ある日のこととまた別のある日のことと

こんなに近くにこんな小さな古書店があったとは。
もう何度通ったか分からない道、先日グーグルマップのアプリをなんだかふと取ってみて、古書店で検索してみた時に出てきたの。
元々使ってるマップのアプリには出ていないお店だった。
大海に手を広げたら、掬い取れたのは近くの一滴だった、みたいな感覚。

本当に小さなお店で、背負ってる鞄が振り向くたびにどこかに当たる。
舟を漕ぐときに使う道具の名前のお店。
くりんとしたお猿さんがおじさんになったみたいなおじさんが店主さん。

探してる本を尋ねてみると、うーんと横に視線を向けて、膨大な頭のページから挟み込んでた栞を抜くみたいに、どさっと紐で纏め上げられた一群を出して来てくれて、好きに見ていいよ、って。

探してる作家さんが寄稿、連載してる当時のもの。
その中から気になった二冊を選んで、これをお願いしますと言ったら、あー、と

あ、全部セットですか?そうやねん、それはまとめて、多分発刊の番号も揃ってるはずやから、まとめて買ってくれたらうれしいと。
そうできたらいいのだけど、それならと辞したところで、まあええわ、その二冊で1500円もらっておいてもいいかな、はい!ありがとうございます。

俺が生まれる10年ちょっと前の本、ここでも語られてるのは、近代化してきて失われていくものへの希求、機械化されて何が置き去りにされるのか。
いつでも、その当時からして前時代までにあったものを尊び、そこに何かエッセンスや本質のようなものがあったと考える。そしてここから先への危惧。
それを今の時点から見るのは面白い。

探しているつもりがただどんどん遠く離れただけだった、みたいことなのかもしれない。

文中で"くらごう"という言葉が出てくる。それは井戸を意味していて、筆者も幼少期は水を桶で汲みに行ったよう。それが電動のポンプで供給されるようになる。そんな状態で労働を語るなんて(本文が労働に関してのこと)、だめねえ、とこうなる。
電動洗濯機が出てくる少し前、まだタライで洗っていた時もそう、暮らしとは身体だったし労働とは生活だった。

便利になることは身体性を忘れていくことなんだろうなと以前思ったけど、便利になることがただ悪いことではなく、懐古趣味に多分になってるところを認識して、その時に宿っていたものには思いを馳せ続けたいし、取り入れれるところは取り入れたい。

〜〜〜〜〜

用事があって区役所にいく。そういえばと思って図書館を検索してみた。
すぐ隣の建物が図書館だった。昨夜大阪市立図書館、府立図書館の話を聞いていて、国会図書館もとてもいいと聞いていたこともあり、自分が住んでる西成区の図書館てそういえば行ったことなかったなと思った。

初めて入った。児童書が並び、子供達の席にはおじさんがでんと座って何かを読んでいる。
そんなに広くなく、気になった本を立ったまま読んだり置いてくれてる丸椅子に座って読んだり一時間半くらい経った。
苔の本、お茶の淹れ方の本ではカクテルにも応用できそうな飲み方を発見、キッチンの本なんか見てたら、色々道具も欲しくなるし一から設計してみたくなる。
昔の暮らしの道具の本、硯で墨を作るための朝の一時間は、瞑想、歩行禅のような効能、行為に埋没することで夢の中へ、無我、静けさの依り代で漂う。
江戸時代の暮らしの本、昔の家はその佇まいだけで美しいなと思う。空間を作る感性、過ごし方、人が尋ねてきたらどう振る舞うか、なんでこういう作りなのか、もっと読みたい。日本の家の間取りって、ああ面白い。

また自転車に跨って、のんびり道を行く。
古びたごはん屋さんで定食を頼んだ。
一人のおじいさんが入ってきて、店の人とも親しげ。
またあれにする?と聞かれて頷く、厨房に向かってカレーライス!卵入りね!
最初から居た女性がもう食事を終えそうだったところ、おじいさんをみて、マスター!と。
どうやらおじいさんはお店をされてて、女性はそこに通っているような雰囲気。
女性がお会計しようとした時に、実はもうおじいさんが払ってくれていて、喜んだ拍子に抱きつく、店の人がこらこら抱きつくなと言う。

小鉢をいくつか選んで、新聞を読みながら一杯やってるおじさん。すいません、と二本目の瓶ビールを頼んだ。
テレビでは刑事物のドラマの再放送、たぶんまだ中盤に入ったところで、もう少し見てたら続きが気になったなと思う。

入ってきたおじさん、仁王立ちでしばらく壁に貼ってあるメニューを眺めている。さぞかし食べるのではと思わせる雰囲気、頼んだのはうどんやった。

さて、ごちそうさまです。

気持ちのいい店員さん、生まれてこの方邪気など持ったことがなさそうな、市民の手本のような仕草と対応。明日市民全員この人の感性自動でインストールしてくれ。

ぱおぱお
もう随分前から不意に擬音語が口をついて出てくるのを抑えられない
出てきたらそのまま発する
ぱホーン
そんな調子でのんびり自転車をこいでいる。

ニトリ、めっちゃ久しぶりに眼前のニトリ。
入ってみた。
今ない生活を夢想しながら、暮らしの商品をひと通り見て、ちょっと枕欲しかった。

〜〜〜〜〜

ここしばらくインストの曲ばかり聴いている
こんなに歌詞のない曲ばかり聴く期間が長くなってるのは初めてかもしれない
他にも何かこういうことないかな
今の自分の状態がわかるかもしれない
ポテチあんま食べてない
チョコはまあまあ食べてる
なんかぼーっとしてる
自分がつくる歌も曲の断片ばかりできてきて、言葉が乗ってこない
言いたいこと、ないのかな

この前山間の場所を歩いていて、ふと、細い小道の先にとても森閑とした場所に行くことができた
古い祠がある
奥は山が深くなっていっていて、小さな沢が流れている
なんてきもちのいいところなんやろう
滋味深い空気の中にいるように
体が微細に震えているみたいに感じる
何か感応しているのかもしれない
一人ではいけなかった景色かもしれない
見つからなかった場所かもしれない
たぶん
きっと
そうだろうと思う

一人だからこそいけるところはどこだろう
誰かと一緒だからいけるところはどこだろう
どちらも別の場所で
ベンチの背中合わせに隣り合っている





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