美しい鶴を折るには

1.
久しぶりにオフィスに出社すると朝礼が一番楽しかった。
同僚たちがテレワーク中に観たNETFLIXの新作ドラマの話や断捨離してた話、今まで普通にやれていたことが今やりたいことだったりする話を直接聞くことはとても新鮮で気持ちのよいものだった。
買い物の話も面白かったし、子供が覚えた新しい口ぐせの話もなかなかだった。

仕事が始まると昨日までと同じようにノートパソコンの前でぶつぶつと独り言を言いつつひとつずつ仕事を進めていった。まだまだ今まで通りとはいかなかったものの、僕くらいのごくごく普通の人間のごくごく普通の世界であっても、多くの人や空間がデザインを求めていた。仕事は数もカタチも変えたがそのいくつかの仕事は春の山菜のように新しい生命を感じるものだった。

午後に新しいクライアントの打ち合わせが入り(だいたい前もって決まっていることはなく)オンラインミーティングに参加した。新しいサービスに使うデザインの依頼だった。あらゆる未熟な土地がそうであるように荒野を開墾し街を作り人々が暮らせるようインフラを整えるまである一定の時間がかかり、僕のデザインもそれなりの必要工程時間があった。
なるだけクライアントの希望に沿えるようにするわけだが、最初にここを伝えておくだけで仕上がりは大きく変わっていった。折り鶴は最初のひと折りがほんの少しズレるだけでいびつな鶴となるのだ。

自販機でコーラを買ってひとり休憩室で飲んでいると携帯が2度揺れた。
忘れていたはずのデスク周りがイメージとなり瞬間的に頭をよぎる。さあ新しい仕事だ。

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