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3高の男性は今も結婚に有利らしいという話

数年前、某バラエティ番組で胡乱な(失礼)心理学者が「どのような男性・女性が結婚しやすいか」という研究の結果を紹介していた。その口頭の紹介内容から推測するに、おそらくこの論文のことだと思われる。

小林盾,能智千恵子(2016)「婚活における結婚の規定要因はなにか」『理論と方法』31巻1号

こちらはオープンアクセスとなっているため、ネット環境のある人ならば誰でも読むことが可能である。

この研究は四国にある某結婚支援センター(論文ではどの機関かきちんと名称が記されている)のデータを利用したもので、センターのお見合い斡旋事業が始まってから調査時点(最大1,584日)までのお見合い事業登録者が対象である。そのなかで成婚カップルを含むそれぞれの登録者の情報などが(イベント・ヒストリー)分析されている。標本はこれまでに登録したすべての登録者であり、属性情報のない1名を除いた4,779名(男性2,238名、女性2,541名)となっている。
なお登録条件は20歳以上の独身者であり、県内在住でなくても参加可能である。

社会学を齧った程度のシロートの解説などあまり意味がないと思うので結果だけ紹介しよう。調査詳細について、また結果や分析の詳細について関心のある方は上記の論文を確認していただきたい。難しい専門用語も含まれるが、結果だけなら知ることは可能である。

この論文の「人びとが婚活をするときに、なにが結婚を促し、なにが阻害するのか」という問いに対し、分析から明らかになったことを挙げよう。身長や年収などのいくつかの変数において、成婚に結びつくとして有意(=統計上、偶然ではなく必然である可能性があると推測されることをいう。『デジタル大辞泉』)とされたものとは……

まず男性・女性ともに年齢が若いほど結婚しやすく、年齢が10歳上がると結婚できる確率が男性なら0.63倍、女性なら0.55倍になってしまうという。かつてから女性は歳を重ねると結婚しづらいと言われてきた。しかしこれも近年指摘されてきたが、男性も女性ほどではないにせよ結構な阻害要因になっている。これをして男女ともに「結婚したいなら婚活は早めに始めるべき」という結論に至っている。

この時点で吐血してらっしゃる方もいるかもしれないがご安心を。このエントリを書いてる本人もいい歳して独身である(関係ない)。

次に男性の3高(高身長・高収入・高学歴)はまだ影響力があるのか問題について。実はこれはいずれも有意であり、男性は身長が10センチ高いと1.25倍、学歴が4年上がると1.38倍、年収が100万円高いと1.13倍という調査結果が出た。

身長はそこまで大事なのだろうか……? などと思ってしまうが、こればっかりは個人の好みの問題かもしれない。お見合い相手を検索する際に身長で篩にかけているのだろう。そして年収はもっと効果があるのかと思ったらそこまでだなぁという印象である。これが四国某県でなく都心近くならまた別の結果になるに違いない。

なお女性は上記3項目において統計的な差はなかった。

他にも有意とされている条件がいくつか紹介されているものの、ここでは割愛している。ただそれを含めても女性が結婚しやすくなる・しにくくなる要因はあまり見当たらず、女性が結婚したいならとにかく出会いの機会を増やす必要があるとされている。

このエントリでは他の要因の結果やサンプルについての詳細を書いていない。繰り返すが詳しくは本文を参照されたし。

押さえておくことは、これが主に四国某県で行われているサービスであるということ。またあくまで登録情報からの分析であるということだろうか。

「女性の結婚に重要なのはルックスだ。容姿に関する調査はないのか?」というご意見もあることだろう。それについての言及ももちろんあるのだが、これについては仲介ボランティアのコメントを紹介するに留まっている。外見が恋愛や結婚にもたらすものの研究もあるわけだが、それはまた今度ということで。

しかし外見の善し悪しは数値化できないし、仮にできたとしてもそれを登録時に書けというのも酷な気がする。女性の外見要素として体重が軽かったら結婚しやすいだとか、胸のサイズが小さいと結婚に結びつきにくいだとか、一応理論上は調査可能だろう。だが自分で書いていて思うがさすがにそれはゲスい。こんなことハイスペック限定の婚活アプリでも許されないだろう(だよ、ね?)。そもそも身長が低いことをコンプレックスに思っている男性も多いわけで、こういう人たちも外見で選り好みされて結構つらいのではなかろうか。

かつて「もてもてナインティナイン」というお見合い番組があった。そこでは(婚活パーティーなどの回で)毎回参加者のなかで特に美男美女に注目して放送されている印象があったように思う。それを見ていると「やっぱり容姿は大事」と考えてしまう。しかし前述のボランティアのコメントもそうだが、私の周囲の既婚者の意見を聞いてみても「外見はいいほうがよいが、よければいいとは言えない」と結論づけるしかないようにも思う。要するにわからないのである。

風采もウダツも上がらない私にはほとんどフィクションの世界だが、都心などの成功者が集まる婚活イベントでははっきり男性の年収と女性の美貌が重要になるという。しかしここまで極端な世界の住民はひと握りだろうし、あえて踏み込むこともない。

女の子の恋愛相談(というか相手が勝手に話していく場合も多々ある)を受けていて日々思うのが、心を燃やして大恋愛した子たちが失恋した後、急激に恋愛の好みが変わっていることがままあるように思うこと。それも一時的な話ではなく、である。いや、男だってそうだろう。この時「外見に求める比率が下がっている」気がするのだ。

私もいい歳のせいか美人を見てもまるきり興味を示さないことが多い(相手にもされていないが)。だが逆に全然美人じゃない女の子のことが気になって気になって仕方ないということもある。

まあなにを言っても一般化できないだろう。私のしょーもない考察はともかく、今回紹介した論文はおもしろいのでぜひご一読を。

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