、このモチベーションも湧きました。

そういった勇気をもらえる本。

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