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付き合った人数が多いと結婚は難しくなるのかという話


『ソーシャル・キャピタルと格差社会 幸福の計量社会学』辻竜平、佐藤嘉倫編(東京大学出版会 2014)

この本の第5章に「結婚とソーシャル・キャピタル 何人と恋愛すれば結婚できるのか」(小林盾著)という論文がある。

以前、同氏らの論文の中に「中卒・高卒だと交際した人数が多ければ多いほど結婚できる確率が増えるが、短大卒・大卒だと交際した人数が2.7人までは結婚できる確率が増えてそれ以降は減っていく」といった一文を見かけ、今回はその出典を辿ってみた次第である。

データとして用いられたのは2011年9月に実施された郵送調査「東京子育て支援調査」である。母集団は東京都在住の25-54歳の男女で、ランダムサンプリングされ、有効回収率1,230人、有効回収率51.0%とのこと。ここから欠損値のなかった1,058人(男性46.2%、女性53.8%、平均年齢39.4%、中卒者1.5%、高卒者38.1%、短大卒者12.3%、大卒者43.2%、院卒者4.9%、既婚者68.7%、未婚者31.3%)を用い、学歴やこれまでの交際人数から(ロジスティック回帰)分析が行われたとのこと。

結果の数字は著者が方方で触れていたため知っていたが、それはどのような分析が行われた結果なのか、調査のサンプルはどのようなものだったかがずっと気になっていた。なるほど東京の調査だったのか。詳しい調査内容については本書を参照していただきたい。

一番気になったのが交際経験ゼロの男性の結婚経験率が低いこと。データの数がそこまで多くないし、実感としてわからないでもないのだが、女性と比較してここまで差が開くものなのかと。

そしてやはりこれも言及されているが、結婚した後のことに触れていないのには思うところがあった。ひとつの論文にそこまで盛り込むのは無茶だと思うが、「結婚すれば幸せ」とは必ずしもならない事実だけは踏まえておく必要があるだろう。

この章に限らず、ソーシャル・キャピタルの負の側面にも着目しているのが本書の面白いところである(まだ最後まで読んでいないが)。この分野はあまり関心を持ってこなかったが、見えない「格差」の存在が可視化されるようで少しつらいものがある。

最後に余談。本文中に現れる「婚約者候補」という言葉に少し笑ってしまった。

かつてステディな相手のいないある男友達が、仲のいい女性のことを「彼女候補」と呼んでいて溜め息を漏らしたことがある。彼女候補ってなんやねん、と。現実をギャルゲーといっしょくたにしているから彼女ができないんじゃないの?(ギャルゲーやったことないけど)。

しかしネットを開くと匿名の女性と思しき人物が当たり前のように「彼氏候補」という言葉を用いていて、今はそんなものなのかなと思い直したことがある。
この論文の趣旨を思えば「婚約者候補」という呼び方は妥当だと思ったわけであるが。

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