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大人になるのっていつなんだろ # 明け方の若者たち/カツセマサヒコを読んで



カツセマサヒコさん著『明け方の若者たち』を読みました。




著者のカツセさん、WEBライターさんなのですが、いつからかわからないくらいの期間、私のTwitterのTLにいる方です。




最初はこんな感じにほぼ妄想下ネタツイートの人だった気がするんですけど(怒られそう)、「夢がまたひとつ叶いました!!やったー!!!拡散して!!!」とTLと仰っていることがだんだんと増えていき。気がついたら小説家デビューしていて、あれよあれよという間に映画化を決めておられました。


じわじわと夢を叶えていく様を数年間の日常のなかで何気なく見守ってきたことで、不思議なことに他人だけど他人事じゃない感じがあり、この本はなんとなく持っておいたほうがいいような気がして、しっかり初版を購入したのでした。出版から1年も経過してしまったけど、改めて感想を書いておこうと思います。


※ネタバレ含みます※




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あらすじ

大学4年生の主人公『僕』は、大企業に内定が決まった学生だけが参加していた”勝ち組飲み”で『彼女』に出会う。つまらなそうに席を立った彼女から届いた「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」という1通のメールから、沼のような恋が始まる。

明大前の小さな公園。下北沢のビレバンでの待ち合わせ。IKEAデート。フジロックに対抗して旅した夏の日。愛し合った最高の夜。何気ない日常が彼女色に染まり、かけがえのない日々を過ごしていく。


一方、社会人になり、「クリエイティブな仕事がしたい」と言って入社を決めた印刷会社で『僕』が配属されたのは、総務部だった。夢見ていた世界とはかけ離れた自分や、徐々に変化する彼女との日常に打ちのめされる日々。親友と酒を飲み、夢を語り合いながら、こんなはずじゃなかった現実と向き合って生きていく。


学生と大人の境目みたいな『人生のマジックアワー』を描いた作品。


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感想



甘いミルクチョコレートだと思って食べたら、カカオ82%のビターチョコレートだった、みたいな感情にさせられました。作者お得意の”男の夢の詰まったラブストーリー”なのかと思いきや、一味違った(はっきりとしたカツセさん色を感じたところもたくさんあったけど)。



苦くて、儚くて、かっこわるくて、でも大切な、青春の物語でした。

この小説では、主人公の大学4年生から社会人5年目になるまでの期間が描かれていて、購入当時ちょうど社会人4年目だった私としては、かなりタイムリーな時期のお話で、読みながらちょっとした共感性羞恥心みたいなものを感じてしまいました。


主人公が社会人になってからの「望んだのはこんな人生だったっけ」みたいな感覚、お恥ずかしながら、社会人5年目になった今もまだ理解できてしまいます。


子どもの頃は何かになれるような気がしていたけど、結局何者にもなれなかった自分。周りの友達は結婚して好きな人の奥さんになったり、起業してやりたいこと始めていたりと、ちゃんと人生を進んでいる奴もいて。私は本当にこのままでいいのか、とか考えてみたりしながらも、特に何も行動せずに時の流れに身を任せているだけで。


こういうことに諦めがつくのって、一体いつなんでしょうね。諦め、つくものなのかな。つかないまま、動いたり、止まったりしながら大人になっていくのかな。てか大人になるってどういうことなんだ。


そんなことをぼんやり思う一方で、主人公の親友『尚人』の「打席にたたなきゃホームランは打てない」といった言葉を、なんだか眩しく感じてしまった自分もいました。


私は既にちょっと諦めだしているのかもしれませんね。過ぎてしまった人生のマジックアワー、もっと大事にすればよかったな。私はまだ打席に立てるのかなあ。


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また、この小説の見どころと言えば、やっぱり主人公と彼女との恋模様。


この彼女さん、まあ~~~、あざといんです。人に寄っては違った印象を持つだろうなと思いますが、私は「う、うわ~~~あざといぞ~~~でもこれはモテる」といった感想。こんな風に生きてみたいもんです。ここら辺の趣味は、作者の性癖が全面に出ているんじゃなかろうか。知らんけど。笑


私は残念ながら、主人公のように溺れるような恋愛はしたことがないので、恋愛面に関しては共感よりも羨ましさのほうが勝ちました。


フジロックに対抗する旅とかね。安い言葉になってしまうけれど、これがエモってやつなんだろうな。ドライブでかける音楽のくだり、めちゃくちゃ良かったです。

あ、でも、後半の返ってこなくなったLINEとか、さよならの痛みとかは、色々と思い出しちゃいましたね。前半があまりにもキラキラしてる分、後半からの落差がまた凄まじく。。


失恋は、大なり小なり多くの人が経験したことがあると思うのですが、そんな誰もが心のどこかに持っている苦い記憶を確実にくすぐって、呼び起こしてくる感じがありました。ものすごく痛くて、でもどこか懐かしくて、良かった。主要人物の『僕』と『彼女』には名前がないのも、そういうことなんだろうなと思います。


映画化したらどんな感じになるのか、とても楽しみですね。北村匠海さん主演で映像化したくなる気持ち、めちゃめちゃ解る。僕のイメージぴったりです。


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あとは、物語の途中で登場する音楽たちが、よく知っている名曲がたくさんで楽しかったです。主人公と同じ世界を生きてる感じがして。読みながらキリンジのエイリアンズやthe pillowsのハイブリッドレインボウを流したりして楽しみました。



風景描写もかなり詳細な固有名詞がたくさん出てくるので、舞台となった明大前や下北沢で青春時代を過ごしてきた方だと、さらにリアルにぶっ刺さるんだろうな。



梅雨時期に読むのにぴったりな、湿度高めの物語です。ちょっと青臭いような感傷に浸りたい方、是非読んでみてください。




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