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美男美女は結婚や出世に有利なのかという話

いつかも話した通り、容姿の良し悪しを客観的に数値化することは不可能である。

また現代日本で絶世の美女と呼ばれている人の顔やスタイルが、100年後も(それぐらいのスパンならある程度は評価されそうだが)美のトップに君臨するものとはさすがに思えない。

しかし「美人は得か?」は永遠のテーマであり、これは恋愛や結婚を語る上で避けて通れないテーマだろう。

そこで今回紹介するのはこちらの論文である。

小林盾,谷本奈穂(2016)「容姿と社会的不平等」『成蹊大学文学部紀要』第51号

小林盾氏の論文はこれまで何度も紹介しているが、谷本奈穂氏のそれは初めてかもしれない。


(なお谷本奈穂氏といえば『恋愛の社会学』が知られる。この本は雑誌記事の分析から世代ごとの恋愛の特徴について研究しており、とても面白い。おすすめである。)


さて、この論文は人の容姿がキャリア形成や(結婚・)家族形成、心理にどのような影響をもたらしているかを調べたものである。

「2015年暮らしについての西東京市民調査」(2015年6〜9月成蹊大学社会調査士課程実施。ランダムサンプリングによる郵送調査)をもとにしており、母集団は西東京市在住の22〜69歳個人約12万人。有効標本サイズ488人、有効回収数297人、有効回収率60.9%。このうち容姿について回答した276人が対象となっている。

容姿は主観で判断してもらい、現在と20歳時の容姿(特に顔)を1〜10(大きいほど容姿が良い)で判断してもらっている。なおパイロット調査では5段階や11段階評価も行われたが、10段階評価が最も他者評価の平均と相関していたとのことである。

結果について(本記事では心理についての項目など一部割愛しているため、関心のある方は上記論文を参照されたし)、容姿の平均点は20歳時で5.8(男性5.7、女性6.0)、現在で5.0(男性5.0、女性5.1)である。若い頃の方が容姿の点数は高くつけているということだろう。
参考までに20歳時の点数は5点が32.2%と最も高く、次は7点の19.6%、次が8点の14.5%となっている。

7点もあれば十分美系じゃないか。日本は美男美女が多いなぁ(遠い目)※個人の感想です。


これらを性別、20歳時の容姿(1〜3、4、5、6、7、8〜10に分割)ごとに、有職/無職、正規職/非正規職、役職(課長以上)、等価所得(いわば手取り収入)、告白した人数、告白された人数、交際人数、結婚人数、子ども人数などの項目で比較している(繰り返すが、本論では満足度などの心理項目ほか、ホワイトカラー/ブルーカラーなど他にもさまざまな項目が含まれている)。

結果を見ると一目瞭然だが、役職(課長以上)につく可能性は容姿のよさで有意に高まっている。男性は容姿1〜3で役職の人が6.3%だが、次に役職比率が低い6点でも33.3%である。女性は容姿1〜3、4で役職0%。次に低い5点で2.6%だった(ご想像の通り、女性の役職比率は最も高い8〜10点でも11.1%と押し並べて低い)。

このことから20歳時容姿が1ランク上がると、男性は1.4倍、女性は1.7倍課長以上になりやすいとのことである。

なお、男性は等価所得も有意に上昇しており、1ランク上がると35万円増えている。

では家族形成はどうか。20歳時容姿がよい人ほど、告白された人数、交際人数、結婚人数、子どもの数が有意に増えたという(1ランク上がると交際人数は男性で0.3人、女性で0.2人多くなる)。


いやー、夢も希望もない(泣)しかし調査人数がそこまで多くないこと、あくまで主観による容姿点数ということは押さえておこう(20歳の時の容姿を美化している可能性あり)。そう思いたい。

(※大事なことなので何度も繰り返すが、ここでは心理面等に触れていない)

やはり美男美女は出世や交際・結婚に有利なのか(男性は年収も)。もちろん他にも国内外で容姿と結婚の関係を調査しているものはあり、必ずしも結論のすべてが一致しているわけではない。逆に言えば一致している部分も多いということになるが。

ただこの研究や他のそれも指摘している通り、容姿の影響を受けやすいのは女性より男性である。これも簡単な話である。

まちを歩くと綺麗な女性ばかり。男性と違い女性は美のインフレ状態で容姿ランクの差がつきづらいのだろう。女性はメイクやファッションなど、美容に力を入れなければならないという圧力が強い。それが女性の生きづらさに繋がっている側面も否定できないだろうが。

(※ただ美容に力を入れることをネガティブにしか捉えられないわけでもないことは指摘しておきたい。私も若い頃ファッションや美容などに力を入れていたことがあるが、あの頃が一番人生にハリがあったし、お洒落することだけでも毎日が楽しかった)

一方、男性は女性と比較して美容にほとんど力を入れていないと言っていい。そのため一部の美容に力を入れている男性たちは、容姿のよさで他の男性を凌駕し、結婚も出世もしやすくなるのだろう。
余談だが、心理学の実験でルックスが人に与える影響を調べる時、同じ人物にファッションやメイクで印象を変えてもらうことが多いらしいが、これで結構数字は変わるようだ。

ただ容姿のよさがそこまで出世や給与に影響を与えるのか、個人の心証で言えばまだよくわからない。これらの研究は今後も続いていくはずなので、それに期待したい。

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