往復書簡 第5便「社会的信頼について」(往信:タムラ)
内田先生、こんにちは。
往復書簡を通しての卒後教育、ほんとうにありがとうございます。
あまり間を開けずに、わたしの思い付くペースでメールをお送りしており、お忙しい中恐れ入ります。
今回の質問は、「信頼」とくに「社会的信頼」についてです。
例えば、今組織で働いている人が、自分の資質や特性に気がついて、“どうやら組織に属さず、個人で仕事をする働き方のほうが自分に合っているようだ”と思い至ったとします。
そこから、将来を短期的に、あるいは長期的に、自分の視点で検証して、展望を描いて、“こんなふうに暮らしてこんな仕事をして、こんな働き方ができたらいいな”と、イメージが具体的になってきたころ、ふと思うことがありました。
“自分ひとりで仕事をして、果たして社会的な信頼って得られるんだろうか…?”
“やっぱり会社とか組織に属していないと、仕事をしていても、社会から信頼してもらえないかもしれない…”
そんなことが、頭の中をよぎったのです。
わたし自身に置き換えて考えると、組織以外で仕事をした経験がない身としては、似たようなことが頭をよぎり、心臓の裏あたりにうっすら冷ややかな風がすぅー…っと抜けるのを感じつつ、「そもそも、社会的な信頼って何だろう?」と思いました。
今のわたしが持っている「社会的な信頼」として、パッと頭に浮かぶイメージは、「世間に自分の所属を示したときに、ある程度の人が認知している状態」なのですが、それはなんとなく「信頼」とはちょっと違う気もしています。
それに加えて、じぶんの周りの人を思い起こしてみると、個人や数人のチームでお仕事や活動をしている人との関わりの密度が高いし、先に書いた「世間に自分の所属を示したときに、ある程度の人が認知している状態」との齟齬がある。
もう少し言えば、自分の中にある「世間に自分の所属を示したときに、ある程度の人が認知している状態」という「社会的な信頼」のイメージを、自分が信頼していないかもしれません。
そして、自分自身が心身をすこやかに、ごきげんに生きていくために、組織に属しているかや個人なのかどうかに拘わらず、「社会」という人間の集合体や共同体に信頼したいし、猜疑心や疑念の割合を減らしたいとも思っています。
こんなわたしに、これからの社会を生きていくヒントを、教えていただければありがたいです。
よろしくお願いいたします。
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