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雨時計と森と男たち 最終回

彼女の周りでは4つの季節が積み木のように重なり不思議なカタチとなっていた。

ウッドデッキに座った彼女は読み終わった手紙を封筒に戻し2本目のビールを開けた。口の中からはビールのにがい味がしている。

橋の向こう側から吹く風は鉄橋に当たり1人の人間となった。彼女は時折くるさびしくてたまらない夜に林の中でそっと彼と会っていた。
そろそろだと思う。
あの鉄橋から訪れるのは心だということは分かっていた。

心から送られた手紙の文字は余った風に乗って高くあがり雨粒に変わり私の体にあたり、届く。

目を開けると庭に溜まった松葉の灰を踏んだ心がいる。目の前に。

〈了〉



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