見出し画像

日本経済再生へ? 家庭と会社の狭間で

・低迷する日本経済

日本経済の低迷が叫ばれて久しい。やれ記録的物価高に賃上げが追い付かず生活が苦しいだの、やれ世界のトップ50企業に日系企業は1社しかないだの、その手のニュースを見ない日はない。ほんの少し前は「デフレ脱却!」が日々叫ばれていたが、それを(要因はどうあれ)「達成した」のに全く喧しいものだとも思うこともある。が、とにかく日本経済は「低迷している」と言って差し支えはあるまい。日銀はセオリーにのっとり金利をずっと下げ止まったままにしているが、それでもなかなか回復する様相を呈しておらず、それが少子化の一因であるとも言われている。
その要因は何か。専門家による考察があまた出ているが、そのうちの一つが日本人の「消費性向の低さ」であるらしい。

消費性向の低さ、とは「貯蓄性向の高さ」とも言い換えられる。要するに日本人は「所得をため込んでばかりいて、なかなか使わない」傾向にあるということで、実際それが事実のようだ。

消費に回らない強制貯蓄70兆円 ~貯蓄率上昇をどう理解するか~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

消費性向が低いと、政府は金融政策・財政政策の効果も弱くなり商売あがったり状態になる。コロナ禍が始まった2020年、政府は全日本人に10万円の「特定定額給付金」を配ったが、これがなかなか消費を喚起せず、むしろ貯蓄に回されてしまったことを麻生(当時)副総理がボヤいていたことは記憶に新しい(無論衣食住をはじめ消費に使った方もいらっしゃるのだろうが)。

これは日本人の気質とも言えるのだろう。常に「何かあったらどうする」と先のことを心配し、「いざ」に備える。大多数の日本人は、「過度の貯蓄」が日本経済のためには「良くない」ということは頭ではわかっているはずだ。しかし毎日流れてくる悲観的なニュースを見るにつけ、つい欲しいものでもガマンガマン!!となるのはいたしかたないことなのかもしれない。(元陸上選手の為末大氏が、この気質を否定的にとらえた記事を書いている。下記参照ください。)
なにかあったらどうするんだ症候群とその対処法|Dai Tamesue 為末大|note

もちろんこれは悪いことではない。時には慎重な行動が自らを助く。ただなんにせよ「過ぎたるは及ばざるがごとし」だ。そうした現状を見越してか、日本では22年度からは高校の家庭科で投資が教えられている。稼いだお金を眠らせず動かさせるように仕向けること。それが日本経済復活の一助となるのかもしれない(もちろんそれだけでは無理なのだろうが)。

・企業の使命

ところが、である。私はこれがそう簡単にはうまく行かないのでは、と思っている。彼らの「日常」にその要因を見て取っている。
言うまでもないが、成人の大半は主に会社で仕事をしている。リタイアした高齢者の方々も、大半は会社員だった。会社では何をするか。何が求められるか。
企業は絶えず「利益」を出し続けなければならない。赤字の会社は世間に対し資材、人材を浪費していると見なされることもあり、厳しい言い方をする経営者は「赤字は犯罪だ!」などと言う人もいる。
利益がなければ国に対して法人税を納めることもできない。株主に対して配当を支払うこともできない。すると企業の存続意義を問われることになる。
ではどうすれば利益が出るのか?損益計算書をみれば単純な話、

利益=収益ー費用

である。つまりは利益を出すには収益を増やすか費用を減らすか、それしかない。

かくして日本中の会社員らは日々「コスト削減!」にいそしむことになる。競札による材料費削減やら合理化による労務費削減やらをはじめ、紙1枚のコピー代、福利厚生によるコーヒー代、昼休みの電気代に至るまで、(無論会社によって千差万別だろうが)1円でも費用を削減するべく彼らは日々奮闘している。
まことに世知辛いようだが、しかし会社員らにとっても悪い話ではない。利益が増えれば翌年度の自分の給料が上がる可能性が増える。今日は私もムダな付き合い残業は止めてそそくさに失礼し、ウチでこれを書いているというわけだ。

・ウチと会社のギャップはいかに

当たり前だが、家計にステークホルダーなどいないのだから、仮に家計簿が赤字でも問題はない。日本経済のためにも使うべきは使うべし、というべきだろう。しかし彼らは日常絶え間なく「コスト削減」にいそしんでいる人種である。家と会社でガラっと頭を切り替える必要があるのではないか。会社の論理を家に持ち帰ってはいけない。としたら、かなり困難なことであると想像する。いかんせん「同一人物」なのだから。

ただ私が思い返すに、会社と会社外では「全く違う顔」を見せる同僚や先輩にも会ったことがある。私も「え!あーた休日そんなことしてるの!意外!」と言われたことは何度かある。会社と家では別の理論が働くとしたら、別の顔になってみるのも2つの人生を生きているようでどこか面白い。「ワーク・ライフ・バランス」なんてのも案外、合理的なのかもしれない。
私が次にデカい金を注ぎ込むのは海外旅行の予定である。ここらへんには妻が寛容でよかった。あとはいつ休みが取れるか、会社との駆け引きをがんばらねばならんな。


この記事が参加している募集

#お金について考える

37,613件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?